↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【レグニア王国物語】魔王を討伐したら終わりだと思った?今度は腐敗した貴族社会がお相手のようです。〜勇者パーティは政争の道具じゃありません!〜  作者: たけぞう
査問会議編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/40

幕間⑦ 男の友情

 世界を救う旅路のなかで、アレスとレオンハルトの間に生まれた絆は、言葉や打算を超えたところで結ばれていた。

 二人は似て非なる男だった。

 片や、圧倒的な聖剣の力を授かり、世界の命運と「勇者」という重すぎる看板を一身に背負わされた男。

 片や、理不尽な貴族の都合で押し付けられた「平民枠」から、ただひたすらに自分の腕と剣だけを頼りに生きてきた男。


 立場も違えば、背負っているものも違う。

だが、最前線で魔王軍の脅威を真っ向から迎え撃つ者同士、お互いにしか分かり合えない領域があった。


 ある日の夜、野営地の見張りを交代する時だった。

 焚き火の残り火がパチパチと音を立てる静寂の中、レオンハルトは一人、砥石を取り出して愛剣の刃を黙々と研いでいた。

 そこに、同じく夜風にあたりに来た勇者が静かに歩み寄り、隣に腰を下ろす。


「……また剣の手入れか?」

「あぁ。今日の魔族どもは少し硬かったからな」


 レオンハルトはぶっきらぼうに返し、小さく息を吐いた。

 しばしの沈黙のあと、勇者は前を見据えたまま、ぽつりと本音をこぼした。


「なあ……重圧を感じることはないか?」

「重圧?」

「あぁ。……俺たちが勝てば、世界が救われる。だが、俺たちがもし一歩でも踏み外し、敗北すれば、すべてが終わる。……時々、その事実がどうしようもなく重くのしかかって、押し潰されそうになることがあるんだ」


 世界中から期待され、同時に為政者たちからは警戒され、利用されるだけの存在。

誰もが「勇者だからできて当然だ」と口にする。

その孤独を、勇者は誰にも打ち明けたことがなかった。


 剣士は手を止め、じっと自分の剣を見つめた。それから、少し不器用そうに頭を掻きむしる。

「……俺は、そんな大層なことは考えてないさ」

「そうか?」

「あぁ。俺が考えてるのは、ただ一つだ。

……目の前で誰かが泣いていて、それを自分の剣で護れるなら、それでいい。

お前が背負ってる世界の命運とかは正直よく分からんが……」


 剣士は顔を上げ、嘘偽りのないまっすぐな瞳で勇者を見た。


「お前が横で敵を引き受けてくれるから、俺は安心して斬り込める。

……お前がいてくれて助かってる。アレス」


 それはお世辞でも何でもなく、剣士が心底から抱いている偽らざる信頼の言葉だった。


 打算も裏表もない、ただ純粋な武人同士のまっすぐな肯定。

 その言葉を聞いた瞬間、勇者の胸のつかえがスッと消えていくような気がした。


「……そうだな」


 アレスは微かに苦笑し、それから力強くうなずいた。


 「俺もだ。お前が隣にいてくれるから、どれだけ巨大な敵が相手でも、後ろを気にせず突っ込める」


 言葉数は少なく、照れくさそうに再び前を向き直る二人の男。

 しかし、その背中と言葉の端々には、数々の死線を共にくぐり抜けた者同士にしか分からない、絶対的な信頼と熱い友情がしっかりと宿っていた。


 ―この男と一緒なら、どんな絶望的な戦いでも戦い抜ける。たとえ、それが魔王であっても。


 二人の英雄が心の中で同じ決意を抱いた夜、彼らの絆は、何者にも引き裂けないほど強固なものになっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。