↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
524/528

第524話 はいチーズ

宇宙では大変なことになっておりますが……。


そんなことは知ったこっちゃない、ひかりたち(笑)。

今回はいつもの9人による、いつもの大騒ぎです!

「そもそもやな、ボクらロボット部なんやから、ちゃんと活動せなアカンのちゃうか?」

両津良幸が、いつになくもっともらしい顔でそう言った。

都営第6ロボット教習所の談話室。

地下の対袴田素粒子防衛中央指揮所では、教官たちが忙しく働いているというのに、こちらはいつもと変わらず平和そのものだった。

「君は何を言ってるんだい? 俺たちは毎日思いっきり活動してるぜベイビー!」

棚倉正雄、いや、自称ジョニーが胸を張る。

「何の活動や?」

「青春さ!」

 正雄の歯がキラリと光る。ニヒルな笑顔である。

「いや青春って、何すんねん?」

「それを探すのが青春だぜっ!」

 正雄は右腕を天に向けて上げた。何のポーズかは謎である。

「はよ探さんかい!」

「はい!」

その時ひかりが、まるで正雄の真似をするかのように元気よく手を挙げた。

「私、毎日ご飯食べてるよ!」

「それは部活ちゃう!」

「毎日することと言えば、睡眠も大切ですわ」

宇奈月奈央が、スマホから顔を上げずに言った。画面では、特撮ドラマヒーローが戦っている。

「それも部活ちゃうって!」

「おやつも大切ですぅ」

伊南村愛理が、手にしたお菓子の袋を掲げる。

「大切なものとちゃう! 部活や、部活!」

「じゃあ、両津くんは何してるのよ?」

泉崎奈々の質問に、両津が再び胸を張った。

「ボクは部長や!」

「だから何してるのよ!」

「部長の仕事や!」

「だから、それは何かって聞いてるのよ!」

「えーと……」

 両津の目が泳ぐ。

「あれや! みんなが楽しく活動できるように見守っとるんや!」

「何もしてないだけじゃない!」

「なるほど。いうなれば監督業ってところですわね」

「そう! それやそれ! 宇奈月さん、ええこと言う!」

「監督って、映画撮る人?」

ひかりが首をかしげる。

「じゃあ両津くん、映画撮ろうよ!」

「その監督とちゃう!」

「じゃあ、野球の?」

「それもちゃう!」

「現場?」

「うきーっ!」

そんなやり取りの最中、談話室のドアが勢いよく開いた。

「何よ、みんな楽しそうじゃない!」

野沢心音だ。

左右に垂らした三つ編みを揺らしながら入ってくる。その後ろから、館山大和がニッコリと顔を出した。

「こんにちは。ボクらも混ぜてもらっていい?」

「ココちゃん! 大和くん!」

ひかりが嬉しそうに両手を振った。

「もちろんですわ。どうぞこちらへ」

「ほら、大和も座りなさいよ!」

心音が大和の腕を引っ張り、空いていた椅子に腰を下ろす。

「うん。でも心音、そこ一人掛けの椅子だよ?」

「二人ぐらい座れるわよ!」

「いや、無理だって!」

仕方なく大和が隣の椅子に座る。

「ちょっと! 何で離れて座るのよ!」

「離れてないよ、隣だよ?」

「それじゃあ、」

 そう言うと心音は立ち上がり、大和の座っている上にどっかと腰をおろした。

「これで許してあげるわ!」

「まさにツンデレですわ」

奈央が嬉しそうに微笑んだ。

「ツンドラ!」

ひかりが続く。

「それは寒い地方!」

奈々と心音の声が見事に重なった。

「おお、二人息ぴったりやん」

「ぴったりじゃない!」

「ぴったりじゃない!」

「ほら」

奈央がニッコリと笑う。

「さっきから何なのよ、あんた!」

心音が奈々を指差した。

「それはこっちのセリフよ!」

「私のマネしないでよ!」

「そっちこそ!」

「二人とも、そっくりだね!」

ひかりが嬉しそうに言った。

「似てない!」

「似てない!」

「似てる」

マリエがぽつりとつぶやく。

二人は顔を見合わせた。

なんだか納得がいかない。

「ところで皆さん!」

奈央がパンと手を叩いた。

「せっかく9人揃ったのですから、例のアレをやりませんか?」

「あれって何よ?」

 心音が興味なさげに、だが本当はあることが見え見えに聞く。

