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After Story③

コミカライズ連載開始記念SS 最終話です。

 すったもんだの晩餐会の後、迷惑料と口止め料も兼ねてなのか、ランスロットとアナベルの元にはイトゥリ王から沢山の贈り物が届いた。

 恐縮するアナベルにルイスは腹黒く微笑んだ。


「受け取っておきなよ。まぁそれで済ますと思ったら大間違いだけどね?今後もことある毎にあの晩餐会での無礼を引き合いに出して、イトゥリとの交渉事は有利に進めさせてもらう予定だから☆」

「久しぶりに黒いっ!怖っ!」


 これからずっとネチネチ嫌味を言われるイトゥリの外交官達を憐れみながらも、ランスロット達は帰国の途についた。


 国に帰ってくると、さっそくアナベルは医師の診察を受けた。

 イトゥリではまだ分からなかった胎児の心音が今度はしっかり確認でき、妊娠が確実なものとなると、ランスロットはアナベルのまだ薄いお腹にそっと手を当てた。


「ここに俺達の子が……」


 掌に全神経を集中させてみたが、当然動くはずもなく……。


「正直まだ実感が湧かないな……」

「私もです……」


 そんな風に笑い合う二人をニヨニヨと見つめていたキャロルが、甘いお菓子を食べた時のような幸せな溜め息を吐いた。


「ベルとランスロットの子かぁ〜!とりあえずどっちに似ても美女かイケメン確定よねぇ〜!楽しみすぎるっ!」


 お祝いは何がいいかとか、名前はどうするとか、嬉しそうに喋りながら紅茶を飲もうとしたキャロルが急に吐き気をもよおした。


「キャロル様大丈夫ですか!?」


 アナベルが慌ててタオルを差し出したが、幸い吐くまでには至らなかった。


「うん、大丈夫……。なんか匂いがキツくて……。紅茶変えた?」

「いえ、いつもと同じですが……」


 アナベルの言葉を聞いて、キャロルはハッと何かに気づいたように口元に手を当てた。


「もしかして……朝ごはん食べすぎた……?」

「それが理由ではない気がします」

「だよね?」


 そんなの二人の会話を聞いていたルイスがぽつりと呟いた。


「キャロル、ひょっとして……」


 キャロルもそこで他の可能性に気づき、はたと動きを止め、ルイスと顔を見合せた。

 つい先日アナベルもこんな風に体調を崩して、そして──。


「すぐに主治医を」


 どこか上擦ったルイスの声に、アナベルが急いで向かおうとするのを、すかさずキャロルとランスロットが止めた。


「ベルは走っちゃダメだってばー!!」

「ベル、俺が行くから待ってて」


 またやってしまったと、恥ずかしげに頷く愛しい妻に微笑みを返して、ランスロットは颯爽と部屋を出た。



 ****



 五年後──。


「いやぁ〜あの時は大変だったよねぇ!ベルと私の妊娠が分かって、ルイスとランスロットが超絶過保護になっちゃって〜!」

「そうでしたね」


 やれやれと言わんばかりのキャロルの言葉に、アナベルがくすりと笑って同意する。


「そうだったか?」


 ランスロットは顎に手をやり、とぼけるように初夏の晴れた空を見上げた。


「そうよ!ランスロットってば、転んだら大変だからベルをずっと抱き抱えて移動するとか言いだして、いい加減にしてくださいってベルに怒られてたじゃない!」


「そういうルイス殿下は王子宮のフロア全部にクッションを敷きつめると言い出して、予算案まで通して大騒動だったよな」


「そんな事もあったね〜!」


 あれから五年。

 ランスロットとアナベルは長男クラーウィスと、一歳下の長女オルタンシアを授かって、現在子育て真っ最中。

 ランスロットは最年少で近衛騎士団長になり、公私共に日々忙しく過ごしている。

 ルイスとキャロルは男女の双子を授かり、同じく子育て奮闘中。

 双子が生まれたのを機にルイスは、後継者のいなかった伯父の爵位を継ぎ、メイナード公爵となっていた。


