最後のチュートリアルが始まった
足を運んで下さりありがとうございます。
「疲れたー!」
「お、俺達よりも先に戻った連中がいたのか」
「ざーんねーん。アタシ達が一番だと思ったのにー」
「あれ?なんでばぁさんが居るんだ?おかしくね?」
「ほぉんとぉー!私達より先に戻るとかありえなぁーい」
そう言われても困る。
私はこれまでの経験を元に自分のペースでやってきただけなのだから。
「君達随分と失礼な言い方するね」
「年配者にはそれなりの経験と知恵があるんですよ。
それを活かして行動すればダンジョンだって看破出来るでしょうに」
「そうそう。人生の先輩に対して失礼しちゃうわぁ」
「お前等には関係ないだろ!」
「君にも関係ないよね」
「おばぁさん、こんなの放っておいて私達と向こうに行ってようよ」
「ええ、おばあさん。良ければ僕達と一緒にいませんか」
「ええんですかいのぅ」
「行こっ!」
女の子に手を引かれて場所を移動する。
まぁあの手の子供には関わらない方がよい。
それからは3人組と最初の時はどのような場所に行ったのかや、ダンジョンではどのようなモンスターが出たのか等を話して過ごした。
不思議と誰も此処へ来る前の話は口にしなかった。
しばらくして5人組のチームと4人組のチームが同時に戻って来た。
「も、戻れた!」
「セーフ! よかったぁ」
「あー、もぉ疲れたぁ!」
2チーム共かなりボロボロの状態だが大きな怪我などは無さそうだった。
4人チームの中にあの女の子の姿を見つけてほっとした。
『 お疲れ様でした。
只今を持ちまして制限時間終了となります。
1時間後には最後のチュートリアルとして我々の世界の説明を行います。
遅れずにこの場にお集まりください 』
アナウンスの声に今戻って来たばかりの2チームがあたふたとし始める。
「1時間しかないの?! 急いでシャワー浴びなきゃぁ」
「その後は飯だ飯!」
「1時間しかないのってきっつぅー!」
「騒ぐ前にさっさと動けばいいのにねぇ」
ごもっともだと思うが、そういった事は心の中だけにとどめた方がよいと私は思う。
2チームの若者達は大急ぎでシャワーを浴び、食事を掻き込んでいた。
『 時間になりましたので説明を始めたいと思います。
説明の途中で話を遮るような事があれば、説明はそこで終わりです 』
人魂女神の説明はこうだった。
転生する先は私達が遊んでいたMMOというジャンルのオンラインゲームと類似した世界であり、私達が選ばれた理由は其々がランカーだったからと言う。
では選ばれたことにより死亡扱いなのかと言えばそうではなく、大規模地震の発生で死者は多数でたとの事だった。
つまりは、大規模地震で死んだ者の中から、MMOにログイン中だったランカーを選んだという事らしい。
ゲームにのめり込んで逃げ遅れた訳ではない、逃げる間もなく死んでしまったそうだ。
だがここで私は疑問に思う。
引退した私はたまたまINをしていたがランカーから外れていたのではないだろうか。
ここで質問を投げかける訳にもいかずにそのまま黙って話を聞いた。
転生するにあたり自分が保有するキャラクターの中から自分の姿を決める事が出来る。
そう言われて私は困った。
どのゲームでも年寄りキャラを作っていたのだ。
キャラ名も「じぃや」「ばぁや」「じっちゃん」「ばっちゃん」「おっちゃん」にしていた。
唯一年寄りキャラが作れないゲームがあったのだが、そこでもキャラ名は「おっちゃん」だ。
せめて名前は変えたいものである。
同じ事を思ったのだろう。
「げぇ、俺ネタキャラしかいねぇ!
