閑話 黒子の正体
「究極合体! 三位一体!」
ご主人様の命令に応え、サンドゴーレムが一つになった。
これだけでも凄いことなのに、
「グレートゴーレム見参!」
ビシッとポーズを決めている。
本来なら、これはありえない。
創造主であるわたしを無視して、合体するなんて……
「ふんっ。壊す手間が省けただけだ」
黒子が獄炎小太刀を振るう。
いままでならザシュッ! と、いとも簡単に斬れていたが、今回はゴーレムの腕に浅く溝を刻んだだけだった。
「な、何!?」
黒子が目を見開いている。
彼ほどの実力者であっても、それは想定外だったようだ。
「隙あり!」
「ぐふっ」
カウンターのボディーブローが炸裂し、黒子が地べたを転がる。
「よしっ!」
「やった!」
「ざまあみろ」
「最高です」
初めて浴びせた一撃に、ご主人様、わたし、ムシアラ様、レアハム様が拳を握った。
「わん!」
ライナも尻尾を丸めて喜んでいる。
「ふふふ」
特別なリアクションはしていないが、ササナ様も笑顔だ。
「許さんぞ! 貴様ら!」
唯一激怒している黒子が、嵐のように煉獄小太刀を振り回す。
「なんのこれしき」
そのすべてを受け止めるグレートゴーレム。
それだけでも凄いのに、時折こちらを狙っている黒子の動きに対応し、体を入れ替えることで阻止している。
「くそっ! なんなんだコレは!?」
困惑するのはよくわかる。
グレートゴーレムは、間違いなく反則だ。
耐久力や俊敏性はゴーレムの規格をはるかに凌駕しているし、攻撃力も凄まじい。
相手が黒子でなければ、最初のボディーブローで決着がついていただろう。
けど、真に驚くべきはそこじゃない。
なによりありえないのは……一つの生命体を思わせる洗練された動きである。
これは本当に、ありえない。
というか、あってはいけないことだ。
繰り返しになるが、創造主を無視して合体することは、不可能、なのである。
魔法で生み出したモノとはいえ、三体それぞれに独立した思考回路があり、似て非なるモノだからだ。
それを無理やり一つにしても、上手くいくはずがなかった。
語弊を恐れずにいうなら、一卵性双生児を一人に戻すことができない、のと同じ原理だ。
なのに、グレートゴーレムはそれを体現している。
まるで、最初から一つの個体だったかのように自然な振る舞いだ。
そんな無茶苦茶なことを可能にしているのが、ご主人様が錬金した玉である。
「死ねぇぇぇぇぇぇ」
「ふんふんふんふんふん」
時間が経つにつれ、グレートゴーレムの能力が上がっている。
最初のころは黒子の攻撃を捌くたびにわずかな溝が刻まれていたが、いまやそれすらない。
小太刀の当たる角度を絶妙に調整し、受け流しているようだ。
「今度はこっちの番だ。でりゃりゃりゃりゃりゃ」
「そんな大振りの拳が届く、わけが、ない。くそっ」
避けきれず、黒子が大きく飛び退いた。
「凄い」
完全に形勢が逆転した。
「ちっ。まさか、こんなところで使うはめになるとはな。獄炎球」
生み出した火球に、黒子が飛び込んだ。
「ぐあああああああ」
服が焼け、苦悶の表情を浮かべている。
「アンディ!?」
初めて見た黒子の正体は、わたしの知り合いだった。




