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逆転生勇者の再召喚  作者: 中崎実


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9/9

サツバツ!いえ日常ですよの巻。

まったりした日常。

挨拶回りと武芸者のこと。

 年が明けて初の週末、挨拶がてら顔を出したのは近所の古武術道場。


「そうか、彼女の親に挨拶したのか」


 道場主の鈴木さん、さっそく揶揄(からか)いに来ましたよ。困ったオッサンだよまったく。


「違いますって」

「母親だけだったのはちょっと残念だな、父親っていうハードルが残ってるぞー」

「だからそういうのじゃないって」


 隣で小動物が固まってるじゃないか、逃げられたらどーすんだ。

 そして小動物が赤い顔してるのは見なかったことにしよう。


「ま、冗談は置いといて」


 置いとくのかよ。

 鈴木さんの奥さんが、『お父さん、若い女の子をからかったら駄目でしょう』なんて言ってるんだけど。


「久しぶりに一本やってくかい?薙刀(なぎなた)と槍はなしで」


 いつもの軽いノリで誘われた。

 槍や薙刀が出てきたら、剣しか使わない俺じゃ勝てないからね。今は魔法で肉体強化っていう誤魔化しもできないし。


「お願いします」

「じゃ、道場に行くかね。小暮さんも、よければ見においで」

「あ、はい」


 そういや、小動物には剣を振ってる姿って見せたことないんだよね。


「へえ、初めて見せるんだ?」


 鈴木さんの家は昔から剣術を教えてたこともあって、敷地内に小さい道場がある。そこで壁にかかってた木刀を選びながら、鈴木さんは面白そうにコメントした。


「あんまり見せびらかすようなもんでもないですし」

「それもそうか。こっちでいいかな?」


 言いながら鈴木さんが手に取ったのは、他とは違う姿の木剣。


「はい、それで」


 少し湾曲(わんきょく)した片手剣を()した木剣を軽く振る。


 鈴木さんは事情を知ってるから、俺の流派がどうだとかは絶対聞いてこない。というか、俺が二回目に巻き込まれて元の世界(あちら)に行った時に召喚されたのが鈴木さんだし。

 召喚された時にブチ切れて、たまたま持ってた日本刀振り回して暴れたんだよなあ、このおっさんは。

 あっちに銃刀法なんか無いから、別に良いんだけどね。

 そんな鈴木さんとの付き合いも、俺が中学生の時からだからずいぶん長くなった。


「で、雄太君、練習はしてるの」

「最近は素振りがやっとですねー」


 忙しいし。剣術忘れても死なないし。


「せっかくなんだからさー、ちゃんと練習しといてよ」

「なぜに」

「私が楽しい」


 ぶっちゃけすぎだよ、おっさん。


──────────


 俺が使ってる剣術はアルバスとして習った戦場向けの剣なので、お世辞にもきれいなものじゃあないんだけど、鈴木さんとしては『実践的な』剣術が見られて嬉しいんだそうで。


「ただの泥仕合ですよ」


 剣で戦うのなんて、戦闘の最終局面だからね。遠隔で魔法ぶつけて、中距離で弓矢の応酬があってから歩兵含めて槍で殴り合った後に、最後の最後で突撃して、剣でドツキあい。これがあっちの戦闘の大体の流れだから、剣術と言ったって馬上も徒歩(かち)も想定されてるし、攻撃手段も殴る蹴るなんでもあり。

 正統派の場合、素肌剣術じゃなくて甲冑着込んでのドツキあいになります。


 で、そういう『正統派』の剣術に加えて俺の場合、暗殺部隊(ゆうしゃ)やってましたからね。隠密行動の邪魔になるので甲冑は着ないかせいぜい鎖帷子(チェーンメイル)なので、暗殺者(ゆうしゃ)の剣は素肌剣術に近いことになる。

 体術と組み合わせて静かに殺すための技まであるので、泥仕合なんて言葉がきれいに聞こえるくらい、えげつないです。なにしろ、敵が側面を見せた膝は蹴飛ばして壊すものだし。


「いいんだよ、他の人がやってないことだからさ。面白いでしょ」


 鈴木さんは殴り合いより理を追求したいタイプだから、俺との手合わせは型をさらったりするのがメインになる。

 というか鈴木さんが習った剣術って、俺のえげつない方の剣術とよく似てるんだよね。お互いに本気を出したら洒落にならないので、型をさらうことになってます。


「ところで、彼女は雄太君の剣術の事、知ってるの?」

「あ~、春に()()にあったんですよ、この子」


 さらっと一言で伝えると、鈴木さんがぎんっと目を光らせた。


「……叩き斬っておくべきだったな」


 口調は静かなんだけどね。なんというか本気で頭にきてますね。


「斬りそびれた奴がやらかしましてねー」

「次にあっちに行くことがあったら、私の代わりに斬ってこないか?」


 この武芸者は物騒でいけません。


「やるならこっそりやりましょうよ」

「雄太君だって物騒じゃないか?」

「そりゃ、ねえ。暗殺(それ)が仕事でしたから?」


 おっさんと顔を見合わせて笑う。

 まあお互い、目は笑ってないんだけどね。


「次に行く予定が出来たら、うちに寄ってから行ってくれるかな。刀、貸してあげるよ」


 やっぱり物騒な武芸者でした。

現代日本は平和なので、剣術をさぼったところで命に係わらないのです。

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