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女神様!異世界転生の特典が特売のチラシなんですけど!?  作者: マトンさん


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7/25

第七話 『飢えた獅子』が全員お泊まり!リディア女子力向上計画は夜まで続きます!

 約束の週三日とは別に週末にはもう一つ約束があった。


 きっかけは、フィーナの一言だった。


「せっかくだから、パーティーの仲間で集まってご飯を食べながらぱーっと遊ぼうよ!!」

「いいな!みんなで集まって食事か!楽しそうじゃないか!」

 リディアが真っ先に賛同した。

「……それは、コータの家でやるってことか?」

 カイルが確認するように俺を見る。

「そうなるね。だって、コータの料理を食べるんだし!」

「なるほど。合理的ね。食事をしながら交流を深める機会としても興味深いわ」

 セレスティアまで納得したように頷いた。

「いや、ちょっと待ってください」

 俺は慌てて口を挟んだ。

「俺は仲間じゃなくて、料理番ですよ?」

「はいはい。じゃあ、料理番さんも一緒に楽しもうね!」

「そうだぞ、コータ!お前も主役だからな!」

「……話が通じていない」

 四人ともにこにこしていて、まるで聞く耳を持っていなかった。


 そんなやり取りを経て迎えた週末。

 というわけで、今日はホームパーティーである。

 しかも、お泊まり付きだ。

 俺の家は庭付きの一戸建て。俺の部屋のほかに客間が四つある。

 人数分の部屋は足りる。みんなを泊めるには十分だ。

 ただし、一つ問題があった。

「……客間にベッドがない」


 異世界の石造りの家にあるのは俺の寝床とソファのない居間。

 それに家電くらいだ。客間は四つもあるのに寝具がない。

 部屋だけ用意して満足していた自分が恨めしい。


 そんなとき、今朝の新聞に挟まっていた折り込みチラシが目に入った。


【ナトリ家具新生活応援セール】


 ━━━━━━━━━━━━━━

 セミダブルベッド24,900円

 三人掛けソファ29,900円

 ローテーブル4,990円

 ラグ3,990円

 カーテン2,990円

 収納ボックス1,490円

 ━━━━━━━━━━━━━━


「……これだ」

 俺は迷わず購入した。ベッドを四つ。ソファを二つ。ローテーブルにラグとカーテンも追加だ。

 ……待てよ。

 客間のベッドは買ったけど、俺のベッドはどうする?

 今まで使っていた寝床でも困ってはいない。だが、せっかく家具を揃えるなら自分用も新調していいんじゃないか?

