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【レグニア王国物語】魔王を討伐したら終わりだと思った?今度は腐敗した貴族社会がお相手のようです。〜勇者パーティは政争の道具じゃありません!〜  作者: たけぞう
査問会議編

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門閥貴族編③第三章:大聖女の誇らしげなドヤ顔


 そんな周囲の凍りつくような空気の中で、一際異彩を放っていたのは――大聖女フィオナその人だった。


 彼女は普段、民衆からどれほど熱狂的に讃えられ、神の代理人として神格化されようとも、どこか他人事のように冷めていて、居心地の悪さしか感じていなかった。

 自分に向けられる称賛には、いつだって無関心で、儀礼的な微笑みを返すだけである。


 ――だが、それが愛する夫のこととなれば、話は全く別だった。

 肌でびりびりと感じる、周囲の者たちの圧倒的な畏敬の念。自分と王女に向けられていた畏怖の念が、いまや完全に、隣に立つ剣聖レオンハルトへの称賛と畏怖へと変わっているのを実感しながら、フィオナはこれまでの人生で一度も見せたことがないほど、誇らしげな顔をしていた。


 胸を張り、きらきらと輝く瞳を周囲に走らせる。

 その全身から発せられているのは、隠しきれない得意げなオーラだった。


 (見た? 今の見ました⁉︎あれ、私の夫なんです! 自慢の旦那様なんですっ!どうですかっ!)


 言葉として発してはいないものの、その身に纏う雰囲気やしぐさは、今にもそう言いながら王都の広場を跳ね回りそうなほどにフンフンと鼻息を荒くしていた。


 …最愛の男が見せた圧倒的なカッコよさに、内心の自慢したい欲が爆発寸前となっている大聖女なのであった。


 少し離れた場所から、その一連の光景を眺める者たちがいた。

 大賢者ヴァレリアは「やれやれ」とばかりに呆れたような表情で小さく息を吐き、その隣にいる勇者アルスは、誇らしさと気恥ずかしさが入り混じったようなフィオナの姿を、どこか愛おしそうに微笑ましく見つめている。


 ――だが、その勇者の隣に立つ第一王女ヴィクトリアは、夫が他の女(大聖女)のことで頬を緩ませているのが面白くなかったのか、わずかに眉をひそめ、不機嫌そうな視線を向けた。


 しかし、それも一瞬のこと。

 彼女は私情をかなぐり捨て、政治家としての冷徹な顔へと表情を立て直す。

 広場に響き渡る凛とした声で、震える騎士や兵士たちへ的確な指示を飛ばした。


「そこに倒れている者たちを全員拘束しなさい! 厳重に尋問を行い、この背後で糸を引いていた黒幕を特定するのです!」


 ヴィクトリアの鋭い号令が、ざわめく広場をピリリと引き締める。


 「王族への大逆、許されざる叛乱行為!

 首謀者およびその一族郎党!もれなく全員取り押さえなさい!」


 その容赦のない、しかし揺るぎない正当性を持った命令に、兵士たちは我に返ったように動き出す。


 そう、これらの一連の騒動。

 実は、すべて最初からヴィクトリアが描いた、完璧な予定調和だったのだ。


 そもそも、焦燥に駆された貴族たちへ「閲兵式に乗じたクーデター」という破滅的な計画を吹き込み、率先して進言した男こそ、ヴィクトリアが何年も前から門閥貴族派の懐へと潜り込ませていた子飼いのスパイであった。


 そのため、反乱の計画、日時、集められる兵の配置に至るまで、そのすべてがヴィクトリアの脳内へ完璧に筒抜けになっていたのである。


 あまつさえ、当日にはわざわざ自身の護衛を「変装したレオンハルト」一人に絞り込むという、謀反を起こす側にとって都合が良すぎる状況まで演出するという、行き届いた心配りさえしてあった。


 もちろん、彼らが不正に溜め込んだ財産の証拠や、癒着の裏帳簿なども、この日のためにあらかじめすべて調査・確認済みだったのだ。

 転がるように罠へとはまり、自らの足で断頭台へと登ってきた愚か者たち。完全無欠の知略と圧倒的な武力が噛み合った時、ヴィクトリアの前に敵など初めから存在しなかった。

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