3話:邂逅
「結局、どこに行っても同じか。」
飛ばされた先は鬱蒼と木々が生い茂る森の中。まだ昼間だと言うのに薄暗く、どこか空気が澱んでいる気がする。
(あの宰相が生贄と言っていたしここは魔王軍の領地なのかな。てっきり魔王の目の前にでも転移させられるのかと思ったけどそうじゃないのか。)
辺りを見回しても今のところ魔物が現れる気配はない。かと言って目視できる範囲には木々しかなく、どの方向に進めばいいのかも分からない。
ひとまず目の前にあった大木に背を預けて座り、もう一度ステータスを確認することにした。
「ステータス」
先程と同様にステータスと唱えることで青みがかった透明な板が映し出されそこに自分自身の情報が記載されていた。
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【名前】柳颯汰
【職業】マスター
【レベル】1
【能力値】
HP10/10
MP10/10
SP10/10
筋力:1
攻撃力:1
防御力:1
敏捷:1
【スキル】ガチャ
【アイテム】金貨100枚
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「やっぱりさっきと同じか……。」
映し出されたのはオール1のステータス。さっきと変わったところと言えば画面に【アイテム】という欄が追加されたことだけ。
(ガチャってなんだよ……。マジモンのゲーマーみたいじゃん。それに能力値も最低値だし、なんで俺だけこんなハズレくじを引かないといけないんだ……。)
今手元にあるのは制服のポケットに入っているスマホと宰相から渡された金貨100枚。
(金貨があったってそれを使うところがなければ意味ないじゃないか。どうせなら武器とか食料をくれよ……!)
自分のこの理不尽な状況に段々と腹が立ってきて思わずもたれていた木を殴ろうとした瞬間、遠くの方から不気味な声が聞こえてきた。
俯いていた顔をバっと上げ、声の聞こえた方を凝視するがまだ近くには何もいない。
頭に上っていた血が一気に下がり、心臓がうるさいくらいに拍動しているのを感じる。
(どうしよう、どうしたらいい?さっきのは魔物の声?このままだといずれ魔物に見つかってしまう。武器になるようなものは何もないし見つかったら終わりだ。嫌だ。死にたくない。誰か、誰でもいいから助けて……!)
あまりの恐怖に半分パニックになり、その場から動くこともできず膝を抱えて縮こまる。ギュッと目をつぶりガタガタと体を震わせているとまた別の声が聞こえてきた。
『……ター!……マスター!』
「だれ?誰かいるのか?」
姿は見えないがどこか聞き覚えのある声が何度も何度も呼びかけてきている。
『マスター!俺だよ!名前を呼んで!俺を思い出して!』
今度ははっきりと声が聞こえた。そのおかげで誰の声かやっとわかった。高校に入ってから毎日聞いていた声、心の支えとなっていたものの声だった。
「え、嘘だろ……。もしかしてレオンなのか?」
『そうだよ!マスター!やっと呼んでくれた!』
名前を呼んだ瞬間、ポケットに入れていたスマホが突然光りだし、あまりの眩さに閉じていた目を開けるとそこにはずっと画面越しにしか話したことのなかったレオンが立っていた。
「マスター!会えて嬉しいよ!俺の事分かる?マスターの初めてのギルドメンバーのレオンだよ!」
そう、レオンとは高校生になってからずっとプレイしていたゲーム、スフィーダに出てくるキャラクターであり、一番最初の仲間として自分自身で選んだ思い入れのある人物なのだ。
「ああ、可哀想に。この森の瘴気のせいで精神が不安定になってるんだね。"光よ。主を救たまえ" よし、これでもう大丈夫だよ!」
レオンが俺の頭に手をかざし、呪文を唱えた瞬間、重かった空気とともに不安な気持ちや妙ないらだちなどが全て立ち消え、すっと気が軽くなった。
「俺が来たからにはもうマスターを傷つけさせないから安心してね!さっきからずっと呼んでたのにマスター全然気づいてくれないから!もう少し早く呼んでくれてたらあのいけ好かない宰相やマスターと同じ服きた奴らを皆殺しにできたのに!」
身長180越えの端正な顔立ちをした男が頬を膨らませてプンプンしながら物騒なことを言ってる。
(見た目かっこよくて仕草が可愛くて言ってることが野蛮って……)
「……ふはっ!」
「あー!何マスター笑ってんのさ!俺はあいつらに腹立ててるって言うのにー!」
あまりのチグハグさとまさかの現実でレオンに会えた嬉しさ、それに傍に信頼できる人がいるという安心感に思わず笑ってしまった。
「ごめんごめん。まさか本当に会えると思ってなかったから嬉しくて。俺もずっと会いたかったよ、レオン。来てくれて、本当にありがとう。」
(そうか、もしかして職業のマスターってスフィーダの……。ということはあのスキルは……)
「マスタ〜!」
感激という風にレオンが筋肉質な体で抱きついてくる。その頭をよしよしと撫でているとまたなにかのおぞましい声が聞こえた。さっきよりもだいぶ近くなっている。
「チッ、誰だよマスターとの記念すべき邂逅を邪魔するやつは。マスター、危ないから下がっててね。」
レオンはそういうと俺から離れて腰に差していた剣を引き抜き声が聞こえた方に向かって構えた。
「さあ、出てこいよ。どんなやつだろうとマスターには指1本触れさせない!」




