33話:虫
「もう今日は遅いし少しだけ討伐したらスフィーダに戻って休もう。」
再びダンジョンに着く頃には日も沈みかけており、今日は朝からほぼずっとダンジョンで過ごしていたため少し疲労を感じてきていた。
とはいえ、一度了承したことを適当に済ます気はない。
「今回は4人ずつの2グループに分かれてまだ行ったことない道を進んでみよう。他の道にも魔物は発生するだろうから成長型ダンジョンだった時のことを考えて満遍なく討伐していかないとね。」
この提案に異論は無いようだったがグループ分けの時に何故かみんな俺と同じグループがいいと主張しひと悶着あったが、公正にジャンケンで決めた結果、このようなグループ分けになった。
「じゃあ遅くても2時間後にはスフィーダに集合ね!マスクは念の為ずっとつけておくことと、もし少しでも危険だと判断したら2時間後を待たずにスフィーダに帰還すること!そっちはレオン!リーダー頼んだからね!」
「...分かったよ、マスター。」
「くそっ、なぜ俺はあの時パーを出さなかったんだ...!こうなりゃこの鬱憤は魔物にぶつけるしかねぇ!」
「ルナ、主君を頼んだぞ。」
「マスターもあまりむりはしないでねぇ〜。もし怪我でもしたらお姉さん心配で寝込みを襲っちゃうかもしれないからぁ〜。」
「アイリーン、なんか脈絡おかしくない!?とにかく、俺もケガしないように気をつけるからそっちも気を付けてね!じゃあまた後で!」
渋々と俺たちとは違う道に進んでいく4人に手を振り、姿が見えなくなったところで残った俺たちも左端の細い道へ歩みを進める。
こちらの道は大剣を振り回すには少し狭いため、剣を主な武器として扱わないメンバーが揃った俺たちのグループが進むことになった。
ナナとルナは主に魔法、シアンは短剣を扱うため細い道でもそれほど制限はかからない。俺は剣を扱うと言っても使いだしたのはこちらに来てからで主な武器と言えるほど扱いに長けている訳では無いのでシアンに短剣を借りてそちらを扱うことにする。
「先頭は私が行きます。1番後ろはナナ、真ん中にマスターとルナという順で行きましょうか。」
偵察に長けたシアンが一番前に行き、気配に敏感なルナとナナが俺を挟むという布陣だ。なにか俺がお姫様ポジションに付いていることが釈然としないが能力的にも経験値的にも一番足手まといとなるのは俺なので文句は言えない。
「前方から何か来ます。注意してください。」
シアンの忠告に合わせて警戒態勢を取る。すると直ぐにカサカサという音が聞こえてきたかと思うと前から大量の蜘蛛型の魔物がやってきた。
「蜘蛛ですか。これはどのくらいの金貨になりますかね。」
「とりあえず向かってくるものは全部やっちゃおー!」
「魔法で援護します。」
3人が冷静に蜘蛛型魔物と戦っている間、俺はというと...
(無理無理無理無理無理!足多っ!見た目キモッ!音からして無理なんだけど!!!)
必死に魔物を視界に入れないようにしていた。
俺は昔から虫だけは本当に苦手で視界に入るだけでも耐えられないほどだった。
「マスター?どうしたのー?」
俺が道の隅っこで耳を抑えて小さく蹲っているとそれを見たナナが蜘蛛の足を切り落としながら声を掛けてきた。
だが俺は言葉を返す余裕はなく、蜘蛛から距離を取るので精一杯だった。
「もしかしてご主人様、蜘蛛が苦手なのですか...?」
ルナの問いかけに顔を青くしながら頷く。
するとそれを見た3人が互いを見合わせ、より一掃攻撃速度をあげた。
「それならば一刻も早くこれらを排除いたしましょう。」
「マスターの為にナナ頑張るのー!」
「ご主人様、待っていてください。すぐ終わらせますから!」
そういうや否やあっという間に蜘蛛型魔物を倒しきり、解体もサッと済ませ蜘蛛のいた痕跡を消し去ってしまった3人。ナナがもう大丈夫だと言う風に俺の手を引いて立ち上がらせてくれる。本当に情けないマスターですまない。でも本当に虫だけはダメなんだ...。
そして気を取り直してまた探索を続けるも出てくるのはさっきと同じ蜘蛛型魔物や蟻、ムカデ、ゴキ〇リといった虫の魔物ばかり。
(なんでこんな虫ばっかり出てくるんだ!!!)
虫が出てくる度に半泣きになりながらも3人に任せっぱなしじゃ悪いと思い戦闘に参加する。
「ギャァァァァ!!!!」
カサカサという不快な音をさせながら近寄ってくる巨大な虫たちに絹を引き裂くような悲鳴をあげながら短剣を振り回す。
テクニックも何もあったもんじゃないが、細い道なので適当に振り回しても剣は当たるため無我夢中で切りつける。ただ、虫には指先たりとも触れたくはないので虫の攻撃は全力で避ける。
「ぜぇ、はぁ、お、終わった...??」
「ええ、マスター。お疲れ様です。大丈夫ですか?」
「よしよしマスター、頑張ったね!」
「ご主人様、もうそろそろ2時間たちますしもう今日は帰りましょう。」
見た目小学生のナナに頭を撫でられる俺。色々と泣けてくる...。
体力よりも精神的に疲弊した俺はルナの言うようにここで切り上げることにした。
「今日は迷惑かけてごめんな。3人ともいっぱい助けてくれてありがとう。俺のせいで思ったよりも進めなかったけど今日はこれで帰ろう。帰ったら何か異常がなかったかあっちの4人にも聞かないとな。」
最後に戦った魔物の素材も一応集めて帰ることにしたが、3人がどうか休んでいて欲しいと言うので限界に近かった俺は言葉に甘えて休ませてもらうことにする。
近くの岩場に腰を下ろして一息ついていると視界の端に気になるものが映りこんだ。
「なんだ、これ?」




