15話:戦闘狂
(やべっ、このままだと爪が当たる!)
爪がこの身を切り裂くまであと5cm。だが幸いにも躓いて倒れそうになっていることで逆にこれが回避にも繋がっている。
それならばと無理に上体を立て直すことはせずに、むしろ重力に身を任せて後ろに倒れ込む。
すんでのところでワーウルフの攻撃を回避し、剣を持っている手とは反対の手を地面につき、上体スレスレのところを飛び越えて言っているワーウルフに腕を支点にしてそのまま蹴りを喰らわす。
「キャイン!」
「おー、見た目によらず可愛い鳴き声してるじゃん。じゃあちょっくら毛皮をいただいても?」
横に転がったワーウルフはすぐに起き上がり唸り声を発しながら再び向かってくる。今度は足元を確認した上で1歩前へ踏み出し、レオンがさっきやっていたように喉元に剣を走らせる。
ただ、レベルが上がったとはいえステータスはレオンほど高くは無いためまだ一刀両断はできない。だから剣を上からではなく下から振り上げて柔らかい喉の肉を切り裂く。
喉を大きく斬られたワーウルフは大量の血を噴出しながらもまだこちらに向かってこようとしていたが2、3歩歩いたところで横に倒れ込み絶命した。
「もー、マスター冷や冷やさせないでよ!」
「ていうかさっきのセリフ、盗賊かよ!」
俺が1体を倒す間にそれぞれ2体ずつ倒したレオンとカイがそばに寄ってきた。
「いやー、普通に地面に足を取られちゃって、面目ない。やっとゴブリン以外の魔物と戦えると思ったらテンション上がっちゃって!」
「マスターってば意外と戦闘狂?」
「素質あるよなぁ〜。じゃあサクッと解体しちまうからちょっと待ってろ。」
2人に少し失礼なことを言われながらも、自分でも少し思ってしまっまた為否定はせず甘んじて受け入れる。
カイがワーウルフを処理してくれている間にカイの手元が見えるところの木の影で少し休むことにする。
(やっぱり手際がいいな。なんだかんだ器用なんだよなぁ。そうか、切り傷のとこからナイフをそわせたら毛皮に無用な傷を増やさなくて済むのか。牙も根元にナイフで切込みを入れると取りやすくなるんだな……。)
いつまでもカイ1人に処理を任せるのは忍びないのでこちらも見て技術を盗む。
「ねえ、カイ。俺もちょっとやってみてもいい?」
「ああ?いーけど汚れるぜ?俺はこーいうの好きでやってんだから変な気使わなくても大丈夫だぜ?」
解体する時に顔に飛んだ血を腕で雑に拭いながら困ったような顔を向けてくるカイ。解体は鮮度が1番。時間が経つほど素材も肉も質が悪くなってしまう。だが難点は殺したてだとまだ体内の血が固まっておらず血が飛び散ってしまう点だ。
「ううん、俺もやりたいんだよ。だから教えて?それに1人より2人の方が解体も早く終わって次の狩りにいけるでしょ?」
「まあ、マスターがそういうならいいけどよ。」
そう言ってカイに見るだけでは分からなかった細かなポイントやコツなどを教えて貰いながら解体を行った。
1番苦戦を強いられたのは毛皮だ。毛皮に少しでも肉片が着いているとそこから腐ってしまい品質低下に繋がる。かといって肉と皮の間ギリギリを狙いすぎると毛皮をちぎりとってしまう。
だがそこもナイフを死体の表面にできるだけ平行に沿わすこと、ナイフは左右に動かしたりせずに反対側の手で毛皮を引っ張りながら間に見える繊維を切り取っていくことなどカイが丁寧に教えてくれた為すぐに慣れることができた。
ちなみになぜレオンが解体に参加しないかというとレオンはすこぶる解体に向いていないからだ。何度コツやポイントを教わっても肉片を綺麗に取り除くどころかどうしてそうなったと言いたいくらい肉も毛皮もぐちゃぐちゃにしてしまうのだ。薬草採取の時とは立場が逆転してしまっている。
まあでもカイは責めることなく、笑い飛ばしながらも根気強くレオンに教えているので喧嘩にはなってない。たまに笑われすぎてレオンが噛み付いてはいるが。こういう所をみるとやっぱりカイの方が年上なんだと実感する。
「ひとまずこれで解体終了だ!おつかれ!」
最後の一体を綺麗に解体し終え、鮮度を保つためにも1度スフィーダに戻って倉庫にしまう。その後は日が落ちるまでひたすら魔物を狩って狩って狩り尽くした。
日が落ちてきて一通り狩った魔物の解体も終えて帰ろうとした時、幸運か不運か魔物に囲まれてしまった。
「あー、ちっと奥まで入りすぎちまったかぁ?」
「どうする、マスター?ゴブリンにワーウルフ、ホーンラビット、ざっと見ても数十体は魔物に囲まれてる。逃げる?」
逃げるとはスフィーダに戻るということだろう。本来なら囲まれた時点で戦うしか選択肢は残されていないだろうが俺たちはスフィーダを好きに行ったり来たりできるため囲まれても普通に逃走手段として使える。でも、
「じょーだん。せっかく獲物が向こうからやってきてくれたんだ。丁重におもてなししないとね!」
そういうと2人はやれやれと言った顔をして剣を構える。
「やっぱり戦闘狂だったか。」
「さすが俺たちのマスターといったところだね。」
若干バカにされている気も否めないが今は目の前のことに集中だ。それに2人とも言葉ではああ言いつつも目はギラギラし、口元の笑みもごまかせていない。
「じゃあ始めよっか!」




