37話:手がかり
「確かこの場所に入ったくらいからだんだんと意識が朦朧としてきて……そっからは覚えてねぇなあ。特に何か見た訳でもねぇと思うんだが。」
「てことはやっぱりにおいなのかな?というかじゃあまだ近くに魔物がいるかも!」
そう思い、カイから離れて魔物を探そうとするが、慌てたようなカイに腕を掴まれてそのままバランスを崩し、カイの膝の上に尻もちをついてしまった。
「いてて、何、どうしたの。」
「す、すまん。でもダメだ、マスターが離れると頭がクラクラすんだよ。」
嘘をついているだけではなく本当に気分が悪そうだ。
「レオンは大丈夫なの?」
隣にしゃがんでいるレオンに確認するが、何ともなさそうだ。もちろん俺も何ともない。
「んー、じゃあとりあえず窪みだけ触ってからみんなのところに戻ろっか。このまま戦うのは危なそうだし。」
カイの記憶を頼りに目当ての窪みを見つけ、触れてみると奥の壁がなにかの仕掛けになっているようでさらに奥に押し込むことができた。
「……何も起こらないね。」
少し触れただけでガコンッと押し込んでしまったので用心したが、結局何も起こらず肩透かしを食らった。
「やっぱり仕掛けを全部押さないと発動しないようなものなのかもね。ひとまずここでやることはもうないし戻ろう。」
レオンの言葉で来た道を戻っていく。念の為カイとは手を繋いだままだ。
「ん?これは……」
カイが意識が朦朧とし始めたと言っていた場所ら辺に行くと、そこの地面にはあの冒険者たちが無くなっていた場所にもあった緑色の液体が付着していた。
「この前見たのと多分同じだよね。やっぱりこれがおかしくなる原因?カイもしかしてなにか踏んだ?」
カイに尋ねると足を上げて靴裏を確認していたが、
「あっ、」
左足の踵部分に同じく緑色の液体が少しだけ付着していた。ただ、歩いた分ほとんど取れたようだ。
「えー、でも、何か踏んだような感じはしなかったけどなぁ。」
俺と手を繋いでいるのとは反対の手で気まずそうにポリポリと首の後ろをかくカイ。
「念の為、この付着物、採取して持って帰ろっか。ギルド長に見てもらおう。」
レオンが言うように調査の重要な手がかりとなるのは間違いない。前回情報を共有した時にギルド長からも今後なにか手がかりになりそうなものがあれば持ち帰って欲しいと頼まれていたので、渡されているガラス管に採取した付着物を入れて腰につけたポーチにしまう。
今回のことで足元に得体のしれない何かがいるかもしれないということが分かったので、地面にも注意しながらダンジョンの最奥、みんなのところに戻る。
「あれ?他のみんなはまだ戻ってないの?」
カイと手を繋いでいると何故かレオンが不機嫌になったのでレオンとも手を繋ぎながら戻ると、そこに居たのはロード、ソル、ナナの3人だけ。
「まだ誰も戻ってきてないよ〜。暇すぎて死んじゃいそうだよマスタぁ〜。」
ナナがドーンッと抱きついてくるが俺の両手はカイとレオンで塞がっているので体幹だけで何とか受け止める。
「それよりどうしたんだ、3人で手なんか繋いで……。いや、別にやめろとは言ってないから睨んでくるなよ……。」
やっぱりロードに突っ込まれたのでさっきの場所であったことを話す。
「ふーん、それが言ってた付着物?なんか気持ち悪いね。じゃあさ、もしかしたら他のみんなも同じような状況に陥ってる可能性はないかな?いちばん距離が遠かったマスターたちが戻ってきてるのに他の人たちが戻ってないのはおかしいよね?」
ソルが言うように違和感を覚えた俺たちは危なくなった場合はスフィーダに戻るように全員に確認していたため、1度スフィーダに戻ることにした。
そしてスフィーダに戻った途端、少し離れたところに仲間達がいるのが見えた。
「みんな!戻ってたんだね。」
そこには残りの6人全て揃っており、近くに駆け寄るとそれぞれが難しい顔をしていた。
「ここに戻ってるってことは何かあったの?」
俺の言葉に顔を見合わせる6人。
「それが、窪みがあるところまでは行ったんだけどそこから記憶があやふやで……」
どうやら他のグループも何人かがカイと同じような状態になり、意識がはっきりとしていたメンバーが全員をスフィーダに連れてきたらしい。
「やっぱり原因はあれかな?」
「マスター、あれって?」
改めてさっきのガラス管を全員に見せる。
「こっちもカイが同じような状況になったんだけど、その時にこれを見つけたんだ。あの冒険者たちが亡くなったところにあったのと同じ緑色の液体だよ。」
「ではやはりそれが原因なのでしょうか。」
「でもだとしたら洗脳?にかかる人とかからない人の違いって何?」




