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診察室にて
若い精神科医が、優しい声で尋ねた。
「気分の波がありますか?」 「眠れない日が続いてますか?」 「“聞こえる”感覚について、もう少し教えてもらえますか?」
玲は、言葉を選びながら答えた。
音。風。気配。 それらが日によって形を変えて襲ってくること。
母が亡くなったのに、何かが残っている気がすること。
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医師は静かにメモを取り、最後に言った。
「……おそらく、うつ状態の初期段階かと思われます。 少し気分を持ち上げるお薬を出しますね。
無理せず、生活のリズムを整えるよう意識してみてください」
玲は処方箋を受け取り、頭を下げた。
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薬局の袋の中に、小さな白い錠剤が並んでいた。
“気分を上げる” その言葉が、今の自分に合っているのかどうか、よくわからなかった。