 どうせチラシ価格で買えるんだ。ここは思い切ってしまおう。

 結局、俺は自分用のベッドも一つ購入した。

 ……まあ、毎日使うものだしな。決して無駄遣いじゃない。うん。


 専用冷蔵庫の扉を開けると、注文したばかりのベッドがぬっと顔を出した。

「いったいこの冷蔵庫、仕組みはどうなってるんだ……???」

 いや、今さら考えても仕方ない。便利なんだからいいじゃないか。

 四つの客間にベッドを運び込み、居間にはソファを設置。

 足元にラグを敷いて窓にはカーテンを取り付ける。


 気づけば、石造りの異世界の家がすっかり現代風の部屋に変わっていた。

 ソファに腰を下ろし、ローテーブルに足を伸ばす。

「……ちぐはぐなのに妙に落ち着くな」

 目の前には黒いテレビ。

 映るのは女神だけだが、今ではすっかり我が家の一員みたいになっている。

 まあ、いい。

 それよりも今日のご飯だ。


 パーティーといえば、やっぱりあれだろう。


【スーパー・マル得パーティー大特売!】

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 チルドピザマルゲリータ398円

 チルドピザ照り焼きチキン448円

 フライドポテト 1kg入り598円

 コーラ1.5L158円

 ポテトチップス大袋128円

 ナゲット大容量パック498円

 冷凍たこ焼き20個入り398円

 ミックスナッツ大袋398円

 チョコレート菓子ファミリーパック398円

 バニラアイス2L698円

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「……全部買おう」

 ピザは二十枚。コーラは十本。ポテトチップスは二十袋。

 さらにフライドポテトにナゲット。

 たこ焼きにミックスナッツ。

 甘いものとしてチョコレート菓子と大容量のバニラアイスまで購入した。


 これだけ揃えれば、立派なパーティー料理だ。

 値段を気にせず好きなだけ買える。これぞ特売チラシの醍醐味だ。

 まずはフライドポテトとナゲットを揚げる。

 こんがりと色づいたポテトを大皿に山盛りにし、ナゲットも隣に並べた。

 たこ焼きは電子レンジで温めて別の皿へ。

 チョコレート菓子とミックスナッツは、それぞれ小さな器に移しておく。

 最後に、ピザを温め直せるようオーブントースターの準備も済ませた。

 バニラアイスは冷凍庫で待機だ。


 購入した品々を居間のローテーブルに並べていく。

 ピザが中央に鎮座し、コーラのボトルが並ぶ。

 大皿にはフライドポテトとナゲット。

 たこ焼きやお菓子まで加わり、テーブルの上は食べ物で埋め尽くされていた。


「……壮観だな」

 ピザにポテトにナゲット。

 しょっぱいものを食べたら甘いものが欲しくなるし、コーラだって欠かせない。

 完璧な布陣だ。

 あとはみんなが来るのを待つだけ。

 これだけあれば、食いしん坊ぞろいの『飢えた獅子』でも文句はないだろう。


 そう思っていたところで玄関が声が聞こえた。

「お邪魔するぞ、コータ!」

 元気な声とともに四人が荷物を抱えてどやどやと入ってくる。

「おお……!いい匂いだな!」

「ソファがふかふか!なにこれ、気持ちいい!」

 フィーナは荷物を置くなりソファに飛び込んだ。

「これは新しい家具?前に来たときはなかったはずだけど」

 セレスティアがラグに目を落とし、次にソファへと視線を移した。

「ええ。せっかくみんなが泊まりに来るので、揃えておきました」

「……ずいぶん思い切ったわね」

「必要なものですから」

「ベッドも四つにソファが二つ。必要だからって、ここまで揃える?」

 フィーナがソファの背もたれに身を預けながら笑った。

「まあ、チラシで安く買えますから」

「その便利さ、改めて考えるとすごいな……」

 カイルが感心したように呟く。

「ふふっ。これなら、いつでも泊まりに来られるな!」

 リディアはすっかりくつろいでいる。

「……いや、泊まりに来るのが前提になってませんか?」

 俺の抗議は、四人の笑顔にあっさりと流された。


 そして、いよいよピザの登場である。

「ぴざ?」

「円盤みたいだな」

 リディアは興味津々といった様子でピザを見つめた。

 普段なら大剣を片手に豪快に笑う彼女だが、初めて見る料理を前にした今は、まるで新しいおもちゃを与えられた子供のようだ。

「いただきます!」

 元気よく宣言すると、リディアはピザを一切れ持ち上げた。

 その瞬間。

 とろけたチーズが、びろーんと伸びた。

「…………っ!?」

 リディアの青い瞳が、ぱちぱちと瞬いた。

「伸びましたね」

「伸びた!チーズが伸びたぞ!?」

 驚きのあまり声が裏返っている。

 彼女はピザと皿を交互に見つめたあと、伸びたチーズを切らないようにそっと持ち上げた。

 普段の豪快さが嘘のように慎重な手つきだ。

「すごい……!こんなに伸びるのか……!」

 感動に打ち震えるリディア。やがて彼女は、待ちきれないとばかりに大きく口を開けた。

「はむっ!」

 熱々のピザを頬張る。


 もぐもぐ。


 そして――。


「……うまい!!!」


 ぱあっと顔が輝いた。

 頬が緩み、目元まで幸せそうに細まる。

 口の端にはチーズが少しだけついていたが、本人はまったく気づいていない。

「うまいですよね」

「うまい!なんだこれは!生地が薄くてサクサクなのに、噛むと香ばしくて!その上にトマトの酸味とチーズの濃厚な旨味が合わさって……!」

 リディアは二口目を頬張りながら、勢いよく語り始めた。

「しかも、このとろけるチーズだ!生地の香ばしさを邪魔しないどころか、全部をまとめ上げている!トマトの酸味も絶妙だ!これは一つ一つの具材が互いを引き立て合うことで完成する料理……!」