「「ねぇお母様!リーネはいつ来るの!?」」


 ストロベリーブロンドの髪をぴょこんと跳ねさせた双子のアレンとカレンがサファイアの瞳を輝かせてキャロルの両腕に抱きついた。


「もうすぐ来るからクラ君達と遊んで待ってなさい?でも、リーネ達が来るまでお洋服は汚さないでね?」


「はーい!クラーウィス!シア!あっちであそぼー!」

「待ってよカレン、アレン〜!」


 公爵邸の庭を元気に走り回る子供達を、大人は東屋でティーパーティーをしながら見守るのが初夏の恒例行事となっていた。


「スズは三人目を出産したばかりだけど、今日来て大丈夫なのかしら?」

「三人目ともなるともう慣れたものだと仰っているそうですよ」

「ちょっと心配だけど久々に会えるの楽しみ!」


 アレックスと結婚したスズは、アナベル達とほぼ同時期に長女リーネを出産し、現在は三児の母。

 第一騎士団の団長職を弟に譲り辺境伯を継いだアレックスと共に辺境伯領にいる為、社交シーズンにスズが首都に来るのに合わせてこうしてティーパーティーを開いているのだ。


「この世界は幼稚園がないから、こうしてベルの子供達と頻繁に遊ばせられて助かるよ〜」

「幼稚園とは、小さな子供達のサロンのようなものでしたっけ?」

「そうそう〜!」


 そんな他愛ない話をしながら、元気に遊ぶ子供達を楽しそうに目で追う母親達。


 幸せだなとランスロットはふと思う。


 幸せの在り方は人それぞれだが、もし画家に「幸福」というタイトルで絵を描いてもらうとしたら、ランスロットは今日のような情景をリクエストするだろう。

 国王の執務室で第一騎士団のマル秘会報を見ていた頃はこんな未来など想像もしていなかった。

 王子妃選考会でアナベルに猛アタックして婚約までこぎ着け、ジェパ二からスズ達がやって来てひと騒動あり、結婚してからも出産や育児など、色々な事を二人で経験してきた。

 時が経つのは早い。なんて年寄りじみた事を考えながら昔を懐かしんでいる間に、母親達はもう別の話題について楽しそうにお喋りしていて、父親の出る幕はないらしい。


 子供達の元気な声を運んでくる爽やかな風を頬に感じながら、ランスロットは束の間目を閉じた。



「お母様〜!お父様が帰ってきたよ〜!」

「リーネ達も来た〜!」


 しばらくして聞こえたカレン達の元気な声に目を開けると、外せない公務で外出していたルイスと一緒に、スズ達が歩いて来るのが見えた。

 赤い髪に金の瞳という、アレックスの色を受け継いだリーネがさっそく元気にカレン達の元へ走り出す。


「リーネ!おてんばしすぎてお洋服破らないでねー!」


 辺境伯領で逞しく育っているらしいリーネを心配して叫ぶスズの腕の中には、白いベビードレスを着た小さな小さな赤ん坊。


「赤ちゃんてあんなに小さかったのね。懐かしい……」


 アナベルが懐かしそうに目を細めるので、ランスロットは少し前から考えていた事を、その耳元でそっと囁いた。

 それを聞いたアナベルは驚いたようにランスロットを見て、やがて嬉しそうに頬を染めて頷いた。



 ──「我が家ももう一人宝物を増やそうか」



 END


お読みいただきありがとうございました!

子供達の名前がしっかり決まっているのには理由がありまして……。

現在『お助けキャラ』のスピンオフ作品を執筆しております。今登場した子供達の学園物でございます。

ほら、乙女ゲームと言ったら学園物かな!と…(あくまで個人の偏見です)。

お助けキャラを読んでいなくても楽しめて、読んでいたら更に楽しめるような作品にできたらと思っています。

コミカライズの単行本発売に合わせてお披露目する事を目標に鋭意執筆中ですので、コミカライズと一緒にこちらも応援していただけると嬉しいです。

詳細はまた、わちゃわちゃと活報にてお知らせいたしますのでお待ちくださいませ。

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