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召喚から始まる人生二周目〜今度の召喚は赤子から!?〜  作者: 谷口 水斗
学園 初等部編

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27 下準備


聖女と会った後、私は帰路についた。


「⋯帰る前に神殿に寄りますか」


進路を少し変え、神殿に向かう。

あの神に少し言いたいことがあるからだ。


セーラム領の神殿は大きくない。セーラム領は他国からの旅行者も多く、民族文化が多種多様に入り混じる。

その為宗教は問題になりやすく、過去には問題が出た。


その問題を避けるため、王国と聖教国の協議の結果、セーラム領での活動は縮小し、神殿も領地の規模の割には小さい。


私としては小さい方が好きだ。大きい神殿は落ち着かない。落ち着かないと主神に合図をするのに手こずるのだ。


「セーラム領といえど熱心な信者もそれなりに居るんですね」


神殿には午前中にもかかわらず少し列ができていた。

熱心な信者は祈る時間も長いためかなり待つことになりそうだ⋯⋯


「この分だと帰る時には昼の仕込みが始まるぐらいになりますね⋯⋯」


ボヤいても列が進むのが早くなる訳では無いので素直に待つ。

魔力を体内で循環させながら魔力回路の強化に努めて約1時間。

ようやく案内された。


「長かったですね⋯⋯」

「すまないなお嬢さん。ここの神殿は小さいからなかなか効率が悪くてな」


それなりの歳の聖騎士がそう言う。聖教国中央の聖騎士はなんとも言えないが王国にいる聖騎士は真面目な者が多い。私は嫌いではない。

ただ聖騎士なだけあって規則や教典に関しては厳しいので冒険者からは毛嫌いされている。


「では、神の御加護があらんことを」

「あらんことを」


決まり文句を適当に返す。主神(あの神)はそういう神ではないのだ。加護などいくら祈ったところで貰えることはない。

聖女だって別に加護がある訳では無い。主神が彼女に声を届けただけに過ぎない。まぁ光属性魔法の適性はあるようだが。


神像の前に立ち、目を瞑る。周りの信者がぎょっとして何かを言おうとしたり、明らかに不快感を現してくるが関係はない。

主神はそもそも聖教のように崇め奉るような神ではない。


『崇め奉られるような神でなくてすみませんね』

「そういう神な以上聖教のやってることが無駄なのは事実でしょう」

『⋯⋯それは否定しませんが、彼らのその心を否定したくありません』


⋯そういう神ではないとはいえ崇め奉られている以上真面目に受け取っているようだ。

今まで見てきた連中に比べれば随分とできた神なものだ。


『今までどんな神に会ってきたんですか⋯』

「独善的で自身を正義だと信じてやまない連中ですよ。それを崇める人たちも酷いものでしたね」


形をとっているわけではないので表情は分からないが苦笑いしてる雰囲気を感じる。


『それで⋯本日はどういったご用で?あなたは用が無ければ来ないでしょう?』


少し不貞腐れた言い方をされる。

用がなければ会いに来てはダメか?みたいな決まり文句があるが、好きでもない相手に用が無いのに会いに来る理由はないだろう。


「少し言いたいことがありまして。最近聖女の呼び掛けに応じてないようですね?」

『⋯⋯⋯』

「別にあなたがどうしようと勝手だとは思いますが、あなたから声を届けた相手からの声を無視するのはどうかと思いますよ」


私がそう言うと目の前に成人女性を型どった真っ白の人形のようなものが出てきた。


多少表情が分かるが、少し困ったような顔をしている。


『えーっとですね⋯その⋯私が悪いことではあるんですが⋯』

「?」


人差し指を胸の前でちょんちょんとする主神。聖教の信者がこれを見たらどう思うのだろう。


『完全に予想外と言いますか⋯その⋯1人にしか声を届けられなくてですね⋯』

