表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/33

静かな構内、変わらぬ校舎

久しぶりに大学の正門をくぐる。


石畳の上を歩く自分の足音が、妙に他人のもののように感じられた。


構内では、いつもの学生たちが行き交っていた。


笑い声。キーボードの音。ペットボトルを開ける音。 どれも玲には、少し遠いものだった。


ふと、目の前に芹沢が現れる。


「……玲? 来てたんだ!」


玲は、わずかに笑った。それは、「頑張って表情を作った」ということが明らかすぎる笑顔だった。


「……うん。少しだけね」


芹沢が表情を曇らせる。


「……大丈夫だった?湯川教授も、ずっと心配してたよ。研究室で時々“独り言のトーン”が暗くてさ……」

玲は小さく肩をすくめた。


「ありがと。……心配かけてごめん。もう少し元気になったら、顔を出すって……先生に伝えておいてくれる?」


「もちろん」


芹沢は気を利かせて、それ以上は深く踏み込まなかった。 気まずくも優しい間を残して、廊下の先に消えていった。


玲が振り返ると、ゆず会長が立っていた。


今日の彼女は、いつものように陽気でも元気でもなかった。


代わりに、その目はまっすぐに玲を見ていた。


「……玲」


一言だけ、そう言って—— ゆずは、そっと玲を抱きしめた。 驚きと戸惑いと、温かさと。


「……何か、私にできることがあったら、何でも言ってね」


「私は……いつでも、玲の味方だから」


玲の目の奥で、張りつめていた水面が、すこしだけ揺れた。


その震えは、涙にはならなかったけど—— 心のどこかに、確かに染みこんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