「ピザですね」

「わかっている!今はピザの話をしているんだ!」

「いや、料理名を言っただけなんですが……」

 リディアは俺の言葉など聞こえていないらしい。

「それに、この形もいいな!切り分ければみんなで食べられるし、手軽なのに満足感もある!こんな料理を考えた人間は天才だな!」

 そう言って、彼女は幸せそうに次の一切れへ手を伸ばした。


 その顔は、強敵との戦いに勝利したときよりも輝いている気がする。

 ……いや。たぶん気のせいじゃない。

 普段は男勝りで、細かいことなど気にしないリディア。

 けれど、美味しいものを食べているときだけは、年相応の無邪気さが顔をのぞかせる。

 口元についたチーズを指で拭い、彼女は満面の笑みを浮かべた。


「コータ!これ、もう一枚食べてもいいか!?」

「もちろんです。まだありますから」

「本当か!?」

 リディアの顔が、ぱっと明るくなる。

「やった!」

 思わず拳を握って喜ぶ姿に、俺は小さく笑った。


 ……大剣を振り回しているときとのギャップがすごい。

 その隣では、フィーナもセレスティアもカイルも、すでに無言でピザを頬張っていた。

 どうやら三人もリディアの食レポを聞くより食べることを優先したらしい。


 続いてコーラを配る。

 黒い液体が透明なコップに注がれると、しゅわしゅわと細かな泡が立ち上った。

「この黒い水は?」

「コーラです。甘くてしゅわしゅわしてます」

「しゅわしゅわ……?」

 リディアは不思議そうにコップを持ち上げた。鼻を近づけて匂いを確かめてから、恐る恐る口をつける。

 ごくり。

「…………!」

 リディアの目が大きく見開かれた。

 数秒の沈黙。

 それから彼女は勢いよくコップをテーブルに置いた。

「口の中で爆発した!」

「爆発じゃないです。炭酸です」

「なんだと!?飲み物なのに爆発するのか!?」

「だから爆発してませんって!!」

 リディアはもう一度コップを手に取ると、今度は少しだけ口に含んだ。

 しゅわしゅわと弾ける刺激に目を丸くしながらも、口元には笑みが浮かんでいる。

「……なんだこれ。甘いのに、口の中がピリピリする。でも、嫌じゃない。むしろ……」

 もう一口。

「うまいな、これ!」

 気に入ったらしい。

 リディアは嬉しそうにコーラを飲み進めていく。


「炭酸……二酸化炭素を水に溶かしたものね。興味深いわ」

 セレスティアがコップを掲げ、光に透かしながら真剣な顔で泡を観察していた。

「記録用紙はあとにしてください」

 俺は思わず突っ込んだ。

「でも、この泡が発生する仕組みは記録しておく価値があるわ」

「その前に、まずは味わってほしい」

 せっかくのホームパーティーなのだ。研究発表会を開くために集まったわけじゃない。


 一方、ポテトチップスはフィーナが袋を抱えて離さなかった。

「止められない……!止まらない……!何これ、手が止まらないよ……!」

「フィーナさん。まだ袋が三つありますよ」

「わかってる!わかってるけど止まらないの!」

 カイルは静かにコーラを飲んでいる。

「……悪くない」

「カイルさん。さっきから三杯目ですよ」

「……悪くないんだ」

 その一言に、彼の満足度がすべて詰まっていた。


 居間がすっかりにぎやかになった頃、リディアがぽんと手を叩いた。

「そうだ!せっかくだからブレディア様もお招きしよう!」

「えっ……」

「パーティーは大勢のほうが楽しい!それにブレディア様にはいつもお世話になっている!」

「いや、世話をしているのはこっちなんですが……」

「頼む、コータ!!」

 リディアの目がきらきらと輝いている。

 この人、本当に女神を心から崇めているんだよな。

「……わかりました」

 俺はリモコンを手に取り、テレビの電源を入れた。

 ブゥゥゥン。

 すぐに画面が光る。

『遅い!!遅いですよ!!いつ呼ばれるかソワソワしてたんですからぁ!!』

「第一声がそれですか!?」

 画面いっぱいにブレディアの顔が映し出された。


『だってぇ!さっきから楽しそうな声が聞こえるしぃ!おいしそうな匂いもするしぃ!!なのに全然呼んでくれないんですもん!!あたしだって参加したいですぅ!!ぷんぷん!!』