「つまり私がその枠に入っているから聖女に答えることができない。そういう事ですか?」

『はい⋯⋯』


私は思わず顔に手を当てる。

あまり格の高い神ではないのは分かっていたがまさかそこまでとは⋯

神の中では赤子のようなものではないか。


『な、なにかいい方法は知りませんか?対象を都度切り替えるというのも難しくてですね⋯』

「その枠を増やすことはできそうにないんですか?」

『ない⋯ですね』


頭痛がしてきた。冗談は召喚だけにしてほしい。


『わ、私の声が届いていないことで聖女さんの気持ちがすごく後ろ向きになってるのは分かっているんです。だからすごく申し訳なくて⋯彼女が悪い訳では無いのに⋯』

「⋯⋯はぁ」


思わずため息が出る。悪い神ではないし、むしろ好感を持っている。少し手を貸すとしよう。


『ほ、本当ですか!?ありがとうございます!』

「少しだけですよ。ただ能力制限を少し解くので修復に手戻りが発生する可能性はありますよ」

『構いません!お願いします!』


これじゃどっちが神なんだか分からない。

少し制限を解いて主神マーラカルトの主核に触れる。


『ん⋯』

「変な声出さないでください」


今まで見てきた神の主核の中で最も小さい。だが今までで一番綺麗で澄んでいる。

声を届けられる枠が増えるように操作する。


『んんっ⋯⋯』

「後で1発殴りますね」

『ど、どうしてぇ』


まるまる枠1つ分を拡張し、制限を元に戻す。


「終わりましたよ」

『⋯⋯!本当に増えてる!ありがとうございます!』

「それは良かった。さて、1発⋯」

『や、やめてください〜!』


今回は勘弁しといてやろう。主核を触られることなど普通無い。


「これで声は届けられるでしょう。ただ私の事は出さないでください。聖女とは面識もありますがあまり知られたいわけでもないので」

『分かってますよ。人の身でこれほどのことをするのはあまり良い事でもありませんから⋯』


本来は自分でやらなければならないことだ。

とはいえ今回はこちらから話を出した以上手を貸すべきだっただろう。


「では私の用は終わったので、これで」

『あ、絶対ではありませんがまた来られる時は聖女さんとご一緒に来ていただいても結構ですよ。むしろ連れてきてください』

「⋯⋯自分で呼んでください」

『彼女だけでは無理なんですよ。あなたみたいにパスを繋げる人が居ないと』


正直言ってめんどくさいが聖女が国に帰った後ならできないこともないか。


『お願いします!言葉を届けるといっても今みたいに流暢な会話をする訳じゃないから、ちゃんと話してみたいんです!』

「⋯⋯セーラム領にいる間は無理だとは思いますが、覚えてはおきます」

『ありがとうございます!』

「それでは」


彼女の言うパスを切り、意識が現実世界に戻ってくる。

目を開けると機嫌の悪そうな神官が目の前に立っていた。


「⋯⋯何か?」

「何かではありません!この神聖な祈りの場で膝もつかないとは!何を考えておられるのですか!?」


1を聞いたら10返ってきた。とはいえ膝をつく理由など無い。主神と()なら()の方が上だ。


「そうは言われましてもね⋯」


返答に困っていると神像が少し光った。

ゆっくりと明滅している。


「な、なんということだ⋯このセーラム領の神殿で主神像が光るとは⋯!」


信じられないものを見ているかの様子で神官が震えている。

私はゆっくり神像に近づく。


「な、何をしておられるのです!あなたのような方が近づいていいものではありません!」

「あなたこそ何を言ってるんですか?「これ」は私のためのものですよ」


主神のやつ、お礼とでも言いたいのか?とはいえ「これ」は嬉しいものだ。私は要らないがシグマに必要だろう。


神像に手を向けると光り輝く玉のようなものが神像からゆっくりと私の手元に来る。


「⋯⋯彼女が即興で生み出したにしてはいいものですね。それに⋯最初からシグマ用ですか」


意外にちゃんと見てるってことか。


───意外とはなんですか!


