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拡張するノイズ(数日後・大学への道)
断薬から数日。
副作用の離脱感は少しあったものの、 心はむしろ研ぎ澄まされ始めていた。
歩き慣れた大学への道。 そして——楠並木。
通りかかった瞬間、 「ギィィィ……ィィイイ……」
耳鳴りではない。 脳の奥、言葉の手前を“誰かの声”が掠めたような——そんな“密度”のあるノイズ。
玲は立ち止まった。 全身が、瞬間的に“記録されている側”に回ったような感覚。
「これ……薬では止められるものじゃ……ない」
彼女の中で、 “感じたくない現実”と、“感じなければならない真実”が入れ替わった。
この瞬間こそが、玲が「異常」から「記録」への視点を持ち直した第一歩—— “装置の一部だった感覚器”が、“観測者”としての意識を持ち始めた証。