「メンバーが揃ったら、アニメでは必ず記念撮影です」

「何の記念なんですかぁ?」

 愛理が可愛く首をかしげた。

「愛理ちゃん、アニメや特撮にはお約束ってのがあるでしょう!?それです」

「なるほどですぅ!」

「ぜんぜんなるほどやあらへんわ!」

「あ! 撮りたい撮りたい!」

ひかりがぴょんと跳ねる。

その隣で、マリエも無言でぴょんと跳ねた。

「いいわ。ひかりがそう言うんなら、私が撮ってあげる」

奈々がスマホを取り出した。

「ツンデレですぅ!」

「違うわよ!」

「ツンドラ?」

 またひかりが首をかしげる。

「そうじゃないって!」

「ベニスとかの?」

「それはゴンドラ!」

「開けてはいけない箱?」

「パンドラ!」

「メロメロ〜って」

「昼ドラ!」

「それはドロドロだよ、奈々ちゃん」

「うきーっ!」

「奈々ちゃんがお猿さんになった」

「もういいから! 早くみんな集まって!」

 そう言ってスマホを構える奈々。

「奈々ちゃんは写らないの?」

「私は撮る方だから」

「じゃあ私が撮る!」

「それじゃ、ひかりが写らないじゃない!」

「じゃあ奈々ちゃんが撮って!」

「どっちやねん!」

「ふふん」

 その時心音が、得意そうに鼻を鳴らした。

「こういうときはセルフタイマーを使うのよ!」

ひかりがパッと心音に視線を向ける。

「セルフサービス?」

「セルフタイマー!」

「セルフレジ?」

「違うって!」

「じゃあガソリンスタンドで……」

「うきーっ!」

「うきーっ!」

 奈々と心音が同時に猿になった。

「まぁまぁ、ココも落ち着いて。遠野さん、セルフタイマーって言うのは、自動でカメラのシャッターが切れる機能だよ」

「へぇ、便利だね!」

 そんなこんなでなんとか話がまとまり、記念撮影が始まった。

奈々のスマホをテーブルの上に立てかけ、全員で並ぶ。

ところが、これが思いのほか難しかったのだ。

「センターはこの俺だぜ、ベイビー!」

正雄が真っ先に真ん中を陣取った。

「なんであんたが真ん中なのよ!」

「主役は真ん中に立つものさ、お嬢さん!」

「そのお嬢さんはヤメて!」

「では、身長順に並んではいかがでしょう?」

奈央の提案に、一同がうなづく。だが……

「私は大和の隣じゃないとありえない!」

心音が即座に宣言した。

「身長順だよ?」

 困り顔の大和。

「じゃあ大和、ちょっと背を低くして!」

「そんな無茶な!」

「膝を曲げればいいのよ!」

「ボク、ずっと中腰で写るの?」

「そうよ!」

 両津の呆れ顔が、大和に向く。

「館山くんも大変やなぁ、小さい頃からこんなのとずっと一緒なんやろ?」

「まぁね」

 困ったような、照れているような笑顔の大和。

「こんなのってどんなの?」

 ひかりの問いに、両津が心音を指さした。

「こんなの」

 そんな騒ぎをよそに、マリエはひかりの隣にピタリとくっついている。

「マリエちゃんも真ん中に来たら?」

「ここがいい」

「そうなの?」

「ひかりのとなり」

「てへへ〜」

ひかりが嬉しそうに笑った。

「愛理ちゃん! 写真撮るんだから、お菓子は手に持たない!」

今度は奈々が愛理を注意する。

「はぁ〜い」

愛理は手にしたお菓子を全部口の中に放り込んだ。

「そういう意味じゃない!」

「もぐもぐ……」

「口いっぱいじゃない!」

「もぐもぐ……ごっくん!」

「飲み込めばいいってもんじゃない!」

「でも奈々先輩、お菓子を粗末にしたらいけないですぅ」

「それはそうだけど!」

「えらい」

マリエが小さく拍手する。

「何がえらいのよ!?」

「ちゃんと食べる子、えらい」

「子供かよっ!」

ようやく9人が並んだ。

「じゃあ、10秒後に撮れるようにするからね!」

心音はスマホをセットすると、慌てて大和の隣に走った。

「はい、チーズ!」

ひかりが叫ぶ。

「まだ早い!」

「チェダー!」

「チーズの種類じゃない!」

「カマンベール!」

「だから!」

「ゴルゴンゾーラ!」

「もういいってば!」

「……六甲おろし」

マリエがぽつり。

「それ阪神タイガースや! けど、なんで!?」

「チーズおろし機」

「遠いって!」

両津が思わず叫んだ。

カシャッ!

