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04話

〈仁side〉






週明けの、二日間の休み明けの職場の恐ろしさを、こんなにも早く体験し実感するハメになるとは、一体誰が思っていたか。少なくとも、俺はまだ先の話だと思っていた。十代そこそこで経験するなんてな。






早朝出勤、残業、徹夜、ブラック企業さながらの事案に労働基準法なんてものが通用しないことを俺は知っている。悪人を前にした警察が待ってくれないのと一緒で、俺たち狩人も待ってやらないのだ。






「副隊長、いかがなさいました?」






「…いや、山が出来ているな、と」






デスクの上にはペーパータワーが四つと半分。鷹臣のデスクには七つ。たった二日休んだだけでこの始末。俺等に休むなってか?過労死しろと?社畜もいいところだ。このまま倒れたい。帰りたい。壱羽とゲームの続きをしたい。






「どういうことだ。失敗したと連絡なかったぞ」






「総隊長と副隊長は久しぶりのお休みでしたので、ご連絡するのも憚られ…」






「休むと言ったが連絡するなとは言ってないが?変な気を使うな」





俺より先に出てきていた鷹臣は、書類片手に部下を説教していた。どうやら三番隊が失敗したらしい。一切、隊長の顔を見ない鷹臣。その雰囲気が怒っていることを、三番隊長は確かに感じ取っていた。だが、連絡しなかったのは隊長の判断ミスではあるが、連絡したら連絡したで鷹臣に怒られただろう。賢明な判断だろう、と俺は思う。なにせ、久しぶりの壱羽とのデートだったんだ。







今日は朝からバイトだと壱羽には言っているし、学校には家庭の事情で通してある。まあ家庭の事情っつっても、学校には狩人(国家組織)に居ると校長に話をしてあるんだけどな。






「次はないぞ」






「はい。申し訳ありませんでした」






「よし、次の任務があるから行ってこい。もう失敗はないな?」






「ありません!」






「良い返事だ」





やっと書類から目線を上げ、三番隊長を見た。艶やかに笑う鷹臣には、たくさんの部下(信者)がいる。その顔の造りもそうだが、有能かつ地位もあるし、これからの出世も期待して良いだろう。もちろん、俺もだけど。鷹臣は自らの全てをフルに使う。何にも躊躇いを持たない潔さと鋭さ。力を振るうときの麗しさと力強さ。全てにおいて一番上に立つのが、九鬼鷹臣という男だ。






「副隊長、相談があるのですが」






「なんだ?」






「実は妻が妊娠しまして…」






「へぇ!そりゃめでたいな。おめでとう」






「ありがとうございます。それで、妻の容態が優れず、暫く休みをいただきたいのです」






美方|《医療班》の休みか…。俺の一存では決めきれないな。鷹臣を通して、上に休みを取らせれるか。いや、常に人手不足の医療班から期限不明の休みは厳しいところだが…。






「分かった。総隊長に取り入ってみるが、あまり期待はするなよ」






「ありがとうございます!よろしくお願いいたします!!」






そのまま土下座するんじゃねーかってぐらい頭を下げた美方を、なんとか押し止め仕事へ戻らせた。さあて、この山を片付けない限り帰れねぇだろうな。






一昨日の件から、壱羽はいつも以上に食べるようになったし、何をしてもボーッとしている時が増えた。壱羽の能力を考えれば何も問題はないんだが、封じてあることを考えれば話が違う。






「総隊長、少し耳に入れたいことが」






「なんだ?」






「ーー一昨日の件で、」






鷹臣の伏兵であり部下の棗が音もなく姿を見せたかと思うと、そのまま内緒話をするように耳元に顔を寄せた。鷹臣は俺に目配せをして、その内緒話を聞くことを許した。






「ーー闇の娘が目覚めたと上層部が騒ぎ始めています。このままでは、時間の問題かと」






棗はそっと離れ、鷹臣の様子を伺う。ババア共、耳が遠いくせに、こんな話はよく聞いてるんだな。呆れて文句も出ねぇわ。鷹臣に任せて、俺は仕事でもするか。






「どうされますか?」






「ババア共に見張りをつけろ。変な動きをしたら連絡をくれ」






「御意」






頷いてから消えた棗。アイツの瞬間移動は、いつ見ても清々しいよなあ。あと腐れなく消えるし。部下にゃ持ってこいのやつだよ。出世したいだろうけど。






「聞いていたな?」






「おう。サポートするわ」






「お前も目を離すんじゃねぇぞ」






「わーってるって」






壱羽至上主義の壱羽厨め。ただえさえ鋭い目付きしてんだから眼力込めて言うな、怖えぇよ。鷹臣君の目を手を振って往なし、俺はまた書類に目線を落とした。






マジで今日は何時に帰れるだろうか。残業とかありえそうでやだ。早く人員不足解消されねーかな。一向に減る気配のない書類を見て、俺は遣る瀬なく溜め息を吐いたのだった。





〈Side End〉

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