98 変身マント
マジックリュックに詰めたモノを説明するため、パルマの旅に同行することになった。
「わん! わん!」
「ライナも行くか?」
「わん!」
「よし。んじゃ、一緒に行くぞ」
「わん!」
「いや、待て待て。それは駄目だ」
止めたのはムシアラだが、他のメンツも渋い表情を浮かべている。
「大丈夫だ。ライナは賢いから、犬のフリができる」
「わん」
「そういうことじゃない。今回の旅にライナを連れていくのは、絶対に無理だ」
「なぜ?」
「ドワルムント国内の移動なら言い訳はできるが、イッタリーネに入国するには審査が必要だ。それをごまかすのは、得策じゃない」
それはたしかにそうだ。
ナイトウルフであるライナをペット扱いするのは無理だし、バレたときが面倒臭い。
最悪、犯罪者になる可能性もある。
「しかたない。あきらめるか……とは言わないぞ」
「わんわん」
そうだそうだ、と言わんばかりに、ライナが吠える。
「じゃあ、どうするんだ? テイマーギルドに申請して、資格を貰うか?」
「それは無理だ。おれにテイマースキルはない」
学生時代にそれは証明されている。
「なら、あきらめろ」
「ふっふっふっふっふ。これならどうだ!」
小脇に抱えていた黒い布を、ライナの首に巻き付けた。
『ええっ!?』
全員が驚くのも無理はない。
ナイトウルフが、犬に早変わりしたのだから。
「ご主人様……変身マントを完成させていたのですか?」
「ある程度はな」
「これである程度……なのですか? 外見や手触りは完璧ですよ」
ライナを撫でまわすパルマには悪いが、そこはもともと似通っている。
祖先も同じ犬科であり、大差はない。
「これのスゴイところは、魔力を隠蔽できるところだ」
……
「凄い! 本当に魔力を感じません!」
「信じがたいけど、確かに感じないわ」
パルマとササナにバレないなら、大成功だ。
「どうやったら、こんなことができるのですか?」
「よくぞ訊いてくれた。その答えは簡単だ。変身するために必要な魔力を、体内から溢れるモノで賄ってるんだ」
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全員に首をひねられた。
そのリアクションも想定済みだ。
なぜなら、ここにいる者たちは、おれより数段上の魔法の知識と実力を兼ね備えているのだから。
「試作品の変身マントで実験したときに気づいたんだけど、俺の実力だと、意識して魔力を放出しないと効力を発揮しないんだ。だから、毛布代わりにしても姿は俺のまんま。だけど、一緒に包まったライナは変身したんだ」
初めて見たときは、あまりに驚いて跳び上がってしまった。
けど、それでひらめいた。
「上級者は保有する魔力量も多いから、自然と体表面を覆う魔力があるんじゃないか、ってな」
「なるほど。自然と溢れ出る魔力を使用することで、魔力を保有しない犬に擬態するわけですね」
「その通り! どうだ? スゴイだろ」
「凄いの一言で片づけちゃダメよ。これはとんでもない代物よ」
「いやいや、まだまだ改良の余地がある欠陥品だ」
『ハアアアアアア』
全員に盛大なため息を吐かれた。
そんなおかしなことは言ってないはずだが……
「ご主人様」
困ったような苦笑いを浮かべながら、パルマがかぶりを振っている。
よくわからないが、俺が間違っているようだ。
「擬態もできたことだし、出発するか」
『できるかっ!』
なし崩しにしようとしたが、ダメだった。




