6話:変身
「ん……。」
「あ、マスター起きた?おはよう!」
暖かな日差しを感じゆっくりと目を開けると見慣れない天井が目に入り、声のした方に顔を向けるとレオンがベッドに腰掛けながらこちらに微笑んでいるのが見えた。
(そうだった。異世界に召喚されてそこでレオンたちに会えたんだった。)
一瞬、自分の状況が分からずフリーズしてしまったが次第に意識が覚醒していき色々と思い出すことができた。
「おはよう、レオン。ごめん、いつの間にか寝ちゃってたみたい。……レオンがベッドに運んでくれたのか?」
「疲れてたんだからしょうがないよ!あ、うん、一応。風邪ひいたらいけないと思って……。」
レオンが何故か恥ずかしそうにオロオロとしながら答える。不思議に思いながらどうしたのか尋ねようとすると隣から声が聞こえてきた。
「ふぁぁぁ〜。」
「あ、カイ。」
どうやらカイの横で眠っていたらしく、大きなあくびをしながらカイが腰に腕を回してきた。
「寝みぃ〜、もうちょっと寝ようぜマスター……。」
カイは男の人にしては線が細く綺麗な顔立ちをしているため黙って眠っていると女の人にも見えてちょっとドギマギしてしまう。
ースパーンッ
「痛って!」
「ちょっと!どさくさに紛れてマスターに抱きつくなよ!」
カイの流れるような柔らかな髪に触ってもいいかなと悩んでいるとその前にレオンが思いっきりカイの頭をシバいていた。とても小気味よい音がした。
「痛って〜。レオン、何もしばくことないだろ!お陰で目が覚めちまったじゃねぇか!」
「ふんっ、目が覚めたんなら良かったじゃないか!だいたい、カイはいつも寝すぎなんだよ!マスターよりも早く寝てマスターよりも遅く起きるなんて!」
「お前は姑かよ!寝みぃんだからしょうがねぇだろ!」
キャンキャンと2人が自分を挟んで喧嘩を始めてしまったのでとりあえず宥めることにする。この2人はゲームの時から何かとそりが合わずよく喧嘩や言い合いをしていた。
「まあまあ、2人とも落ち着いて!それよりも俺昨日から何も食べてなくてお腹すいたんだけどこのギルドってなんか食料とか置いてないのかな?」
ガルルルと睨み合う2人に距離を取らせ話題を転換する。でも正直本当にお腹がすいて何か口に入れたい欲求には駆られている。
「あー、ゲーム内のギルドだったらマスターが拡張してくれてたから酒場とかもあって食べ物も常備してたんだがなぁ。」
「うーん、あるかどうかは探してみないと俺にも分からないな。でも昨日ちらっと見た感じ倉庫とかも何も無かったからない気もするな……。」
確かに昨日見て回った時はどの部屋もがらんとしていて食料らしいものは何も置いていなかった。
「じゃあさ、昨日カイが魔物の素材とか魔石とかとっててくれただろ?あれを街で売ってできたお金で食料を買おうよ!」
1階の倉庫に昨日倒した魔物の素材や魔石を置いてある。いくらになるかはとんと検討もつかないがもし街で買い取って貰えたらそのお金で食料を買うことができる。
「そうだね、そしたら街に出てみようか。念の為王都から離れたところに出よう。」
「王都にはあのいけ好かない宰相やマスターのクラスメイトたちがいるからなあ。情けねえが今の俺たちじゃクラスメイトはともかくあの宰相には勝てねぇ。」
宰相は颯汰のことを生贄として魔王軍の元に送ったと思っている。それなのにその本人が普通に生きていたらどう出てくるか分からない。だからできるだけ見つからないようにするべきだ。
「マスターは顔も知られてるし格好を変えた方がいいよね。」
ということでにっこりとレオンが笑いかけてきたかと思うとあっという間にかけていた分厚いメガネを取り上げられ、目元がすっぽりと隠れるほど伸びた前髪を緩くサイドに流すようにセットされた。
服装も気づけば制服からカイの予備の服に着替えさせられており、いつも丸めている背筋を伸ばせばあっという間に誰もが振り返る美少年の完成だった。この過程を見ていなければ誰も彼が颯汰だと気づかないだろうくらいにはビフォーアフターの差が激しかった。
「これでよし!服装がカイのって言うところは気に入らないけどまあ似合ってるから100歩譲ってよしとしよう!」
「誰目線だよ。でもマスターいつものカッコより断然そっちの方がいいぜ?もう誰もマスターを傷つけるやつはいないんだしこれからはずっとそのカッコでいろよ。もし万が一マスターを傷つけるようなやつがいたとしても今は俺たちがいるんだから!」
諸事情があって今までは目立たないように外見も能力も隠し、背も丸めて過ごしてきたがカイの言うように信頼できる仲間がいる今はもう人の目を気にする必要も無い。
「そうだね、そうするよ。変装にもなるしね。」
颯汰が頷くとレオンとカイも満足そうに笑った。
「そういえば2人とも昨日の傷は大丈夫?」
「ん?おお?治ってる!マスターが手当してくれたのか!?」
カイが傷を負っていた部分を確認するが綺麗に跡形もなく治っているようだった。
「そうだよ。カイが寝ている間にマスターが治療してくれたんだ。お陰でこの通り!きれいになおったよ!ありがとう、マスター。」
本当に消毒をして包帯を巻くだけの簡単な手当てだったのだが2人の体を見ても傷一つ無くなっているようだった。ゲームでは普通だったが実際に見てみると不思議な感じだ。
2人が問題なく動けることが確認できたため、準備ができた颯汰たちはすぐに街に食料調達に繰り出していった。




