コタツで蜜柑を食べながら手続きをした
コタツは掘りゴタツとなっており天板には籠入り蜜柑が置かれていた。
足を入れて座ればじんわりと優しいぬくもりが伝わってくる。
『 私はあなたの担当となりましたホロケウと申します。
早速手続きを始めましょう。
まずは名前ですが・・・困りましたね。
貴方、何故にすべてのキャラクターが「じぃや」「ばぁや」「おっちゃん」
などの一般名詞しか名付けていないのです。
固有名詞が無いではありませんか・・・ 』
「すみません?・・・」
『 手持ちのキャラクターから名前を選ぶはずだったのですが。
仕方がありません、今、すぐに、此処で、名前を考えて下さい 』
今すぐ此処でと言われてもすぐに思いつく訳ではないので困ってしまう。
だが名無しというのも困るので遠い記憶を探ってみる。
確かMMOを始めた当初は普通に名前を付けていたハズだ。
それらのキャラクターが居ないのはゲーム自体がサービス終了して存在しないからだろう。
確か好きな惑星の名前を付けたのだと思い出した。
「プルートでお願いします」
『 プルートさんですね、承知いたしました。
では次に新しい体を選び・・・
何故に似たり寄ったりの老体ばかりなのです・・・
しかも数が多すぎではありませんか。
分かりました、こちらである程度厳選しますので後から決めましょう 』
「お手数をお掛けします・・・」
これに関しては非常に申し訳なく思う。
ほとんどのゲームにおいてキャラクターは複数作れる。
その上限枠まで毎回作っていたのだ。
サービス終了したゲームを除いても27年分となればキャラクター数もそれなりになる。
『 先に降り立つ地を決めてしまいましょうか 』
ホロケウ様は地図を広げて見せてくれた。
『 気候は貴方の世界を参考にしていただければ良いかと思います。
例えば此処ですと日本と同じような四季があります。
こちらですと寒冷地となりますね 』
「お勧めはありますか?」
『 勿論あります。
こちらなどいかがでしょうか 』
ホロウケ様が指示した場所は、地球で言えば中東アジアに当たる位置だった。
乾燥地帯で昼夜の寒暖差が激しいと記憶している。
「私でも生活出来るでしょうか」
『 そこまで過酷な環境ではありませんから大丈夫です 』
「そうですか。ではそこでお願いします」
『 承知いたしました。 決める事は以上となります。
では支給品についての説明をいたします 』
さすがに手ぶらではないようで、何が支給されるのかを説明して貰えた。
まず収納鞄が貰えるらしい。
この収納鞄は品質により収納量や時間停止、重量軽減などの追加機能が変わるらしく店で購入する際はよくよく確認するようにと言われた。
今回支給されるのはダンジョン看破順位によって品質が違うそうで、私の場合は品質Aの収納鞄になるらしい。
『 おや、良かったですねプルートさん。
1位の方々が貴方に譲りたいと申し出たそうですよ 』
1位はあの3人組だ。
何故譲るなどと言い出したのだろう。
『 自分達は3人で協力出来たけど、おばぁさんは1人で2位だった。
実質的な1位はおばぁさんだと思う。だそうです 』
なるほど、そう考えたのか。欲のない優しい子達なのだなと思った。
お陰で私の収納鞄は品質Sという極上品となった。
回収されていった魔石や素材は査定されており買取金額相当が支給されるそうだ。
お世話になったナイフと竹水筒もそのまま支給されるらしい。
その他ジョブやスキルについても説明を受けた。
ノービスとして降り立つので生活しながらジョブを決め、ジョブに関係するギルドに所属する事になるそうだ。
ゲームの様に経験値を貯めてレベルアップする事となり、ギルドや依頼主の評価によってランクが決まるらしい。
スキルに関してはゲームの様にレベルアップで増えると言う訳ではなく、モンスタードロップによるスキル書を使って覚える事になる。
自分に不要なスキル書は売る事が出来、自分が欲しいスキル書も売りがあれば購入出来るという事だ。
最初から覚えているのは生活魔法だけという事になる。
確かあの人魂女神もそんな事を言っていたと思う。
HPやMPといった概念も存在し多少の個人差はあれど少ない人でMPは10、多い人でも100位らしい。
HPは年齢やジョブで変わって来るそうだ。
ちなみに生活魔法はどれを使ってもMP消費は1らしい。
こういったHPやMPなどのステータスはギルドか教会で確認出来るらしく、降り立ったら3日以内に必ず確認しておくようにと言われた。
レベルアップやスキルの取得などでも変動するので定期的に確認すると良いそうだ。
『 そろそろ時間です。
手続きも終わりましたし元の場所に戻りましょうか 』
「はい。説明して下さりありがとうございました」
元の部屋に戻れば若者達も揃っていた。
『 では30分間、自由に交流をどうぞ。
連絡先の交換などはお手元の指輪でどうぞ。
この指輪は身分証にもなりギルド登録にも必要です。
なくさない様にご注意下さい 』
いつの間にか右中指に銀色の指輪がはまっていた。
シンプルなデザインなのでどのような服装でも邪魔にならずにすみそうだ。
30分か、意外と長いな。
「あ、おばぁさん!連絡先交換しよっ!」
「良かったら僕達と交換しておきませんか」
「顔見知りが増えれば心強いので是非とも」
あの3人組がそう言って近寄ってきた。
確かに知り合いが居るのは心強いし、情報交換も出来るだろう。
それに1位の特権を譲ってくれるような優しい子達だ。
なにかあれば力になってやりたいと思う。
「儂でよければ是非にお願いしますじゃ」
「やったぁ! でもどうやるんだろう?」
「スマホのSNS交換みたいに指輪を迎え合わせるとか?」
「シャカシャカ振るとか?」
「互いの指輪が触れればいいみたいですよー!」
「あ、そうなんだ!ありがとー!」
なるほど、触れればいいなら握手でいいのではないかと思う。
「宜しくお願いしますじゃよ」
そう言って手を出し握手をしたのはよいのだが、どうやって確認すればいいのだろうか。
ゲームであればフレンドリストの画面がある。
「フレンド確認と声に出せば確認画面が出てきますよ」
「ほうほう、左様ですか。ありがとうございますじゃ」
声に出すのか、恥ずかしいので人前ではやりたくない。
「おばぁさん、プルートさんて言うんだねぇ。
じゃあぷるたん?」
「「 ぶっ 」」
「それは駄目じゃないかな・・・」
「目上の方に対して失礼だろう」
「そっかなぁ。じゃあぷるさんでいい?」
「好きに呼んでくだされ」
「わぁい、じゃあやっぱりぷるたんで!」
「「 おい! 」」
「皆さんはどう呼べばよいですかのう。愛称はありますかのぅ?」
「アズールはあずたん。オズワルドはオズたん。
私はルリリだからルリたんて呼んでねぇ」
「 ・・・ 皆たんなんだ・・・」
「「 ハハハ・・・ 」」
聞けばアズールとオズワルドは幼馴染みでルリリは8つ下のオズワルドの妹なのだそうだ。
なるほど、だからあんなにも仲がよいのか。
読んで下さりありがとうございます。




