年末デビューと親バレが同時だったの巻。
主に小暮ちゃんの災難(?)
正月と言ってもどこに帰省するわけでもない我が家は、年末の例大祭が一大イベントになる。
母さんがサークル参加してるからなんだけど。大掃除も正月準備も済ませてコミケに行くのが母さんの冬休み。
父さんはあんまり興味ないそうで、いつも通りアウトドアグッズの手入れにその日を充てていた。
俺は今年は手伝いに行かないで、サークルの競技ロボット用プログラムの手直しをしてたわけですが。
「……で、なんで小動物がダメージ受けてるのかなー」
母さんのところの手伝いに行った小動物が、帰って来るなり肩を落としてました。
「いきなり親バレとかありえない……」
「娘がいつもお世話になってます」
「雄太、お茶入れて」
母さんがカート引きずって帰ってくるのは判る。
一緒に小動物が来るのも分かる。
……両手に戦利品をぶら下げて妙に艶々してるそちらのご婦人は、一体どなたですかね?
「小暮ちゃんのお母さんよ!昔はよく即売会で会ってたの!びっくりしたわーまさかの再会!何年ぶりだったっけ」
「20年以上じゃない?」
「……は?」
とりあえずダイニングに通して、お茶でも出しますか。
「手伝う……」
なんかヨレっとしてる小動物が、自発的にキッチンに入ってきた。
「あれ、どしたの?」
「うちのお母さんがね、サークルの既刊新刊全部買いに来た」
「なしてまた。手伝ってるって話でもした?」
「してないよ……あ、お湯はちゃんと沸かさなきゃダメだよ」
ポットのお湯で紅茶をいれようとしたら、小動物に止められました。
「バレてもやめろとか言われそうにないし、良かったんじゃ?」
「それはいいんだけど、まさかお母さんも腐女子だったなんて……」
ああ、そういうことか。
「……強く生きような?」
肩をぽんと叩いてやったら、むぎゅっとしがみついてきました。
どことは言わないけど柔らかいです。胸とか胸とか胸とか。
役得、役得。
頭ぐりぐりしてやったら、離れて行ったけど。
「お母さんの趣味、知らなかったんだ?」
「私が一人暮らし始めたから、久しぶりに参加したんだって」
「あ~、それでなんかはっちゃけてんのか」
ダイニングのほうはずいぶん楽しそうに二人ではしゃいでいる。
父さんが顔を出したらまたなんか賑やかになってるんだけど。
「にぎやかでごめんね?」
「気にしなくて良いよ、久しぶりで楽しかったんだろうし。あ、そっちのシュトーレンの残りも食べる?」
「食べる」
適当にクッキーやシュトーレンを大皿に盛りつけて持っていくと、貴腐人二人がにこにこしていた。
「香蓮さん、息子さんそのまま執事喫茶やれそうじゃない?」
香蓮、てのは母さんのペンネームね。
「そうねえ、所作はできるわねえ」
執事喫茶は行ったことないけど、異世界勇者だった頃に一通りのマナーは叩き込まれましたからね。道具類がこっちとは全然違うけど、こっちでも応用は利くよ。
「育児漫画の赤ちゃんが執事喫茶のできる年齢なのねー」
「そーなのよ、時間経つの早いわー」
容赦なく子供をネタにするとは同人漫画家の鑑。つーかその育児漫画、どんだけ読者いたんですか。
うかつにツッコミ入れるとろくなことにならなさそうなので、黙って紅茶をいれる。今日の紅茶はポットに移すところまで小動物がやったから、多分味は問題ないだろう。
「本日の紅茶はニルギリになります」
「ノリもいいのねー」
「なんか期待されてそうなんで」
フリースとデニムじゃあんまり様にならないけどね。
「お菓子の解説は?」
と、これは母さん。
「ろくな説明にならないよ?」
母さんのリクエストはスルーしておく。
貴腐人二人と父さんがダイニングテーブルを占領したので、俺と小動物はリビングの炬燵に避難。
さすがに俺も、年季の入った貴腐人同士の会話に交じりたくは無いし。
「で、戦利品はゲットできた?」
「ああうん、できた」
もそもそシュトーレンをかじりながら、小動物はやっぱりなんかヨレヨレしてました。
山西家の年末風景、その2。
お父さんはコミケ勢ではありませんが、妻の趣味を温かく見守る人です。
※用語解説
貴腐人【きふ-じん】
腐女子の進化系。
このステージを経ずに、腐女子から直接、貴腐神の巫女に進化する人もいる。




