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最終話 ④

 貴方が触れると僕の糸に火が点いて花が灯る。

 夢から覚めた時、僕は温かい胸の中に居た。

 覚えのある力に包まれてゆるゆるとした快癒を感じながら、微睡(まどろ)み、また、眠りに落ちて行く。

 新たな命令をくれる筈の糸はぷつりと途切れて消えていた。


 オオノ神は龍神の兄神と誓いを交わした後、己が侵犯した神境へと謝罪の旅に出た。

 口下手なオオノ神の代わりにと、兄神が先ず、侵犯の理由を尤もらしく述べる。

 〝只の狼から神へと引き上げてくれた大恩ある主神様の気配が無く、正気を失う程に狼狽えてしまった。友である私が説得し、正気を取り戻させた。オオノ神も反省している故、許して欲しい〟、と。

 その後ろで恐ろしい形相をし、大音声で〝済まなかった〟と謝罪の言葉を述べて頭を下げるオオノ神に、返って土地神たちは恐縮し、〝許すなどとんでもない、何も被害は被っていないのであるし、頼むから頭を上げてくれ〟と慌てて頼む始末であった。

 その上で兄神は、天からのオオノ神討伐令を取り消す為の嘆願書を持ち出す。龍神兄弟の名に始まり、侵犯をされてはいないウカノ神の名まで署名が為されているのを目の当たりにし、署名を断る神は一柱として居なかった。

 やがて程なくして討伐令は取り消された。

 その頃には、〝龍神の里を治めていた双子の兄が長の立場を弟に譲り、隠居した。強力な右腕を得てとうとう動くに違いない〟という噂が地神界の其処彼処(そこかしこ)で囁かれたのだが、天神界には伝わらなかった。

 主神の所在不明が続く中、混乱の極みに立たされた天の神々は、天の玉座を空位にする訳には行かず、やむを得ずに主神の息子を仮の玉座に据えていた。主神が戯れにヒトとの間に成した子で、天界全てを神力で包み込み守護するには力及ばず、また、神々の頂点に立つには誰が見ても度量不足は明らかで……それを自覚している当人も及び腰であった。

 掌を反したように態度を変え、己を持ち上げ始めた天の神々を信じられず、主神の息子は一つの御布令を出す。

〝地神界の神を官吏として登用する〟

 それを好機と、兄神は己と共に登用試験を受けるようオオノ神に命ずる。

 勉学嫌いなオオノ神は難色を示すも、〝誓い〟に縛られ従う他無く……苦虫を噛み潰したような表情で机に向かう日々を送っていた。


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