 画面の向こうで頬を膨らませるブレディアに、俺は思わずため息をついた。どうやら、さっきからずっと様子をうかがっていたらしい。

「ブレディア様!お越しいただき光栄です!今日はみんなで食事を楽しむ宴です!どうかごゆっくりお楽しみください!」

 リディアが背筋をぴんと伸ばし、満面の笑みで女神に頭を下げた。その姿はいつになく礼儀正しい。

『パーティー!?オトクくん、私も参加していいんですか!?』

「コータです。……ご自由にどうぞ」

 俺はコーラを一本とピザを一枚皿に載せて画面の前に置いた。

 皿が淡い光に包まれ、すうっと消える。

『…………!!』

 画面の中のブレディアがピザを手に取った。

『これが……ピザ!まるい!チーズがとろとろで……!』

 湯気の立つピザをはふはふと頬張る。

『のびる!のびるぅぅぅ!!』

 チーズを両手でぐいーっと伸ばしながら、満面の笑みを浮かべている。

『おいしい……おいしい……!オトクくぅん、もう一枚!もう一枚くださぁい!!』

「はいはい」

 ピザを夢中で頬張っていたブレディアは、ふと隣に置かれたコーラに気づいた。

『ん?これも飲み物ですか?』

「コーラです。甘くてしゅわしゅわしてますよ」

『ほほう……!』

 ブレディアはコーラのボトルを持ち上げると、キャップを開けた。

 そして――。

『ごっ、ごっ、ごっ、ごっ……!』

「って、ラッパ飲みかよ!?」

 ブレディアは1.5Lのボトルを両手で抱え込み勢いよくコーラを飲んでいた。

『ぷはぁっ!なにこれ、おいしいぃぃぃ!!』

「いやいやいや!コップくらいあるでしょう!?なんでボトルから直接飲んでるんですか!」

『だって、こっちのほうが早いじゃないですか!』

「早さを競う飲み物じゃないんですよ!」

 ブレディアは俺のツッコミなど気にも留めず、再びボトルに口をつけた。

『ごくごくごく……!!うっ……げぇぇぇっふ……』

「飲み方も豪快ならゲップまで豪快なんですか!?女神なんだからもう少しお上品にしてください!」

『ぷはぁっ!!おかわりぃ!!!』


 ……駄目だ。この女神。

 駄女神(こいつ)に威厳を求めるほうが間違っている。


 こうして、俺たちのホームパーティーに女神が正式参加した。

 そして、二十枚あったピザはまたたく間に消えていった。


 宴もたけなわとなり、テーブルの上のピザもずいぶん少なくなってきた。

とはいえ、画面の向こうではブレディアが次々とお供え物を受け取り、いまだに食べる手を止めていない。

 俺が新しいピザを皿に載せてテレビの前に置くと、皿は淡い光に包まれて消えていった。

『はむっ!ん〜〜っ!やっぱりピザって最高ですねぇぇぇ!!!』

 ブレディアは幸せそうに頬張りながら、空いた手でコーラのボトルを抱え込んでいる。

 ……この女神、いったい何枚食べるつもりなんだ。


 そんな様子を眺めていたフィーナが、にやにやと笑いながら画面に向かって尋ねた。

「ところでブレディア様。女神様は恋愛とか興味ありますか?」

『恋愛?』

 ブレディアはピザをくわえたまま首をかしげた。

『もちろんありますよ!恋愛も恋バナも大好物です!誰が誰を好きだとか、どんなきっかけで恋に落ちただとか……そういうお話は大歓迎です!』

 そこでブレディアは、ピザを持つ手をぴたりと止めた。

『……でも!』

 きらん、と目が輝く。

