27話:ヴァンとルナ
「これってもしかして進化っていうやつかしら...?」
アイリーンがぽつりと零したように、突然2人の身体が輝き出したかと思うとみるみるうちにかたちを変え、さっきまでオオカミ型の身体をしていたのに今では2人とも人間の格好になっている。
ヴァンは背中くらいまで伸びた長い銀髪にオオカミの耳としっぽを生やし、角は小さくなって宝石のように額にはめ込まれている。
ルナの方も同じく腰まで伸びた長い銀髪に額の宝石までは一緒だが、ルナの方は月の妖精の血の方が濃いからかオオカミの耳としっぽは生えていない。
2人とも驚いたように自分の体を見つめている。
「まさか、話に聞いていた進化を自分が体験できるとは...。」
「こういうことは結構あるのか?」
「いえ、今までも名を授けられた者たちはたくさんいましたが実際に進化できたのは片手で数える程度です。」
レオンの質問にヴァンが答えるがヴァン自身もまだ戸惑っているのか自分の喉を触って声を確かめたり手を閉じたり開いたりして動きを確かめたりしている。
「元の姿には戻れるの?」
「できると思います。」
俺の質問には今度はルナが答えてくれ、瞬く間に先程の姿に戻った。
《恐らくですけど、姿形は好きに変えられそうです。巨大化や逆に縮小化とかもできそうな感じがします。》
今まではオオカミの姿から形を変えることはできなかったそうだが、進化した今では人間とオオカミの姿を自由自在に行き来することができ、オオカミの姿の時は大きさも3段階で変化できるようだ。
「でもちょうど良かったですね。オオカミの姿のままだと他の冒険者に攻撃される恐れもありましたし何よりこのダンジョンから連れ出すこと自体が難しかったでしょうから。」
シアンの言うようにこの世界では魔物は基本的に退治の対象とされているため、オオカミの姿のままだったら2人をダンジョン外で連れ歩くにはだいぶ厳しいものがあっただろう。
「はからずも問題を解決したってわけか。やるじゃねぇか、さすがマスターだなぁ!」
カイにバシバシと肩を叩かれながら改めて2人と向き合う。
「じゃあ改めて2人ともこれからよろしくね。」
「「はい、主君(ご主人様)!」」
思いがけず新しい仲間に出会った俺たちだが当初の目的のダンジョン探索を思い出し、再開する。
「そういえば2人はこのダンジョンの内部に詳しかったりするの?」
「いえ、実は私達もつい最近ここに閉じ込められたばかりですので地図などはあまり分からないのです。申し訳ありません。」
「謝らないで!そうだよな、2人とも魔王にここに放り込まれたって言ってたもんな。」
「でも道が分からない方が冒険って感じがしてワクワクするよー!」
「おっ、ナナ、いいこと言うじゃねぇか!」
「でしょー?」
ワイワイと会話を繰り広げながら細道をぬけ元の場所に戻った。
「分かれ道に戻ってきたけど、マスターどこに進む?」
左はギリギリ横に3人並べるかといったくらいの道幅で真ん中は左の倍くらいの幅はあるが少し上が低くなっている。そして右はレオンが大剣を振り回しても十分なくらいの道幅と高さを兼ね備えているが他の道よりも足元がだいぶでこぼことしており足を取られそうだ。
「うーん、真ん中、かなぁ...。」
「そうね、私も真ん中がいいと思うわ。」
アイリーンに続き、他のみんなの同意も得れたので真ん中の道を進んでいく。
「...前方から魔物の気配がします。注意してください。」
気配察知が得意なシアンの言葉で緩んでいた空気が一気に引き締まる。
「やっとかよ、待ちくたびれたぜ!どんなやつが現れてくれるんだあ?」
「足音からして複数体、かなりのスピードでこちらに向かってきているようです。」
ヴァンがオオカミの耳をピクピクさせながら詳細な情報を教えてくれる。
「ここは私たちに任せてくださいませんか?私たちも戦えるということをご主人様に見ていただきたいのです。」
人型に戻ったルナがこちらを振り向きながらにこっと笑って言うのでその言葉に甘えて任せてみることにする。
「わかった。お願い。」
「ありがとうございます。」
ルナがお礼をいい終わったところで魔物の姿が見えてきた。
「フム、ブラックシープか。まさに俺たちの獲物にはうってつけだな。」
「そうね、この姿での戦闘を試すにはちょうどいい相手だわ。」
こちらに向かって走ってきているのは全身黒い毛で覆われた羊型の魔物。黒い毛は一見ふわふわに見えるが実は鋼鉄と同等の硬さを持ち合わせており物理攻撃が効きにくいことで有名だ。また頭には2本の鋭利な角を生やしておりそれを獲物に突き刺して殺すことはもちろん、電撃を飛ばして攻撃することもできるそうだ。
「ルナ、いつも通り前は俺、後ろは君だ。...いくぞ。」
「ええ、援護は任せて。」
そういうとヴァンはとてつもない機動力でブラックシープたちからの電撃を避けつつ距離を詰めていく。
ブラックシープには物理がほぼ効かないしそもそもヴァンは武器となるものを何も持っていないのでどうするのかと思っていると、
グチュッ!!
ブチィッ!!
すれ違いざまにブラックシープの首を掴んで腕力だけで思いっきり引きちぎったり、唯一毛が生えていない目に指を突っ込んで脳を破壊して殺したりと中々にグロい方法で次々と討伐していった。
パシュッ!
ルナの方は月の妖精特有の魔法だろうか、何も無いところからまるでお月様のような淡い光を放つ弓と矢を出現させ、それをブラックシープたちに向かって手を休めることなく放っている。不思議なことにその矢はブラックシープに当たるとそこには初めから何も無かったかのように矢は立ち消え姿を消すのだが、それが当たった魔物たちは何をされたか分からないという顔のまま絶命しその場に倒れ込んでいっている。ヴァンとは反対になんとも静かな殺戮だった。
討伐を開始して5分ほどで全てのブラックシープ(恐らく30体ほどはいただろう)を倒し終え戻ってきた2人。
「どうでしたか、ご主人様。私たちもご主人様のお役に立てたでしょうか。」
「久々の戦闘だったのでついはしゃぎすぎてしまいました。お見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ありせん。」
「お姉ちゃん凄かったのー!キラキラしててすごく綺麗だったー!」
「あの魔法はなんて言うのかしら?今度時間がある時にぜひ教えて欲しいわ!」
「お前めっちゃ楽しそうに戦うじゃん!気に入った!今度俺と手合わせしてくれよ!」
「機動力と腕力すごいね!俺ともぜひ戦って欲しい!」
「返り血がすごいな。良かったらこれ使え。」
仲間たちも2人の戦いにいたく感動したらしくワイワイキャッキャとはしゃいでいる。
「ほんと二人とも凄かった!思ってた以上だったよ。もしかして2人ともレベルとかステータスめちゃくちゃ高いんじゃない?」
実は2人のが仲間になってからすこぶる体の調子が言いどころか力が有り余ってる感じがしており気を抜くとちょっと手を振り払っただけでもすごい衝撃を与えてしまいそうなのだ。(実はレオンを引き剥がす時もおおかたレオンの肩を握りつぶしてしまうところだった。)
「レベルですか?最近はあまり気にしてなかったので分からないですね。...見てみますか?」
ステータスを見せてくれると言うのでみんなでヴァンとルナの近くに寄る。
「ステータス。」
ヴァンが唱えるとステータス画面が表示され、全員が驚愕の声を上げた。




