10話:仲直り
「カ、カイ、いつから聞いて……」
「あー、えっと、俺が普段なかなか出てこないってとこくれぇからかな。」
「ほぼ最初っからじゃないか……!!」
カイの言葉に羞恥からか怒りからか顔を赤くしわなわなと身体を震わせるレオン。
「でもまあ俺としてはお前の本音が聞けて良かったっつーか、ていうかお前の方が俺よりも断然できることが多いしなんでも器用にそつなくこなすじゃねーか。頭だって良いし料理も掃除も仲間たちの意見をまとめるのも、この薬草採取だって俺よりできるくせに何言ってんだ。今だってチュートリアルだかなんだか知らねーけど一番知識持って一番マスターの役に立てるのはお前だろ!おめーは理想が高すぎんだよ!戦闘でお前より俺の方が秀でてるのだってほんの少しだしほぼ職業の特性のうちだろ!お前は戦士で俺は剣士、オールラウンダーのお前に攻撃特化型の俺が攻撃力で負けてたら目も当てらんねぇだろうが!!おめぇはチッとは自分の才能と努力を認めろ!お前は才能も十分にあるのにその上努力家でそういう所を俺は仲間として尊敬してるし信頼してる!お前も自分のできないところばっかりじゃなくてできるところに目を向けろ!それに俺はこう見えてお前より6つも年上だからな!!おめぇの嫉妬くらいいつでも受け止めてやんよ!」
話しているうちにだんだんヒートアップし、一気に言いたいことを全てぶちまけ、肩で息をしながらどことなくスッキリした顔をしているカイ。
対して思ってもみないことばかりを怒涛に聞かされポカンとしたあほ面を晒しているレオン。
傍から見るとなんとも滑稽で面白い場面だ。
「……仲直りってことでいいのかな?」
「おう!」
「いやいやいや!!!」
カイとレオン全く真逆の反応をしたが、互いに思っていることをぶちまけ(レオンのは不可抗力だが)、わだかまりは取れたことだろう。
カイなんかはわざとか天然か知らないがレオンをほぼ手放しで褒めまくったため、だんだん言われたことを理解してきたレオンが顔を真っ赤にしながら口をパクパクしている。
カイもその顔が気に入ったのか笑いながらレオンの頭をぐしゃぐしゃと撫でくりまわしている。そして羞恥心が限界突破したレオンにギャーギャー言いながら楽しそうに追いかけ回されている。
こう見ていると本当に兄弟みたいで微笑ましい。
「カイー!レオーン!俺一人に薬草採取をやらせる気ー?戻ってきてー!カイもやり方とかコツ教えるから一緒にやろー!」
遠くまで走っていったレオンたちに声を張り上げるとすぐさま2人仲良く?競争して?戻ってきた。
それからは夕方まで俺がカイに取り方を教えつつ、たまにレオンが口出ししてやいやい言いながら薬草を取り続けた。
「ふぅー!思ったよりも沢山取れたな。これだけでも余裕で昨日の金額を超えられるんじゃないか?」
「マスターの集中力と手際がすごく良かったからだよ!カイなんかに教えながらこの量を採れるって一種の才能だよ!」
「おいおい、言葉にトゲを感じるな。お前更に俺に遠慮が無くなってねぇか??」
3人で採った薬草をそれぞれ数えてみたが全部合わせて100本以上もあった。最初はほとんど戦力にならなかったカイも、何度か教えコツを掴んでからはほぼミスなく採れていたし、レオンは言わずもがな綺麗かつ正確に採れていたので品質も良さそうだ。
「じゃあギルドに戻ってこれを買い取って貰おっか!そんでひとまず夕食にしよう!」
「「賛成!!」」
ということでスフィーダを経由してギルドに戻り薬草を売却。薬草は3種類全て3本で1シルバー。それが全部で165本あったため55シルバー。それに以来達成報酬の10シルバーを3つ分加えて本日の稼ぎは総額85シルバーだ。3人分の日当としては日本と比べるとだいぶ少ないがまあFランクだしこんなものなのだろう。
買取の人には「よくこんなに採れたな」と驚かれたた。普通は1日でこんなに採れないそうだ。もしかしたら本当に薬草採取の才能があるのかもしれない。
夜ご飯は朝とは違って店に入って食べることにした。昼食を抜いたためまたも3人のお腹から音が鳴り止まなくなっている。
「お!あの店からすっげぇいい匂いがしてくるぞ!」
「賑わってそうだし今日はあそこで食べようか!」
香ばしいいい匂いにつられて明るく賑わっている店に入る。中は客でパンパンだったがちょうど席が空いたため待つことなく座ることができた。
「いらっしゃいませ!ご注文はお決まりですか?」
席につくとすぐに店員さんらしき若い女の子がやってきた。歳は颯汰よりもまだ若そうだ。
「あーえっと、ここに来るのは初めてで……なにかオススメのメニューとかありますか?」
一応メニューらしきものを見てみたが文字ばかりで颯汰には読めず、文字が読めるレオンやカイも知らない名前ばかりでどんなメニューか想像することができない。
「それでしたらこちらが当店のおすすめになります!特製ダレに1日じっくり漬け込んだ分厚いお肉を初めは強火で、そのあとは弱火でじっくり蒸し焼きにすることでお肉の旨味を凝縮させひと口食べると口の中で肉汁が溢れ出す1品に仕上げてます!」
店員さんの説明を聞いただけで口の中が唾で溢れかえる。3人ともが一斉にごくんと喉を鳴らした。もう2人の意志を聞くまでもない。
「それを3人前お願いします!」
「ありがとうございます!当店初来店との事なのでオマケにお肉似合う当店人気のスープとサラダもお付けしてお持ちしますね!」
この街はなんていい所なんだろう。サービス精神が豊富でとてもありがたい。女の子が厨房らしき所へ消えた後は今か今かとお腹を鳴らし続けながら3人で期待を膨らませながら肉を待ち続けた。