『今はピザです!!』

「恋愛よりも食欲なんですね……」

 リディアが小さくつぶやいた。


 いや、そこは少しくらい食いついてもいいところじゃないだろうか。

『あっ、そうだ!オトクくん!!』

 ブレディアがふと顔を上げた。

『ピザって、宅配というのがあるんでしょう?家まで箱で持ってきてくれるやつ!』

「……よく知ってますね」

『神界の雑誌に載ってました!熱々のまま届くって!神界にも届かないですか!?』

「宅配ピザのチラシは、まだ入ってないんですよ」

『えー!!』

「チラシが配達されれば買えるはずなんですが、あるかどうかわかりませんよ?」

『じゃあ、配達されたらすぐに教えてくださいね!絶対ですよ!約束ですよ!』

「はいはい」


 そう答えて、ふと思い出した。

 今朝の折り込みチラシの束。その一番下に、何も印刷されていない真っ白なチラシが挟まっていたのだ。

 印刷ミスかと思って気にも留めなかったが、右下には小さな文字があった。

『準備中。近日、掲載予定』

「……まさかな」

 それが宅配ピザのチラシなのか。それとも別の何かなのか。

 このときの俺には、まだ知る由もなかった。


 パーティーは夜まで続いた。

 ピザにポテトにナゲット。

 コーラを飲みながらあれこれつまんでいるうちに時間はあっという間に過ぎていった。

 最初は料理に感動していたリディアもすっかり満腹になり、ソファの背もたれに体を預けている。

 フィーナはお菓子の袋を片手にまだ楽しそうだし、セレスティアは最後まで何かを記録していた。

 カイルはというと、三本目のコーラを飲み終えたあたりから口数が減っていた。


 そして夜も遅くなり、さすがに全員の動きが鈍くなってきた頃。

 フィーナがぱんぱんと手を叩いた。

「さて。そろそろ寝ようか。部屋はわかるよね?」

「はい。客間は各自一部屋ずつ使ってください」

「ありがとう! お言葉に甘えて!」

 フィーナは元気よく立ち上がったが、すぐにソファの上に置きっぱなしのお菓子の袋を見つけた。

「……あ。これ、明日の朝に食べてもいい?」

「もちろんです。残しておきますから」

「やった!朝ごはんのあとに食べようっと!」

 どうやら、まだ食べるつもりらしい。


 フィーナたちが客間へ向かったあと、俺も廊下を歩いてカイルの部屋をのぞいてみた。

 カイルはベッドの端に腰を下ろし、そっとマットレスを押していた。

「そんなに感動します?」

「いや。普段は宿の硬いベッドが多いからな。こういうのは久しぶりだ」

 カイルは一度立ち上がると、今度は遠慮がちにベッドへ倒れ込んだ。

「……これはいいな」

「気に入ってもらえたなら何よりです」

 どうやら、家具を揃えた甲斐はあったらしい。

 俺が廊下に出ると、カイルは満足そうにベッドに寝転がったまま手を振ってきた。

「おやすみ、コータ。今日はありがとうな」

「おやすみなさい。ゆっくり休んでください」

 そのまま俺はほかの客間も軽く確認して回った。

 ベッドはきちんと人数分あるし、寝具も問題ない。

 これなら全員ぐっすり眠れるだろう。

 ……そう思っていたのだが。


 廊下の向こうから、ひそひそとした声が聞こえてきた。

「じゃあ、女子会はじめようか」

 フィーナの声だ。

「じょ、女子会……?」

 リディアの声が、なぜか妙に上ずっている。

