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【レグニア王国物語】魔王を討伐したら終わりだと思った?今度は腐敗した貴族社会がお相手のようです。〜勇者パーティは政争の道具じゃありません!〜  作者: たけぞう
査問会議編

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門閥貴族編①第一章:王都の暗雲と、腐敗した貴族たちの賭け

ここから、本編の門閥貴族編です。



 大聖堂での公開査問会議が衝撃的な結末を迎え、教会組織が解体・再編された頃――。

 王都の一角にある豪華な邸宅の密室では、第一王子派の貴族たちが顔面蒼白になりながら、重苦しい沈黙を破るように声を荒らげていた。


「どういうことだ……! 教会が、あの一日であっさりと崩壊しただと!?」


 長年、教会と密接に結びつき、その権威を後ろ盾にして私腹を肥やしてきた侯爵が、握り締めた拳でマホガニーの卓を激しく叩いた。


 彼らの目論見では、教会を使って聖女を失脚させ、それをかばう勇者の政治的信用をも地に落とすはずだった。しかし、蓋を開けてみれば、手駒であるはずの教会中枢は自滅し、最大の邪魔者であるはずの第一王女が、民衆の圧倒的な支持を背にして王国全土の主導権を完全に掌握してしまったのだ。


「このままでは、我が派閥の既得権益がすべて剥ぎ取られる……! 教会の次は、間違いなく我々貴族の不正や腐敗にメスが入るぞ!」


「まさか、あの第一王女がそこまで周到に仕組んでいたとは……。教会を手玉にとり、民衆を味方につけ、一気に王国の体制を作り替える気だ」


 焦燥と恐怖に駆られた貴族たちは、もはや一刻の猶予もないことを悟っていた。王女の改革の手が自分たちの足元に及ぶ前に、何らかの決定的な手を打たなければ、彼らの築き上げてきた地位も財産も、すべてが水泡に帰してしまう。


「こうなったら……武力だ」


 一人の男が、冷や汗を拭いながら血走った目を向けた。


「王女の独裁をこのまま許せば、我々は全員、首をハネられる。幸い、我らは領地に私兵もいるし、地方の不満を持つ領主たちをまとめることもできる。……第一王子殿下を担ぎ上げ、今の腐った王室と王女を力で排除するしかない」


「そうだ……あのお方は温厚で扱いやすい。殿下が王位に就かれれば、我々の利権も安泰だ!」


 その過激な提案に、その場にいた貴族たちは一瞬ためらったものの、もはや引き返せないところまで追い詰められている現実を前に、重くうなずき始めた。


 聖女の人望と王女の謀略によって、古い秩序が音を立てて崩れ去る中、追い詰められた特権階級の者たちは、最後の悪あがきとばかりに、暗闇の中で危険なクーデターの牙を研ぎ澄ませ始めていたのだった。


 追いつめられた第一王子派の貴族たちが選んだのは、もはや後戻りのできない一か八かの賭けだった。

 彼らは国王に対し、各地の領地から私兵や騎士団を王都へと集め、大々的な「閲兵式」を行うことを奏上した。


 表向きの名目は、魔王討伐後の平和によって緩んだ軍規を正し、王国の防衛体制を改めて誇示する、というもの。だが、その裏に隠された真の目的はまったく別のところにあった。


 王城内での人望を確実に固め、教会組織を鮮やかに解体し、さらには民衆の圧倒的な支持を背景にして国を掌握しつつある第一王女。

 彼女の存在こそが、自分たちの既得権益を脅かす最大の脅威だった。


 彼らは閲兵式に乗じて王都の主要拠点を制圧し、王女に「謀叛の意あり」との濡れ衣を着せて拘束、あるいはその場で誅殺しようと目論んだのである。


 傍から見れば、王族に対するあからさまな反逆であり、極めて過激で破滅的な愚行に映るかもしれない。しかし、彼らにとっては、それ以外に残された道がなかったのだ。

 王女の有能さと公正さ、そして不正を許さない容赦のなさは、すでに教会幹部の末路を見れば痛いほど分かっていた。


 清廉潔白で、領地の財を私物化せず、国のために動く者であれば、王女の改革を歓迎し、むしろ拍手喝采してその背中を支持している。現に、一般の民衆や志ある官僚たちは王女に全幅の信頼を寄せていた。

 だが、長年にわたって腐敗し、不正な利権に凝り固まった彼らは違う。


 このまま王女の手が自分たちに伸びれば、不正に溜め込んだ莫大な財産はすべて没収され、貴族としての身分を剥奪された上で身柄を拘束されることは確実だった。このままでは罪人として処刑台に送られ、死罪すらあり得る。


 そう、何もしなければ、破滅は確約していた。

 だからこそ、彼らは剣を取るしかなかったのだ。


 しかし、それはあまりにも皮肉で、そして救いのない道だった。もし彼らが私欲を捨て、自らの非を認めて更生し、正しい道に戻るという選択ができるのであれば、国を安定させたい王女としては、好んで血生臭い粛正の道など選ばなかったはずなのだから。


 改悛の選択肢すら頭に浮かばない愚劣さと強欲さが、彼らを破滅の断頭台へと自ら突き動かしていく。

 王都の空に不穏な軍靴の音が響き始める中、静かなる改革者の背後で、最後の血戦の足音が着々と近づいていた。

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