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逆転生勇者の再召喚  作者: 中崎実


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8/9

年末デビューと親バレが同時だったの巻。

主に小暮ちゃんの災難(?)

 正月と言ってもどこに帰省するわけでもない我が家は、年末の例大祭(コミケ)が一大イベントになる。

 母さんがサークル参加してるからなんだけど。大掃除も正月準備も済ませてコミケに行くのが母さんの冬休み。

 父さんはあんまり興味ないそうで、いつも通りアウトドアグッズの手入れにその日を充てていた。

 俺は今年は手伝いに行かないで、サークルの競技ロボット用プログラムの手直しをしてたわけですが。


「……で、なんで小動物がダメージ受けてるのかなー」


 母さんのところの手伝いに行った小動物が、帰って来るなり肩を落としてました。


「いきなり親バレとかありえない……」

「娘がいつもお世話になってます」

「雄太、お茶入れて」


 母さんがカート引きずって帰ってくるのは判る。

 一緒に小動物が来るのも分かる。


 ……両手に()()()をぶら下げて妙に艶々してるそちらのご婦人は、一体どなたですかね?


「小暮ちゃんのお母さんよ!昔はよく即売会で会ってたの!びっくりしたわーまさかの再会!何年ぶりだったっけ」

「20年以上じゃない?」

「……は?」


 とりあえずダイニングに通して、お茶でも出しますか。


「手伝う……」


 なんかヨレっとしてる小動物が、自発的にキッチンに入ってきた。


「あれ、どしたの?」

「うちのお母さんがね、サークルの既刊新刊全部買いに来た」

「なしてまた。手伝ってるって話でもした?」

「してないよ……あ、お湯はちゃんと沸かさなきゃダメだよ」


 ポットのお湯で紅茶をいれようとしたら、小動物に止められました。


「バレてもやめろとか言われそうにないし、良かったんじゃ?」

「それはいいんだけど、まさかお母さんも腐女子だったなんて……」


 ああ、そういうことか。


「……強く生きような?」


 肩をぽんと叩いてやったら、むぎゅっとしがみついてきました。

 どことは言わないけど柔らかいです。胸とか胸とか胸とか。

 役得、役得。

 頭ぐりぐりしてやったら、離れて行ったけど。


「お母さんの趣味、知らなかったんだ?」

「私が一人暮らし始めたから、久しぶりに参加したんだって」

「あ~、それでなんかはっちゃけてんのか」


 ダイニングのほうはずいぶん楽しそうに二人ではしゃいでいる。

 父さんが顔を出したらまたなんか賑やかになってるんだけど。


「にぎやかでごめんね?」

「気にしなくて良いよ、久しぶりで楽しかったんだろうし。あ、そっちのシュトーレンの残りも食べる?」

「食べる」


 適当にクッキーやシュトーレンを大皿に盛りつけて持っていくと、()()(じん)二人がにこにこしていた。


香蓮(カレン)さん、息子さんそのまま執事喫茶やれそうじゃない?」


 香蓮、てのは母さんのペンネームね。


「そうねえ、所作(しょさ)はできるわねえ」


 執事喫茶は行ったことないけど、異世界勇者(アルバス)だった頃に一通りのマナーは叩き込まれましたからね。道具類がこっちとは全然違うけど、こっちでも応用は()くよ。


「育児漫画の赤ちゃんが執事喫茶のできる年齢なのねー」

「そーなのよ、時間経つの早いわー」


 容赦なく子供をネタにするとは同人漫画家の(かがみ)。つーかその育児漫画、どんだけ読者いたんですか。

 うかつにツッコミ入れるとろくなことにならなさそうなので、黙って紅茶をいれる。今日の紅茶はポットに移すところまで小動物がやったから、多分味は問題ないだろう。


「本日の紅茶はニルギリになります」

「ノリもいいのねー」

「なんか期待されてそうなんで」


 フリースとデニムじゃあんまり様にならないけどね。


「お菓子の解説は?」


 と、これは母さん。


「ろくな説明にならないよ?」


 母さんのリクエストはスルーしておく。


 ()()(じん)二人と父さんがダイニングテーブルを占領したので、俺と小動物はリビングの炬燵(こたつ)に避難。

 さすがに俺も、年季の入った()()(じん)同士の会話に交じりたくは無いし。


「で、戦利品はゲットできた?」

「ああうん、できた」


 もそもそシュトーレンをかじりながら、小動物はやっぱりなんかヨレヨレしてました。

山西家の年末風景、その2。

お父さんはコミケ勢ではありませんが、妻の趣味を温かく見守る人です。


※用語解説

貴腐人【きふ-じん】

腐女子の進化系。

このステージを経ずに、腐女子から直接、貴腐神の巫女に進化する人もいる。

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