「リディア、緊張してる?」

「き、緊張なんてしていない!」

「記録、記録……」

 セレスティアまでいるらしい。

 どうやら三人は、それぞれの部屋で寝る前に一つの客間へ集まったようだ。

 扉の向こうからは、何やら楽しそうな気配が伝わってくる。

「それで?今日はどうだった?」

「ど、どうって……何がだ!?」

「もう。わかってるくせに」

「記録、記録……」

「セレスティア!何を記録しているんだ!?」

 ……何の話をしているのかは知らないが、リディアが何かを問い詰められているらしい。

 俺が首を突っ込んでもろくなことにならない。きっと。

 そもそも女子会というものに男の俺が参加する理由はない。


 聞かなかったことにして、そっと自分の部屋へ戻る。

 ベッドに潜り込むと、柔らかなマットレスが疲れた体を受け止めてくれた。

「……ああ、最高だ」

 自分用にも新しいベッドを買っておいて正解だった。

 目を閉じると、壁越しにときおり「きゃあ!」とか「ええっ!?」とか、楽しそうな声が聞こえてくる。

「……元気だな」

 俺は今日一日、パーティーの準備に料理にと動きっぱなしだった。

 みんなが楽しんでくれたのは嬉しいが、さすがに疲労は限界だ。

 女子会の内容が少し気にならないでもない。

 けれど、今はそれどころじゃない。

 ふかふかのベッドに身を沈めているうちに、まぶたがどんどん重くなっていく。

 壁の向こうから聞こえる笑い声を遠くに感じながら、俺はあっさりと眠りに落ちた。


 翌朝。

 目を覚ますと、やけに温かかった。

「……ん……?」

 布団の中に何かがある。

 いや、誰かがいる。

 恐る恐る横を見た。

 金色の髪が枕の上に広がっている。

 すう、すう、と規則正しい寝息。

「…………」

 俺の隣で、リディアがぐっすり眠っていた。

「…………え?」


 頭が真っ白になった。


 次回予告

 第八話 朝起きたらベッドに女剣士がいたので、とりあえず朝ごはんを作ります

「ち、違う!寝ぼけて部屋を間違えただけだ!」

「作戦、成功ね」

「記録、記録……」

 そして、朝刊の折り込みチラシの中に、ついにあの白紙のチラシが。

 ――宅配ピザ、ついに解禁。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

今回は、念願のホームパーティー回でした!

ピザにコーラにポテチと、異世界ではなかなか味わえないごちそうに大興奮のリディアたち。

そして、食欲全開で乱入してきたブレディア様!

……女神様、もう少し威厳というものをですね?


さて、パーティーも終わり、いよいよお泊まり会へ。

女性陣の女子会では、いったいどんな話が繰り広げられているのでしょうか?

そして次回、朝起きたコータを待ち受けていたのは――!?

第八話「朝起きたらベッドに女剣士がいたので、とりあえず朝ごはんを作ります」


よろしければブックマークや評価、感想などで応援していただけるとうれしいです!


※ブレディア様へのお供え物は任意です。

 ただし、ピザとコーラは大歓迎だそうです。

 なお、コーラはコップに注いで飲むよう、女神様に指導しておきます。

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