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52 江戸前 (えどまえ)

 二人はファミリーメンバーに挨拶をして料亭を後にした。翌日は予定通り東京で寿司を食べた。お通しを箸で上手に食べた後、初めリサは箸を使って寿司も食べようとしたが、正行が嗜めた。


「手で取って食べたほうが美味しいし、粋だよ」


「えっ、日本の人ってなんでも箸で食べるんだと思ってた」


「確かにほとんどのものを箸で食べる。ちゃんとした洋食のお店でもお箸を用意してる。でも、寿司は手でつまむもの。酢飯も崩れにくいし、大きさも指でつまんでちょうどの大きさになってる」


 そう聞いてリサは三本の指で寿司を摘んで口に運んだ。


「美味しい」


 唇に触れる細く長い指がセクシーだった。


「粋ってどういう意味?」


 咀嚼を終えたリサが正行に聞いた。


「まぁ、クールって感じかな」


 寿司屋の主人は英語を解しそうだったので正行は日本語で尋ねた。


「粋て英語で言うたらクールて感じでいいですよね?」


 主人を含め店にいた何人かがギョッとした顔で正行の顔を二度見した。


「えっ、僕なんか妙なこと言いました」


 主人が言った。


「いえいえ、すみません。日本語で聞かれて驚いただけです。そうですね、粋というのはクールで問題ないと思いますよ。この辺りとはアクセントが違いますけど、日本語お上手ですね」


「上手ではないです。多少話せるぐらいです。僕はN国生まれなんです。母は帰化してN国人になりましたが、両親とも日本人ですよ」


「ご両親は関西のお生まれですか?」


「母はもともと鳥取ですが、大学以降はずっと大阪でした。父も大阪生まれで基本的には大阪が中心の生活だったようです」


「パートナーの方は?」


「リサはアメリカ生まれのアメリカ育ちです。僕がアメリカに留学しているときに知り合いました。なので日本語は解しません」


「お二人ともしっかりした体格をしておられますが、何かスポーツをしておられるのですか?」


「僕は小さい頃から母に教わってフライ・フィッシングと射撃やハンティングをしていますが趣味程度です。リサは最近同じようなことをするようになりましたが、ジムに通ってたぐらいです。母がN国に農場を持っていて、明日、そこに行きます。農場ではそれらが全部できます。まぁ、ジムはありませんけどね」


「そうですか、それは楽しみですね。お気をつけていってらっしゃい」


「ありがとうございます」


 繊細で味の良い料理と気さくな主人との会話で寿司屋での時間は瞬く間に過ぎていった。


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