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想い出  作者: 彼岸  章華


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外観にて

 皆様、大変長らく、お待たせ致しました。

 想像以上に手間取りまして。


 ……まさか、一刻もかかるとは。


 しかし気を取り直して、皆様が待ち望む喫茶店の外観の噺を、相も変わらず映像は映りませんが、始めて参りましょう。


 其の建物は、一見すると古民家のような姿をしている、廃墟で御座います。


 其の理由は、単純明快。


 錆びた門扉を抜けた先にあるものが、人の背丈を優に超える、雑草の森だからで御座います。


 しかし、其れだけではありません。


 なにせ、木造の外壁の至る所を蔦(ツタ)が覆い隠し、辛うじて見える外壁も、其の殆どが腐っているのです。


 しかも其の草の森では、至る所で小動物たちの楽園(ガーデン)が生み出されているのです。


 ええ。

 恐らく、此れがお店にとっての普通なのでしょう。


 さて、如何です?

 此れには、世辞の方が裸足で逃げ出すという物でしょう。


 けれども、此の程度なら未だ笑って見過ごせるという寛容なお方がいらっしゃることを、我々は知っております。


 しかし、其のような方でも

「此の喫茶店が情報の海(インターネット)を幾ら潜っても、情報は得ることができない」

 と知れば、如何でしょう。


 皆様が情報を得る際の心強い味方。

 何時でも、皆様の助けになる便利な文明機器。


 其れが

「ただの鉄(・)屑(・)になる」

 という事実。


 ええ。

 此れには、驚かれることでしょう。


 まあ。

 此の真相は

「店主が極度の機械音痴で、情報を発信しようとしても、機械を破壊してしまうだけ」

 という単純な噺なのですが。


 其れは、言わぬが華というもの。


 さて、其れでは。

 此処までお聞きになって、如何でしたか?


 普通とは、かけ離れた姿でしょう。


 兎にも角にも、此処を一目見てお店だと分るには、多大なる苦悩と苦痛、混乱と困惑を催すのだということ。


 ご理解頂けましたら、幸いです。


 しかし、此のような特徴的な存在感を漂わせているからでしょうか。


 店内に入った者は皆、一様に驚きの声を上げるのです。


 しかし其の理由は、明々白々。

 此れまでの話が、外観に限ったことだからで御座います。


 其れにしても、情報が何もない状態で、此のような廃墟に入ろうとは。


 此の場所が、喫茶店であるということを知っていても躊躇なさる方がいるのですから。


 随分と、勇気のある行動だと言えるでしょう。


 命知らずとも言えますが……。


 失礼。

 噺を戻しましょう。


 其れにしても、皆様。

 廃墟巡りは、お好きですか?


 何故、此のようなことを聞いたのかと申しますと。


 此の喫茶店に来る方の多くが、廃墟巡りを趣味にしているからで御座います。


 まあ。

 其のような酔狂な趣味をお持ちの方は、此れからご自身の目を疑うことになるのですが……。


 何故か?


 其の理由は、皆様ご存じ、此の場所が廃墟ではなく喫茶店だからで御座います。


 けれども、其れを知らずに廃墟巡りに興じていた酔狂な方は違います。


 なにせ、今まで見ていた怪しげな雰囲気が扉を開けた瞬間に一変したのですから。


 此れには、幾ら愚鈍な者であっても、

「あれ、夢(・)か(・)」

 と疑うこと、違いなく。


 なにせ、外から見えていた蔦や雑草が、店内からは何処にも見当たらないのです。


 此れには

「疑うな」

 という方が酷というものでしょう。


 まるで、自宅の地下にある洞窟を探索していたら、紺碧の海に辿り着いたようなものなのですから。

お読みくださり、ありがとうございます


それでは、続編をお待ちください

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― 新着の感想 ―
佐々鬼さんの語り口が印象的でした。怪しげな喫茶店と、機械音痴の店主のユーモアが面白いです。ここでどんな思い出が語られるのか、楽しみです。
4話まで拝見致しました 語り口が素晴らしい。 最初は、大正明治舞台かと思ったらネットがある? 続き気になります。
4話まで拝読しました。 佐々鬼さんの独特な語り口が印象に残りました。 ところどころにユーモアが挟まるので、読んでいて思わずクスッとしてしまいます。 喫茶店の外観と店内のギャップも良かったです。 外か…
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