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完結:記録の終息・感謝の楠

――数日後。 報道各社は、ある不可解な事件の結末を静かに伝えていた。


「先週、岩国市にて発生した男性の死亡事故、  被害者は大学生の本郷鷹志氏(21)、現場のドライブレコーダーには  自ら飛び出したようにも見える映像が残されていたことから、  警察は“衝動的な自殺の可能性が高い”と判断――」


同時に、科捜研からの検出報告も世間を騒がせた。

•翠の遺体の爪に残っていた微細なDNAが本郷と一致。

•瀬戸内海で見つかった未解決の女性被害者の爪からも、本郷のDNA反応。

•さらに複数の未解決事件との関連を視野に、警察は「余罪多数の可能性あり」と発表。

静かな社会不安とともに、 “二重の顔をもった若者”の名がネットの片隅に刻まれた。


場面は変わって、大学の研究棟。 玲は湯川教授、芹沢、そしてゆず会長の前に立っていた。


玲(深く頭を下げながら) 「……ご心配をおかけしました。  本郷くんのこと、そして……お母さんの最後の記録のこと……ようやく話せます」


彼女は、淡々と語った。

•本郷こそ、母を殺した人物だったこと。

•49日間という“魂がこの世にとどまる猶予”。

•そして、母の記録が“装置を介さず、自分の中で再生された”という事実。


沈黙の中、教授はただ目を閉じ、芹沢は拳を握りしめていた。 そして、ゆず会長だけが小さく頷き、囁いた。


「やっぱり……あたしの感、当たってた」


玲は微笑んだ。 それは、母から受け取った想いを“この世界で観測し続ける者”の笑みだった。


翌日。


空は晴れていた。風はやさしかった。


玲は、ひとりで楠並木を歩いていた。


手には、白と薄紅の花束。 ふと立ち止まると、自然に足元が“あの木の根元”へと導いてくれる。


「……ありがとう。  最後まで、私のことを見てくれていたんだね」


花をそっと置く。 その手が泥に触れたとき、またあの温かさを感じた。


「ううん、“見てた”んじゃなくて、  一緒に、進んでくれたんだよね……」


玲はそのまま、空を見上げた。


そこには——もう記録もノイズもなく、 ただ“感謝”だけが、静かにたゆたっていた。


そして、ラストメモリーは彼女の中に“生きた記憶”として、根を下ろしたのだった。


おわり


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