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問診票と沈黙
受付を済ませると、グレーの紙束が差し出された。
「初診の方は、こちらをお書きください」 淡々とした声に、玲は小さく頷いた。
《精神科初診問診票》 A4用紙が3枚。静かな待合室。時計の秒針の音がやけに大きい。
ボールペンを握った手が、少しだけ震えていた。
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主訴 :「母が亡くなってから、“音”に敏感になりました。
誰もいないのに、何かが聞こえてくる気がします。
寝ても、夢と現実の境がわからなくなることがあります」
発症の経緯・時期: 「10日ほど前から。母の葬儀の後くらい」
生活リズム:
・睡眠:3〜4時間。途中で目が覚める
・食欲:あまりない。味がしないことも
・対人関係:うまく返事できない。人の声が遠い
思考・感情の状態 :
気分が落ち込む、音が気になる、集中できない
家族歴・既往歴 :
「母が亡くなったばかり。父とは疎遠です。これまで心療内科や精神科を受診したことはありません」
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「……まるで、誰か他人のこと書いてるみたい」
玲は静かにため息をつき、書類を受付に戻した。
しばらくして名前が呼ばれ、淡い緑色の診察室の奥へ。




