11話:畑
「また来よう、絶対来よう。なんなら明日の朝もここで食べよう。」
「うん、ここはリピート確定だね。惜しむらくは俺たちにおなかいっぱい食べるだけのお金が無いことだよ。というわけでカイ、これからやることはわかっているね?」
「もちろんだぜ!明日のメシの為に魔物を狩りに行くぞ!!」
俺たち3人、食いしん坊のような会話を繰り広げているがそれだけここの料理が美味かったのだ。店員の女の子が言うように、肉をひと口噛んだ途端、肉からとめどなく溢れ出る肉汁に初めて肉を飲むという言葉を学んだ。
肉なのにそこまで重たくなく、どことなくさっぱりとした風味も感じ、しかし米が欲しくなるようなガッツリとした味付け。これは無限に食べれると確信した。現に男子高校生にしては少食気味な颯汰でもそこそこの大きさがあったのにペロッと平らげ、人気と言うだけあって中毒性がある味付けのスープとサラダも手が止まることなく完食してしまったのだ。
これは鬼リピ確定である。毎日毎食でも来たい。だがそのためにはお金が必要だ。働かざる者食うべからず。2人にばかり負担をかける訳にはいかない。
「2人ともごめん、最初だけまた俺もついて行っていい?用事が終わったら邪魔にならないようにすぐにスフィーダにログインするからさ。」
「それはもちろん全然構わないけどどうしたの?」
「いや、今思いついたんだけど、ゲームの時はギルド裏に畑があってそこで農作物を育ててたよね?だからここでもそれができないかなと思って。」
「ああ!なるほど、確かにできるね!しかもスフィーダの中なら1日で大抵のものは育つよ!」
「でもそれがどうしたんだ?野菜でも植えるのか?」
「いや、薬草を植えようと思って!そしたらいちいち探してとらなくてもいいだろ?」
森で探した薬草をスフィーダの中の畑に植えることで毎日の収入を確保できるという算段だ。探す手間も省けるし朝起きて畑の薬草を収穫するだけでちょっとしたお小遣い稼ぎになる。
というわけで森へ戻ってすぐに薬草を何本かずつ採取したあとレオンとカイを残して先にスフィーダに戻った。
ちなみにレオンたちは自分の意思でスフィーダに出入りできるらしいので迎えは不要だ。
子房が膨らんで種子が入ってる薬草ばかりを採ってきたのでまずは種子を取り出す。森に生えていて依頼でも採った3種類の薬草全てから種子を取り出すと大体各50個ずつぐらいとれた。
それを種類ごとに丁寧に植えていく。乱雑に種を放っても多分普通に生えてくるとは思うが最初くらいはきちんと植えることにした。(多分1週間後くらいには適当に種を放っている。)
畑はまだ畑となっていなかったので倉庫にあったクワで軽く耕してから植えた。畑仕事なんてゲームの中だけで実際にはしたこと無かったがこうしてみると結構楽しい。やっぱりなんでもコツコツとやっていくことが好きなのかもしれない。
「よし!こんなもんだろう!」
初めてにしては上手く植えれたことに満足し、額にかいた汗を拭っているとちょうどレオンたちが帰ってきた。
「マスターただいま!」
「いっぱい狩ってきたぞ〜!明日はたらふく飯が食えそうだ!それにレベルも少し上がったしな!」
2人とも手に大きな袋を持っておりそれがパンパンに膨らんでいる。言っている通りその中には大量の魔物の素材が詰まっているんだろう。
また、レベルもそれぞれ少しずつ上がったそうでそれに伴って俺のレベルもまた1つ上がっていた。やっぱりレオンたちが魔物を倒すと少なからずその経験値が俺にも入ってきているようだ。なんかズルしているようでだいぶ気が引けてしまう。
「俺も畑を作ってみたよ。小さいけどこれからどんどん大きくしていくつもり。」
まあ今はそんなことを言ってもしょうがないので俺にできることをするだけだ。
「うわあ、すごい。ちゃんと畑になってる!」
レオンもカイも近くまで寄ってきて畑をまじまじと見ている。初めてで不格好な部分もあるためじっくり見られると恥ずかしい。
「これも明日売りに行くのか?」
既にもう芽を出し始めている薬草たちを見ながらカイが尋ねる。
「うん、そのつもり各種類10本ずつくらい残して収穫するから多分40シルバーくらいは貰えるんじゃないかな?もしまた薬草採取の依頼が貼ってあったらそれを受けて達成報酬も狙おうと思ってる。まあ、ズルだけどね!」
そう言うとレオンもカイも違いないと笑っていた。
「2人はどのくらい魔物を狩ってきたの?」
「ゴブリンを数体倒した後にワーウルフの群れに遭遇したからそいつらを一通り狩ってきたんだ。大体20匹くらいかな?」
「ゴブリンは持ってる短剣くらいしか売るもんがねぇけどワーウルフは牙や毛皮が売れるし肉も売りもんになるみたいだからな!大量だぜ!」
カイがニカッと笑いつつ肩に背負ってた袋をドサッと下ろし中を見せてくれる。
グロいかと思って少し薄目で見てしまったがそんなことはなく綺麗にたたまれた毛皮と血抜きされほぼ同じ大きさに切られた肉、血などが洗い流された牙がそれぞれ小分けにされて入っていた。
(カイはこういうとこ几帳面だよな。まあ解体してる時は見た目殺人鬼みたいだけど。)
「そうだ、今回2人とも怪我はしなかった?手当するから見せて!」
2人は小さい怪我ならゲームの時からすぐ隠す癖があったので倉庫に素材を入れたあとギルドの2階の部屋に入り問答無用で服を脱がせていく。
するとレオンは横腹に切り傷、カイは切り傷は無いものの打撲痕が複数箇所見られた。
「ほら、2人ともそこに座って。」
2人をベッドに座らせたあと、拡張してなくてギルドにはまだお風呂がないので身体を軽く拭き手当をした。
「ありがとうマスター。」
「やっぱすげえな、もう痛みが引いてきてる!」
「それなら良かった。ていうかそろそろお風呂入りたいね、日本じゃ毎日入ってたから気持ち悪い……。」
自分も軽く身体を拭いてベッドに横になる。
「明日風呂屋でも探すかぁ〜?」
「あるといいんだけど、お金に余裕ができたらギルドを拡張してお風呂つけたい……」
(あんだけ動いて汗かいてんのに2人からはいい匂いがするんだもんなぁ。ズルい。)
そんなことを考えつつ2人と他愛のない話をしているうちにいつの間にか眠ってしまっていた。




