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最終話 ②

 一声吼えるだけで皆逃げて行く事を狼は知っていた。

 だが、今回に限って邪魔者は嫌な音と共に現れ、厄介そうな臭いに警戒して振り返った。

 きらきらきらと音を鳴らして振るわれた鎖は、目にも見えぬ速さで幾重にも首に巻き付く。思いも寄らぬ攻撃に吼えながら激しく頭を振り乱すが、食い込むばかりで解けそうにも無い。

 そこに立つ影を強敵と見定め、身を低くして唸り声を上げる。鎖の先を視線で辿る……光を放ちながら揺れる鎖は敵の持つ鞭へと繋がり、絡まり合い、まるで一つの武器であるかのように一体化している。

 力比べとばかりに鎖ごと敵を引きずろうと体に力を込める……が、逆に物凄い力で引っ張られ、その身が浮かび上がった。

 遠ざかる地面を眼下に認めてから首を(もた)げる……荒く流れゆく風の中で、無数に輝く光が目を眩ませた。

 幾度か瞬きをしながら光の正体を見極める――そこには、立派な角と(たてがみ)を蓄えた龍が威風堂々たる姿で飛翔していた。

 その全身を包む青みがかった鱗――それに反射する陽光が眩い光となって目に突き刺さる。

 それでも何とか目を瞬かせ、状況を把握する――龍の長い髭にがっちりと絡められた鎖に繋がれたままで、狼は己が空へと引き連れられているのだと気付いた。

 目が慣れると狼はそこに地面があるかのように空中を駆けて龍に近付き、髭を噛みちぎらんと大口を開ける……が、もの凄い速さで振り切られ、ぴんと張った鎖に否応も無く引かれ続ける。

 ならば、と龍の首元に向けて鋭い牙を振るおうとするが、鎖が首から全身へと伸びて絡みつき、容易には攻撃をさせてくれない。

 やがて遠くに灰色の岩山が見えて来た。

 見る間に近づいたその広く平らな山頂へと龍は着地する。鎖に動きを封じられ、思うように身体を動かせない狼は激しく岩の地面に打ち付けられ、土埃を立てて横ざまに倒れ込んだ。

 龍体から神身へと戻った敵は静かに立ち、鞭を握り締めたまま様子を窺う。

 大人しくなったかと思われた狼であったが、素早く身を起こし地に四肢を着けた途端、力を放つ――鎖が食い込むのにも構わずその身を大きく膨れ上がらせ、牙を剥き、怒りの形相で敵を睨み付けた。

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