9話:薬草採取
「……カイ、君はもう魔物でも探して狩ってきてくれ……。」
あれからスフィーダを経由して一瞬で町外れにある森にやってきた俺たちはすぐに1人1枚ずつそれぞれ担当を決めて依頼書にある薬草採取に取り掛かったのだが、1時間後集まって成果を確認してみるとレオンからでっかいため息とともにカイに戦力外通告が出された。
「これも、これも、これも!全然依頼書にある薬草と違うじゃないか!その目は飾りか!?」
「あーあー!うるせぇ!どれも同じにしか見えねぇんだからしょうがねぇだろ!」
「それにかろうじてあってるこれ!取り方が雑すぎる!依頼書に『根まで綺麗にとる必要あり』って書いてあるだろ!!なんで茎でちぎってんだよ!」
あまりにも怒りすぎてレオンの穏やかな口調が崩れ粗暴になってきている。カイも自覚はあるのか少しバツが悪そうにしているが、それを人から、それもレオンから指摘されたことでイライラしている。
「あーもううるせぇって!チッ!役に立たねぇ俺は魔物でも狩ってくるよ!」
そういうとカイは薬草採取用の袋を放り投げて森の奥の方へ歩みを進める。
「あっ、カイ!あまり遠くまで行き過ぎないでね!夕方までには戻ってきて、気をつけてね!」
あわててカイに言葉をかけるがこちらを振り返らず手だけヒラヒラと振って森の中へと消えてしまった。
「行っちゃった……。」
「マスター、ごめん……。」
カイが消えた方向を見ていると後ろからしょんぼりとした声が聞こえてきた。振り返るとレオンが肩を落として俯きながら申し訳なさそうな顔をしていた。
「つい、カイに言い過ぎちゃった……。」
「……うん、そうだね。不器用なりにカイも一生懸命やってくれてたからね。人には向き不向きがあるしカイはこういう系が特に苦手だから……。帰ってきたら一緒に謝ろっか。」
レオンにしょげた犬耳としっぽが見えつい自分よりも年上なのに頭を撫でてしまった。大型犬がキューンキューンと鼻を鳴らしているみたいで可愛い。
「よし、じゃあカイが帰ってくるまでに俺たちはできるだけ沢山薬草を取ってカイを驚かせよう!」
颯汰は元々細かい違いを見分けるのが得意なためサクサクと依頼書の薬草を採取できているし、レオンもそこそこ手際がいいため、それほど苦戦していない。今日中には余裕で依頼達成の為の最低本数は採取できそうだ。
「でもなんでレオンとカイはそんなに仲悪いんだ?先頭の時はびっくりするくらい息ぴったりなのに。」
採取の時の暇つぶしも兼ねてレオンにずっと気になっていたことを聞いてみた。ゲームの時から疑問だったのだが人物設定やパーソナルストーリーでもそこら辺は明かされておらず、またレオンを初期のパートナーに選んだ他のユーザーの間ではそんな話は一切出ておらず不思議だったのだ。まあカイ自体がとてつもなくレアなキャラでレオンとカイ、2人とも持っているユーザーが少なかったというのもあるが。
「それは……。」
「?言いにくいことなら別にいいけど……。」
レオンは珍しく俺の疑問に口をモゴモゴとさせて言い淀んでいたため、話題を変えようかと思ったが、レオンが何かを喋ったため耳を澄ませた。
「……たー……れ……う…から。」
上手く聞き取れなかったので聞き直す。
「え?なんて?」
「マスターを取られそうだから!!」
「え?」
顔を真っ赤にしたレオンが大きな声で言い直した。
「俺は14人の中からマスターに選んでもらえてめちゃくちゃ舞い上がって、この人を一生懸命サポートしよう、この人の1番頼られる存在になろうって思ったんだ。だからマスターに色々聞いてもらって、頼られるのが嬉しかったしマスターを知る度にどんどんマスターの一番になりたいって気持ちが大きくなって言った。」
突然始まった告白に驚きながらも採取の手を止めて耳を傾ける。
「なのに、そんなの時にマスターが初めて回したガチャでカイが出てきた。」
(あのときはえらい美人が来たって驚いてその後に実はほとんど出ない幻のレアキャラだって知って更に驚いたな。)
「アイツ、普段は全く出てこないくせにあの時は他の人たちを押しのけてまで出てきて……。カイはあの面倒くさがり屋で怠け者の性格だから滅多に人前には出て来なくて今もだけどあの頃は特にレアとされてたからマスターもカイに夢中になっちゃうんじゃないかって……。他のカイを手に入れた人たちはみんな主要キャラをカイに変えてたから不安で……。」
俯いて手持ち無沙汰に生えている草をいじりながら話すレオン。大きい体を小さく丸めてまるで怒られるの恐れているような様子だ。
(……ん?)
「マスターは他の人とは違ってそんなことせず俺たちを平等に扱ってくれた。でも、基本的な戦闘スペックはほとんどカイの方が高くって普段ダラダラしてるくせに戦闘時は誰よりも活躍して、頼りになって、カイがいるだけで俺も含めてみんなどこか安心感を感じてた。そんなカイに俺は多分ずっと嫉妬してたんだ。だからいつもカイに突っかかっちゃって…。カイもちゃんと毎回受け止めてくれるし俺がいつもつい言い過ぎてもなんだかんだ最後は許してくれるから甘えちゃってたんだ。」
(これは……。レオンも俺より年上だからあんまり分かんなかったけどレオンって実は弟気質?お兄ちゃんに突っかかる弟的な?やば、想像したらちょっと可愛いかも。……というか、そろそろ……。)
「ねえ、そろそろ出てきてもいいんじゃないー?」
颯汰の言葉にビクッと身を揺らして急いで颯汰が声をかけた方向にバッと顔を向けるレオンと、それと同時に木の裏からガサゴソと音が鳴った。
「よ、よお。」
現れたのは手に持った角が生えたうさぎのような魔物の死体を持ち、反対側の手で首の後ろを掻きながら気まずそうな笑顔を浮かべたカイだった。