ふとそんな声が聞こえた気がしたが気のせいだろう。


振り返ると神官が驚愕の色に顔を染めていた。


「な⋯な⋯」

「では私はこれで。さようなら」


私は言葉が出なくなっている神官をスルーし、神殿から出る。

出入口には変わらず先程の聖騎士が立っていたが、少し困ったような顔をしていた。


「お嬢さん⋯なんだか凄い主神様に愛されてるようだが⋯周りには合わせた方が面倒が無いぞ?」

「主神のことを嫌ってるわけではありませんが膝をつく相手だとは思っていませんので。気にしてませんし初めてじゃないですから大丈夫ですよ」

「そ、そうか⋯」


真面目な上、教典を押し付けないその姿勢、加点だ。

まぁ主神からのプレゼントも大きいのだろうが。


神官が目の色を変えて追いかけてくる前にこの場を去るとしよう。

聖騎士に会釈をし、改めて帰路につく。


魔力探知で神殿を伺ってみると、やはり神官が飛び出してきていた。立ち去って正解だ。


社交界デビューこそしてるものの、まだ顔がほとんど知られていないから私の身元がバレなくて助かる。


───────────────────────────


家に戻ると、庭でギースが面白いことになっていた。

女物の髪飾りを頭のあちこちに付けられているのだ。


その側でテーブルを置き、髪飾りを作っているシグマとそれを手伝うセセリアが居た。


「お帰りなさいませお嬢様」

「ただいまセセリア。お母様は戻ってますか?」

「いえ、まだ戻ってきておられません」


面白いことになっているギースは一旦無視し、シグマの方を見る。


「順調ですか?」

「はいなのです!」

「それはよかった」


以前に見た時よりも精度は上がっているようだが、まだ満足のいくものではないらしい。

お母様の作ったお手本を側に、黙々と作り続けていたようだ。


「それで⋯⋯⋯ふふっ」

「笑わないでくれよ嬢ちゃん⋯⋯」


思わず笑ってしまうぐらいには似合っていない。

強面の大男が女物の髪飾りを頭の至る所に付けているのだ。似合うわけがない。


「断れば良かったじゃないですか。モデルとしてはセセリアの方が最適でしょう?」

「あの子が何故か俺の方に着けてきたんだよ⋯それに俺はあの子の行動を断れねぇよ⋯」


断れない?別にシグマの行動ぐらい断ったって⋯


「実はセーラム領に来る直前に手続きが完了しまして。シグマ様は正式にネーデル家の者となっております。その為、ギースがシグマ様の行動を断ることはできません」


横からセセリアがそういう。いつの間にそんな手続きをしていたんだ。お母様だろうか。


つまりギースは主である私の許可無しにはシグマの行動を断れないということか⋯


「⋯⋯⋯ふふっ」

「嬢ちゃん⋯絶対悪いこと考えてるだろ」

「⋯⋯そんなことありませんよ?」


ギースが半目で見てくるが無視する。

そうしているとシグマがまた少し趣向を変えた髪飾りを持ってきた。


「しゃがんでなのです」

「⋯⋯⋯」


全てを諦めたような顔をしながらギースがしゃがむ。

つける位置もないので元々つけられていた物が外され、新しいものにつけ替えられる。


「⋯うーん」

「よくできていると思いますが⋯何か気に入らない点が?」

「なんか⋯違うのです」


そりゃこんな大男につけてしっくりくることは無いとは思うが⋯⋯

ギースは虚無顔になっている。


「あっ!」


何かを思い出したかのようにシグマが声をあげる。

新たにつけられた髪飾りが外され、また作業を始める。


私たちはそんな様子を見守る。


───────────────────────────


「これでいいのです。セセリアさま、つけてくださいなのです」

「私がですか?ギースではなく?」


こくりと頷くシグマ。セセリアはシグマから髪飾りを受け取り、髪につける。


「どうでしょうか」

「大丈夫なのです!これで完成なのです!」

「それはよかったです」


セセリアはスっと髪飾りを外し、シグマに渡す。


「そのまま渡すのもあれですし、なにかに入れましょうか」


私は異空間収納からちょうどいい大きさの小物入れを取り出す。

あまりこの世界には無い意匠のものだが、これぐらいなら大丈夫だろう。


「ありがとうなのです!」


シグマは完成した髪飾りを小物入れに入れ、大切そうに持つ。


「当日まで預かっておきましょうか?異空間収納(これ)なら無くす心配はありませんよ」

「おねがいしますなのです」


髪飾りは私が当日まで預かっておくことになった。聖女と会う直前にシグマに渡せばいいだろう。


「そういえばセセリア、お昼ご飯は何か予定とかありますか?」

「特には聞いておりません」

「では今日は作らなくて良いと伝えてきてくれませんか?」

「分かりました」


使用人に伝えに行くセセリアを見送って、私はギースに向き直る。

ギースは髪飾りをやけに丁寧な手つきで外していて思わず笑ってしまいそうになった。


「ギース」

「なんだ?」

「あなた、魚は食べれますか?」

「珍しく変なこと聞くもんだな。冒険者が食えないものなんかあったら死んじまうぞ?」

