18話:ストレージ
街に行く前に薬草の種子を回収し畑に植える。今回は大体150本くらいできそうだ。また明日の朝には収穫できるだろう。
そして街へ行って最初に向かうのはギルドの換金所。今回は手に持ちきれない量の魔物を狩った為往復も視野に入れていたがそこは手に入れたスキルが解決してくれた。
「ストレージ」
言葉を唱えると何も無い空中からドサドサととめどなく魔物の素材が落ちてきてギルド内がざわついた。
「に、兄ちゃん収納魔法が使えたのか!?」
新たに獲得したスキル『倉庫』は、スフィーダ内の倉庫から好きに物を出し入れできるスキルでまあ換金所のおっちゃんが言うように収納魔法と同じようなものだろう。
おっちゃんの話だとこの世界で収納魔法を使えるのは大魔道士くらい(城の宰相とか)だそうでめちゃくちゃレアな魔法のようだ。そのためおっちゃんや周りの見ていた人達には大魔道士だと勘違いされたが訂正もめんどくさいので話を濁しておく。
「それより今回はいくらくらいで買い取って貰えますか?」
「あ、ああ、そうだな。毎回毎回あんたたちには量も品質も驚かされてばかりだが、今回も目立った傷や傷みはなく値下げに繋がるようなポイントは一つもない。だから高値で買い取らせてもらうよ。そうだな、ざっとこんなもんでどうだ?」
おっちゃんから各素材の査定額を書かれた紙を渡され3人で見たが、思ったよりも十分すぎる金額が提示されており文句が出るはずもない。
「これで十分です。ありがとうございます!」
今回の売上は全部でなんと約18ゴールド。ゴブリンは思った通りそれほどお金にはならなかったが代わりにホーンラビットが高値で売れた。ホーンラビットは角も毛皮も結構な需要があるようだがすばしっこいことからなかなか捕まらずあの角のせいでよく重傷者や悪ければ死者が出るため好き好んで取りに行く人はあまりいないそうだ。そんなホーンラビットに今日はよく出くわし、素材も充分とってこれた為、高値がついたというわけだ。
「今日は何食べようか!」
「「昨日の店に行こう(ぜ)!」」
俺もそうだが2人ともよっぽど昨日の店が気に入ったらしく満場一致でそこに行くことになった。
「いらっしゃいませ!あ、今日も来てくれたんですか!?」
店に入ると昨日の女の子が声をかけてくれて嬉しそうに駆け寄ってきてくれた。
「昨日食べた味が忘れられなくて!今日はまた別のものを食べてみたいんですけど他におすすめはありますか?」
「それでしたら...」
そうして店員さんが持ってきてくれたのはビーフシチューだった。一口食べた瞬間に濃厚なデミグラスが口いっぱいに広がり、大ぶりに切られたスジ肉がとろとろになるまで煮込まれており噛むほどにお肉の旨みがじゅわっと溢れ出す。野菜にもソースの旨みがしっかり染み込んでいて、甘さが引き立っており、濃厚なデミグラスと互いに引き立てあっている。
気づけば目の前に置かれた皿の中はきれいさっぱりと無くなっていた。
「やべえ、これ何杯でもいけるぜ...!」
「マスター、もう1杯頼んでもいい...?」
がっついて食べていたせいで口の周りについていたデミグラスをペロッと舐めながら言うカイに、こちらもあっという間にひと皿を平らげおかわりを要求してくるレオン。
「もちろん!すみませーん!おかわりくださーい!」
そうして腹がはち切れるほど食べ、あまりにも沢山注文したので店主の厚意で端数を値引きしてもらい、3人で合わせて4ゴールド分を平らげスフィーダに戻ってきた。
「ふぅー、食った食った!」
「食べすぎてしまった...。太らないか心配だ。」
スフィーダ内の部屋に戻るなりカイはゴロンとベッドに仰向けになり、満足気に腹をさすっている。レオンも言葉ではああ言っているが椅子に深く持たれて座り満たされた顔をしている。
「じゃあまた寝る前に腹ごなしを兼ねて少し狩りに行こうよ!」
「それはいいけどよ。夜はまた昼とは全然違うぜ?大丈夫かぁ?」
「まあ何事も経験か。いざと言う時は俺たちが守ればいいし!」
カイとレオンからゴーサインを貰ったので3人でまた森に移動する。
「うわぁ、思ったより真っ暗だ。何も見えない...。」
「だろ?月の光も木々に遮られてほとんど届かねぇ。だから目じゃなくて音と感覚で敵の気配を探るんだよ。」
カイがしゃべり終えると同時に顔のすぐ右側からヒュッと風を切る音が聞こえ、ついで頬にピッと何か液体がつく感触がした。
「ほらなこんな風に。」
そしてカイがいつの間にか左手に持っていた物体をこちらに掲げてきたので目をこらしてみるとホーンラビットの生首だった。
「うわっ!」
「今マスターの後ろからそいつが狙ってきてたんだよ。気づいてなかったでしょ?ちなみに今も8体ほどに囲まれてるかな。」
「目だけで探ってると痛い目見るからな。まぁまずは俺たちが戦うからマスターは見といてくれや。」
もう少しで攻撃されそうだったことも、今周りを魔物に囲まれていることも全く気づけなかったし、囲まれていると知った今でもどこに魔物がいるのかさっぱり分からない。
(うーん、これはちょっと俺には早すぎたかも...。)