「あ! 撮れた!」

全員がスマホに駆け寄る。

そこには、なんとも奇妙な9人が写っていた。

ひかりは目を閉じ、奈々と心音は口を大きく開けている。両津はマリエに向かってツッコんでいる最中。

愛理はまだ口をもぐもぐさせていた。

そしてマリエだけが、いつもの無表情で真っすぐカメラを見つめている。

「あははは! 奈々ちゃんとココちゃん、同じ顔!」

「同じじゃない!」

「同じじゃない!」

またしても二人の声が重なる。

「やっぱり双子なんじゃない?」

ひかりが真剣な顔で尋ねた。

「違う!」

「違う!」

「きっと双子」

マリエがうなづく。

「マリエまで!」

「もう一回撮るわよ!」

奈々が宣言した。

今度は正雄がスマホの前でポーズの練習をしている。

「棚倉くん、何してんねん?」

「最高の一枚を目指しているのさ、ベイビー!」

「普通に写れへんのか?」

「普通では伝説は生まれないぜ!」

「さすがに写真一枚で伝説はでけへんと思うけどなぁ」

再びセルフタイマーが動き出す。

今度は誰もしゃべらない。

しかし、正雄だけが少しずつ両腕を広げていく。

3、2、1……。

カシャッ!

結果は見事だった。

正雄の両腕が、両津と奈央の顔を完全に隠していたのである。

「なんでボクの顔がないねん!」

「わたくしも写っておりませんわ」

「すまない、ベイビー!」

「すまないで済むかい!」

「俺のポーズは完璧だったんだが……」

「ポーズ以前の問題や!」

「ジョニーの記念写真」

マリエが写真を覗き込みながら言った。

「それはそれで伝説やな!」

もう全員、笑いが止まらない。

「もう! 全員、動かない! しゃべらない! 変なポーズも取らない!」

とうとう奈々が両手を上げた。

「特にひかり!」

「ほえ?」

「何も言わない!」

「は〜い!」

「返事はいいの!」

「……」

「黙らなくていいのよ!」

「どっちやねん!」

3回目。

9人は直立不動でカメラを見つめた。

誰も動かない。

誰もしゃべらない。

もちろん正雄もポーズを取らない。

カシャッ!

今度こそ成功!

……と思いきや。

「なんか、お葬式みたいね」

心音が写真を見てつぶやいた。

「縁起でもないこと言うなや!」

「卒業アルバムですわね」

「まだ早いですぅ」

「証明写真?」

ひかりが首をかしげる。

「9人一緒の証明写真なんてあらへんわ!」

「集合証明写真ですわ」

「何を証明するんや!」

「全員、生きてます!」

ひかりが元気よく答えた。

「そら見たら分かるわ!」

「じゃあ、これは失敗ね」

心音が大きくため息をつく。

「写真って、こんなに難しかったっけ?」

大和も首をかしげている。

「もう普通に撮ろうよ」

そして苦笑しながら、そう提案した。

「みんな、いつもどおりでいいんじゃないかな?」

「そうね。もう好きにして!」

奈々もすっかり諦めた。

9人が、なんとなく集まる。

ひかりは奈々の腕にしがみつき、その反対側にはマリエ。

心音は当然のように大和の腕を抱え、両津と正雄は何やら怪しげなポーズ。

愛理はお菓子の袋を抱え、奈央はそんな一同を見て微笑んでいる。

「じゃあ撮るよ!」

大和がスマホをセットして、慌ててみんなのところへ戻った。

カウントが始まる。

そのとき、ひかりが突然叫んだ。

「あ! みんな、笑って!」

「言われなくても笑ってるわよ!」

「奈々ちゃん、怒ってる?」

「怒ってないわよ!」

「怒ってる」

「マリエ!」

カシャッ!

今度は、全員が満面の笑顔。

……ただし奈々の眉毛だけは三角だった。

「奈々ちゃん、変な顔〜!」

「だから誰のせいよ!」

「あれ? でもココちゃんも同じ顔してるよ!」

「私はちゃんと笑ってるわよ!」

「双子」

「だから違うってば!」

奈々と心音の声が、またしても重なった。

談話室に、大きな笑い声が響き渡る。

そんな、いつもと変わらない午後なのであった。

奈々とココ、やっぱり似ているような……。

いや、本人たちは全力で否定するでしょうけど(笑)。


今回もお読みいただき、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。