「そうですか」


ギースが慣れない手つきでテーブルの上を片付け始めたので少し手伝う。

シグマも加わり、すぐに片付け終わった。


「戻りました。しかし⋯お昼はどうなさるおつもりで?」

「新鮮で多種多様な魚が手に入りましたし、せっかくならこの数を活かせる食べ方をしようと思いまして。お母様も昼には戻ってこられるでしょう?」


食べ放題的な方がシグマも満足できるだろう。

今出ているテーブルでは小さいので、大きいテーブルを出す。

10人ぐらいなら余裕で囲める大きさだ。


「その⋯異空間収納、でしたか。大きさに制限は無いのですね⋯」

「まぁ⋯制限があったら不便なので」

「⋯⋯え?」


私の物言いに困惑するセセリアを横目に、私は使う材料をどんどん取り出していく。


「マグロ!」


マグロに目を輝かせるシグマ。マグロが相当気に入ったようだ。


他にもサーモンや鯛、エビなど様々な海鮮を取り出していく。


そして一番大事な米は米俵で出し、地面に置く。


「嬢ちゃん⋯こんなに使うのか?」

「侍女の人達や使用人の方の分も含めてますので。大人数の方が楽しいんですよ」


マグロも2匹目を取り出し、海鮮類も小さな山のように出していく。


「これほどの量であっても⋯シグマ様がいれば無くなってしまいそうですね⋯」

「まぁ余っても異空間収納で保管できますし、出しすぎる分には大丈夫でしょう」


かなり大きい桶を3個ほど取り出し、最後に刀を手に持つ。


「何やら面白いことしようとしてるわね。今日は何を見せてくれるのかしら」

「おかえりなさいお母様。そこまで面白いものは無いと思いますよ⋯」


ちょうどよくお母様が帰ってきた。

だが面白いことなど無い。ただ切って米を炊くだけなのだから。


「あ、これを忘れてました」


取り出したのは海苔。大きな正方形だ。


「くろい⋯おいしいのです?」

「これ単体だと美味しくないと思いますよ。ですが、今からやろうとしてる事には必要なんですよ」


この世界には海藻類を佃煮などにする文化こそあるが、乾燥海苔の文化は無く、売っていなかったためこの海苔は自作した。


「乾燥させるとこうなるのねぇ。面白いわねぇ」


お母様が1枚手に取り、色んな方向から見たり光を透かしたりしている。


私はそれを横目に、テーブルに出した魚を捌いていく。この間は見せるためにいちいち止めていたが、今回はそのつもりはない。

ものの数分で全てを捌き終える。


「前より長細く切ったのね?」

「はい。もう少し待ってください」


捌くのが早いのはいいが米が炊けてない。魔法を駆使し、炊いてはいるが炊くのが早くなることはない。

どうしても時間がかかってしまう。


ええい。面倒だから時間加速してしまえ。

ということで追加の魔法陣を展開。


「何よ⋯その魔法は⋯」

「時間加速です」

「⋯⋯え?」


一瞬で米が炊けた。あまり風情が無いので料理に時間加速を使うのはどうかと思っているが、今回はまぁ良しとしよう。

早くしないとシグマがマグロに飛びつきそうだ。


炊き上がった米を桶に入れ、酢を加える。そしてしっかり混ぜる。

シグマが我慢できないといった様子なので、海苔を手に取りシグマに見せるように教える。


「こうやってご飯を薄く乗せて、そこにいくつか海鮮を乗せたら海苔を巻くんです」


シグマの目の前で、マグロやサーモンなどシグマが好きな物だけ入れて巻いてやる。


「これで完成です。手巻き寿司ってやつです。具は自由にできますし海苔もたくさんあります。各々ご自由にどうぞ」


デモで作った手巻き寿司をシグマの口に入れてやり、黙って見ていたお母様たちにも自分でやるように促す。


「セセリア、あなたもいいんですよ。使用人達にも参加していいと言ってください。そのために大きなテーブルにしたんですから」

「⋯お言葉に甘えさせていただきます」


セセリア含め私に呼ばれて出てきた使用人たちは後ろで控えて食べようともしなかったので許可を出す。


「良いものね手巻き寿司。こんな大人数で無礼講ってのも良いわね」


お母様がそんなことを言う。テーブルの周りには使用人も含め20人程いる。


「それで⋯お母様、許可の方は」

「取れたわ。メアリとシグマちゃんの社会経験のため、で通してきたわ。まぁ裏があることを隠そうとはしなかったから何か目的があるのはバレてるでしょうけどね」


「ありがとうございます。許可が取れただけでも十分です。流石にシグマを連れて不法侵入は無理があるので」

「取れなかったら不法侵入する気だったのね⋯取れてよかったわ」


改めて当日の予定が確定したことを伝えるため、シグマの元に行く。


「シグマ様、マグロばかりでは良くありません。他のものも⋯」

「マグロがいいのです!」


マグロ以外を食べさせたいセセリアとマグロ以外を食べたくないシグマが言い争っていた。

実際マグロだけ、他のものとの比率で考えても恐ろしい勢いで減っている。

シグマがマグロを好きなのは使用人達も知っているのでもはやマグロには指1本触れる気が無いといった様子だ。


