96 今生の別れ?
今回は短いです。
すみません。
横たわる黒子の肌は、全身焼けただれていた。
赤黒く腫れ、出血も確認できる。
無残な死だ。
けど、黒子にはこうなってでも叶えたい未来があった。
(もっとほかの方法があったと思うけどな)
死と恐怖に彩られた悲しい末路ではなく、自分とその後に続く者たちの幸せを願ってもよかったはずだ。
でも、黒子はそれを望まなかった。
(なんでなんだ?)
声に出さなかったのは、答えを知る黒子がこの世にいないから、というのもあるが、これ以上パルマを悲しませないためだ。
今回のことに胸を痛ませている心に、追い打ちをかけるようなことはしたくない。
(楽になるかはわかんねえけど、やってみるか)
俺はポケットから小瓶を取り出し、黒子の全身にポーションをかけた。
黒ずんだ皮膚が剥がれ落ち、キレイな皮膚に再生されていく。
試したことはなかったが、死者の傷も癒せるようだ。
ただ、時間はかかるらしい。
少しずつ少しずつ。
時間を巻き戻すように、再生している。
それを俺たちは、黙って見届けた。
…………
「ご主人様。改めてお願いがあります。帰国の許可をください」
黒子の亡骸に手を合わせた後、パルマがそう申し出た。
送り出すことに変わりはない。
けど、それは今生の別れを意味する。
口にこそ出していないが、パルマの性格からして、黒子……いや、アンディ・ウィスと交わした約束『暗部をキレイにし、第二、第三のアンディを生まない』努力をするはずだ。
それには多大な時間……もしかしたら一生をかける必要があるし、それでも足りない可能性だってある。
少なくとも、一時帰国でどうにかなる問題ではない。
だからこそ、パルマの気持ちを大事にしたい。
後ろ髪引かれることのないように、気持ちよく送り出してやろう。
「もちろん。許可する!」
「ありがとうございます」
「すぐに出発するか?」
「はい。父の容態のこともありますので、可能なかぎり急ごうと思います」
そう言われれば、もともとの動機がそれだ。
「でも、それって本当なのか?」
「わかりません。ですが、真実だった場合を想定して動いたほうが、得策だと思います」
その通りだ。
今動けば、最悪の場合でもそばにいることができる。
ウソなら、「なんだ」と言って胸を撫でおろせばいいだけだ。
「よし。じゃあ、ちょっとだけ待っててくれ。あっ、ここじゃなくて、イスペンの馬車乗り場で待ち合わせな」
俺は走って自宅に戻った。




