97 同行しよう そうしよう
「コレとソレと……おまけにアレも入れとくか」
部屋に戻った俺は、マジックリュックにいろいろと詰め込んでいく。
どれも魔檻の森に来てから作った自信作だ。
「よし。こんなもんだな……おっと、一番大事なモノを忘れちゃダメだ」
壁にぶら下がった黒い布を脇に抱え、イスペン村にむかった。
「パルマ。これ持ってけ」
「ご主人様。それはマジックリュックですよね?」
「おう。魔檻の森に来てからの改良版で、自信作だ。中にいろいろ入れといたから、むこうで役立ててくれ」
「そんな高価なモノ、いただけません!」
「出会ってからの給料みたいなもんだから、気にすんな」
「駄目です。それに、わたしの手に余ります」
「大丈夫。入ってるのはゴーレムの玉、強化塗料、ポーションが主で、あとはおまけみたいなもんだ」
「ひい」
飛び退いたパルマを筆頭に、
「マジかよ!? アンナ」
「気はたしかですか? クロムハイツ様」
「正気なの? アンナ」
ムシアラ、レアハム、ササナまでもがヒイている。
「いや、こんぐらいはいいだろ」
総額が高くなるのはわかっているが、これまでの働きを考えれば安いぐらいだと思う。
「アンナ。この際だから言わせてもらうが、お前の感覚はだいぶズレてるぞ」
「ズレてるのは否定しねえけど、そこまでじゃない」
「そこまでよ。もしアンナが自分の錬金物を正しく評価してるなら、マジックリュック(それ)をあげる、とはならないわ」
ササナの指摘に、パルマとレアハムが何度もうなずいている。
……
「アンナがおれにくれたポーションだけど、アレだって相当なモノだぞ」
「まあ、そこらに出回ってるモノと比べればな」
「ほら、この時点でズレてる。あのポーションは、そこらに出回ってるモノと比べていいモノじゃない! アレは極上品をはるか下に見下ろす、アーティファクトだ。その証拠に、おれの古傷が治ってる」
素振りをするムシアラの動きは鋭いが、俺にはよくわからない。
正直、前からこれぐらいは動けていた気がする。
けど、レアハムが手を叩いて喜んでいるのだから、変わっているのだろう。
「はっ! はっ! はっ!」
「凄いですね」
「ええ。大したものだわ」
演武を観るパルマとササナが感心するのだから、確定だ。
「治ってよかったな」
「そんな軽い感想は求めてないし、それで済む話じゃない。俺の古傷はどんな名医もお手上げだったし、市場に出回るどんなポーションでも駄目だった。その中には、ドワルムント王国で買った、最高級のポーション、もあったんだ」
「マジか!? んじゃ、俺の腕が上がったんだな」
父ちゃん母ちゃんが作ったモノの可能性もあるが、喜ばしいかぎりだ。
「驚くのはそこじゃない。アレ一本で、家が建つぐらい高かったんだぞ」
「恐ろしく稼げるんだな。冒険者って」
「だから、論点はそこじゃないんだよ!」
「わかってる。けど、驚くだろ」
ムシアラが古傷を治すのに使った総額は、それこそ城が建つかもしれない。
「それは脇に置いとけ。今大事なのは、その超絶凄いポーションも入っているであろうマジックリュックを、餞別代りに渡そうとしてることだ」
ムシアラたちの真剣な表情を前にすれば、これ以上本音を隠すことはできない。
「わかってる。市場に出せば二、三か月遊んで暮らせる品を多数渡すのは、正直やりすぎだ。けど、パルマとの出会いで俺は成長できたし、これからも成長し続けられる。その感謝を形にしたら、こうなったんだ」
「なるほど。それなら理解はできる。けど、理解すればするほど、駄目だ」
「なんでだよ!?」
「規格外のモノを持ってることがわかれば、戦争の引き金になるぞ。しかもそれが王女なら、パルマごと奪うやつらがいるかもしれない」
「考えすぎ……とは言えないか。でも、パルマだけの秘密にすればいいだろ」
「よくわからないモノを気軽に使えるわけないだろ。用途を探ったりするのは個人じゃ無理だし、どうしたって家臣に広まる」
そう言われればそうだ。
用途のわかるモノが中心ではあるが、初見のモノも入れてしまった。
「んじゃ、今から説明しよう」
「その時間はない」
「なら、どうする?」
「アンナもイッタリーネに行けばいい。その道中なら説明する時間もあるし、渡すモノと持ち帰るモノの選別もできるだろ」
ナイスアイデアだ。
「よし。それでいこう。ってことだから、途中まで同行してもいいか? パルマ」
「はい。ご主人様と旅ができるなら、わたしも嬉しいです」