「シグマさん、マグロだけでも美味しいとは思いますが、マグロ以外を入れることでより美味しくなると思いますよ」

「本当なのです?」

「えぇ」


半信半疑なシグマに、デモの時とはまた別の組み合わせにしたものを渡す。


「美味しいのです!」

「そうでしょう?だから色々組み合わせてみてください。1番いい組み合わせが見つかるかもしれませんよ」

「分かったのです!」


シグマが行ってしまいそうになったので待ったをかける。


「ちょっと待ってください」

「?なにかあるのです?」

「当日のことで、予定が確定したのでその事だけ。事前に説明した通りで行こうと思いますので、そのつもりをしておいてください」

「分かったのです!」


シグマは確認を聞くやいなや新たな組み合わせの開拓のため、テーブルに向かっていった。


「シグマ様は少し偏食と言いますか⋯気に入ったものしか食べませんし一度も食べたことがないものには絶対手を出さないんですよね⋯」

「そうなんですか?」


勉強させているといっても大したものではないし、基本的には自由にしてもらっているが⋯⋯

私に手がかからない分、セセリアはシグマの面倒をよく見ている。

そのセセリアが言うのならそうなのだろう。


「よく調理場に顔を出してるそうなんですが、つまみ食いするのは決まって今までに食べたことがあるものなんだそうです。そもそもつまみ食いがダメですが」

「⋯⋯あまり人を信用していないんでしょうね。というよりかはこの世そのものをあまり信用できていない。ありとあらゆる全てに疑いを持ってしまうんでしょう。自分にとってそれが善なのか悪なのか。あの子自身で判断できないから手を出さない、ということなんでしょうね」

「なるほど⋯⋯」

「その辺は一つ一つ教えていきましょう。判断の仕方も。少なくとも家の人間や私たちのことは疑っていないようですし」


信用していなければつまみ食いなんてしない。つまみ食いをするということは少なくとも家の人間のことは信用してくれているみたいだ。


時間はある。高等部に入るまで3年弱。

子育ての経験など一度もないから自信はあまり無いが⋯それでも、自らが助け生かした命なのだから。ちゃんと向き合わなければならない。

シグマのこれからの事も聖女と話さなければな。


───────────────────────────


夜、私はテーブルに向かって黙々と作業をしていた。

当日、シグマに身につけておいてもらうつもりの魔道具を作っていた。


この世界の魔道具は基本的に生活の補助になるような、いわゆる家電のようなものが殆どだ。戦闘向きのものは遺跡やダンジョンで出てくるものぐらいだ。


今回作っているのは防御と気配遮断がメインだ。

私の気配遮断魔法でも遮断しきれない部分を遮断することを目的にしている。

また何があってもいいように防御系も用意しておく。


我ながら過保護なものだが、備えあって憂いなしだ。


作り終わったタイミングでシグマが部屋に来た。

シグマは寝る時、日によって違う部屋に居る。

シグマの部屋もあるのだが、寝る時は必ず誰かの部屋だ。

お母様が私がほとんどだが稀にセセリアの部屋に行くこともある。

今日は私の部屋らしい。


「なにしてたのです?」

「大したことではありませんよ。当日あなたにつけてもらうお守りみたいなものを作ってたんですよ」


キョトンとした顔をするシグマ。


「そういえばこれをあなたに渡すのを忘れてました」


主神から貰ったお礼でありシグマへの贈り物。

一度私の中に吸収されていた贈り物を取り出し、シグマの前に出す。


「これなんなのです?」

「主神マーラカルトからあなたへのプレゼントです」

「?」


シグマが色んな方向から見ているがただの光っている球体なので意味は無い。

私が差し出しているため疑っている様子はない。


「これどうするのです?」

「じっとしておいてくださいね」


ゆっくりとシグマの胸の辺りに光る球体を押し当てる。抵抗もなくシグマの中に入っていく。

シグマはびっくりしているがじっとしろと言われた手前、動けずどうしたらいいか分からないといった様子だった。


「はい。もういいですよ」

「か、体の中に入っちゃったのです」

「それはあなたの神器であるバーラントとの繋がりを強くするもので、おそらく神力も認知できるようになったんじゃないでしょうか」


私の言葉に、早速神力を認知してみようとするシグマ。

ほんの少し神力が活性化するのが視えた。


「なにか感じたのです」

「それが神力です。やはり認識できるようになりましたか。主神に感謝しないとですね」


これには素直に感謝だ。割と手詰まりだったのだ。


再会の前にやるべき事はやれただろう。あとは当日を待つのみだ。

なんかめっちゃ長くなりましたね。

個人的にはこれぐらいをコンスタントに書きたいと思っていますが、読む側はどうなんでしょうか。

6000文字前後の方がいいのでしょうか。

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