なぁ神様よぉ、新しくキャラ作らせてくれよ」
先程「なんでばぁさんが居るんだ?おかしくね?」と言ったあの男だ。
叫びたくなる気持ちは分かるが冒頭に注意を受けただろう。
男はザザザッとポリゴン崩壊のように消えて行った。 南無・・・
転生先では何をどう過ごそうと自由らしい。
但し犯罪はご法度で当然取り締まる機関もあり罰則もある。
ゲームと類似しているがゲームではない。
守らなければならない規則があるのは当たり前だ。
そして科学は存在しない。
代わりに魔法が発展しており魔石を使った魔道具も存在する。
私達が日頃使っている家電のような感覚だろうか。
魔法は生活魔法と呼ばれる初歩的な物ならば誰もが使えるらしい。
魔術師や魔導士などには適性が必要となる。
私達の場合は魔法使いや魔導士など魔法職のキャラクターを持っていれば適性があるという事になるそうだ。
という事は自分の保有するキャラクターが多ければ多いほど職の適性は増えると考えていいだろう。
私はどのゲームでも上限枠までキャラを作っていた。
ギルメンとチームを組む時に足りない職を出して手伝う為とキャラメイクが好きだったからだ。
そのことが良かったのか悪かったのか・・・
通貨はどの国も共通で通貨価値としては円と同じだと考えてよいそうだ。
ただ紙幣は無くすべて硬貨な為財布がかなり重くなるらしい。
ちなみに財布は革製の巾着だそうな。
身分制度と奴隷制度も存在する。
ただ奴隷と言っても私が知る物とは違った。
身分は奴隷・平民・貴族・王族もしくは皇族と分かれており、奴隷は犯罪奴隷・借金奴隷と分かれている。
犯罪奴隷は犯罪者の奴隷落ち、借金奴隷は借金返済の為の期限付き。
借金奴隷の場合は労働条件なども細かく決められており不遇な扱いは受けないと言うので安心した。
ただ違法な奴隷商もいるので気を付けるようにと人魂女神は言っていた。
出来ればそういった類の物には関わりたくないものだ。
妖精や精霊と言ったファンタジーな生き物も存在する。
人々にとっては身近な存在で神々も身近な存在として敬われているそうだ。
なるほど、今は人魂だが実際は違う姿なのだろうか。
女神像とかあるのであれば転生後に見てみたいと思う。
ファンタジーな生き物が居れば当然モンスターも存在する。
まぁチュートリアルにも出て来たくらいだから当然だろうと思う。
『 以上を持ちまして説明は終わりとします。
質問等は担当の者にお聞き下さい。
全員の手続きが終了いたしましたら30分間の交流時間を設けます。
その時に連絡先を交換したい人がいれば交換しておいて下さい。
では皆さんの新たな生活が豊かな物となりますように 』
人魂女神が消えて色とりどりの人魂達が現れ担当者の元へとフヨフヨ飛んで行く。
私の前にやって来たのは銀鼠色の人魂だった。
「へっ!薄汚い色とかババァにお似合いじゃーん!」
そう言ったのは「私達より先に戻るとかありえなぁーい」と言っていた女だった。
薄汚いとか馬鹿だろうか。
この人魂達も担当者といいつつ神なのだろうと思うのに。
案の定、ザザザッとポリゴン崩壊のように消えて行った。南無南無・・・
『 では別室にて手続きを行いましょうか 』
「はい。宜しくお願いします」
そう答えるや否や、それまでの部屋とは違い小さな部屋に移動した。
『 馴染みのあるコタツを用意致しました。
どうぞお座りください 』
「ありがとうございます?」
疑問形になってしまったが許して欲しい。
まさか此処に来てコタツが登場するとは思わなかったのだ。
~ オマケ ~
銀鼠 『薄汚いと言われた・・・』
女神 「若い子だとこの色の良さが分からないのかしらねぇ、銀鼠だし」
銀鼠 『本体の姿なら良い色なんだけどな』
女神 「そうねぇ、艶のある良い色合いよねぇ、銀鼠だけど」
銀鼠 『スルバーグレーって言い方にすればよかったかな」
女神 「ちょっと訛ってるわよ? それを言うならシルバーグレーでしょ」
銀鼠 『シルバーグレーだと彼女が分からないかもしれない』
私 「シルバーグレーくらい解かりますじゃよ・・・」
女神&銀鼠 「「 失礼(;´Д`) 」」




