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20 メスベン

 バスを降りると街は閑散としており、時折、車が通過する程度でほとんど人はおらず、タクシーが来るかどうかもわからなかった。


 バス停脇の歩道から見渡すと、ちょうど向かいにカフェがあり、二人はお腹も空いてきたので昼食を取ることにした。カフェはすいており、老夫婦が一組コーヒーを飲んでいるだけだった。


「なぁ、奈央ちゃん。こんなところでタクシーなんか捕まるんやろか?」


「いやぁ、いそうにないいうか、そもそも人が全然おらんな。大体、CCから1時間ぐらいて聞いてたけど、二時間はかかってるし」


「ここでタクシー拾えいうんやから農場はもっと周りになんもないんやないか?トイレ休憩の後、街らしいとこは一つもなかったし」


「それは単に人口密度が小さいだけで、さすがにN国に人外魔境みたいなところはないやろ。I国とか、B国の山間部いうたら山賊でもでそうなぐらいすごいで。たまにほんまに山賊出るらしいし」


「なんでそんなとこに行くん?」


「そういうとこの方が現金収入ないから、その、臓器がやな、安う手に入るんや。ただ、あんまり奥に入ると危険やからそこそこ田舎ぐらいでやめとくみたいやけど。ここでそれはないよ」


三木が小声で言った。


「せやかて、差し詰めタクシーが拾えるかどうかもわからんやん」


「ご飯食べたあとで店の人に聞いてみたらええやん。れなさんも問題なく来てるわけやし、大丈夫やて」


 二人はオールデイズブレックファーストを食べ終わるとカフェの人にタクシーがあるか聞いた。意外なことに、店を出て右にひとブロック先の郵便局の前によく停まっているとのことだった。


 歩いて行ってみるとはたしてタクシーが停まっており、年老いた運転手が暇そうにベンチで新聞を読んでいた。


「スリーパインズ・ステーションまでお願いできます?」


と三木が聞くと、またI国から来たのか、と聞かれた。いやいや、ジャパンからだと答えると、そんなアクセントで話す日本人は初めてだと言われた。運転手は話し相手が欲しかったようで、乗車するとほぼずっと二人に話かけた。


 そのせいで三木は農場の近くに買い物をする場所があるかということを聞き損じてしまった。当然、そんなものはあるはずもなく緑の中を四十分ほど走り、Three Pines Station and Vineyardと書かれた看板の前で降ろされた。


 道は途中からグラベルに変わり、当然、ファームハウスまでの道のりもグラベルであり、結構な距離もあった。門扉がありはしたが、施錠されておらず、開けてファームハウスまでタクシーに行って貰えばよかったと後悔した。





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