続きのチュートリアルが始まった③
スライムは一般的には水属性だ。
魔法が使えれば倒すのは容易いし、小さなサイズであれば打撃でも通用する。
だがキングやクィーンなどの大きなスライムともなればナイフのような小さな斬撃ではすぐに再生してしまうし、魔法が使えなければ面倒な相手となる。
そうなれば心臓である核を狙うのが一番よいように思える。
半透明のスライムは内臓まで半透明なのだが、ここまで大きければうっすらと目視出来る。
そして心臓部分だけわずかに色が濃いのだ。
そこを狙うにはやはり接近戦となり、再び体に腕を突っ込むしか無いだろう。
正面からだと酸を吐かれる可能性もあるので背に狙いを定める。
シュッと切れ込みを入れて腕を突っ込んでみる。
何度やってもこの感触には慣れないし慣れたくも無い。
こうやって近づいてみれば老眼でも内臓や心臓を見分ける事が出来る。
あった、心臓だ。随分と深い場所にある。
肩まで突っ込んでも届かない。見事な樽体系のメタボ体系だ。
少しはダイエットを・・・ いやスライムだから関係ないのか。
仕方がないな、と思うのは何度目だろう。
諦めの溜息を付き頭を突っ込んだ。
両手でクィーンスライムの体部分を掻き分け、奥へ進もうと試みる。
だがすんなりと行ける訳も無く、クィーンスライムはブルルンと身を震わせる。
ポヨポヨと体内にミニスライムが湧いた。
(えぇ!今ご出産?!)
叫んでみて慌てて手で口を押えたが遅かった。
口の中にヌルッとスライムが入り込む。
これはまずい、やばいぞと思い吐き出そうとするとスライムは鼻の穴から抜けて行った。
ツーンと鼻の奥が痛い。
なんだろう、凄く地味だけど嫌な攻撃を喰らい心にダメージを受けた気がする。
・・・ ・・・ ・・・
はっ、呆けている場合ではない。
早く心臓を壊さなければと気合を入れ直し、再びクィーンスライムの体を掻き分ける。
相変わらずクィーンスライムもブルルンと身を震わせてミニスライムを生み出し続けている。
少しずつ、ジワジワとだが前進している。
ミニスライムが纏わり着いて来るのがくすぐったい。
くっ うはははっ やめーいっ!
止めろと言っても止める訳は無く、ひたすら耐えるしかなかった。
なんという攻撃だ。 ミニスライム、恐ろしい子!
そうこうしている内に心臓まであと少しと言う所まで進む事が出来た。
こう言うととても巨大なスライムを想像するかもしれないが、実際は1cmずつくらいしか進まないので時間が掛かっているだけだ。
(ふへっ)
耳元を何かがサワサワと触っている。
何かがと言うよりミニスライムしか居ないのだが・・・
ゾワゾワと背中が粟立ち、追い払おうと手を振り払うのだがすぐに舞い戻ってきてしまう。
諦めてこのまま進むと言うある種の拷問を選択した私を褒めてやりたい。
後少し、後ほんの少し。
ザグッと硬い手ごたえを感じるとミニスライム諸共クィーンスライムは消えて行った。
終わった、疲れた。
カランと落ちた少し大きめの魔石とクィーンスライムの乳バンドを回収すると目の前に扉が現れる。
何故乳バンド、しかもクィーンスライムの・・・
一瞬「いらぬ!」と投げ捨てそうになったが報酬は報酬なのだろうからと思いとどまった。
現れた扉に目をやれば『 中央の石板に手を当てて下さい 』と書かれた札がぶら下がていた。
見れば確かに扉の中央に石板らしき物がはまっている。
書かれていた通りに私は石板に手を当ててみた。
ピカリと石板が光り、私は見慣れたあの最初の部屋で立っていた。
辺りを見回せば私意外に1チーム、3人組が立っているのが見えた。
どうやら彼等も看破出来たらしい。
『 看破おめでとうございます。
皆さんが持ち帰った物はこちらで回収致します。
終了時間までご自由におくつろぎください 』
アナウンスが流れて私はホッとした。
まずはシャワールームへと急ぐ。
特にベトついた感じはしないがクィーンスライムの体内に居たのだ。
なんとなく気持ち的にスッキリとさせたかった。
シャワーを浴びた後は軽食コーナーへと向かう。
今回はお品書きが置いてあった。
牛丼・豚丼・かつ丼・天丼・親子丼。そして何故かいなり寿司。
誰がこれらの品を決めているのだろうか。
ところでどうやって注文するのだろう。
悩んで居ると30代くらいの男性が声を掛けて来た。
「分かりにくいですよね。
メニューを指させばいいみたいでしたよ」
「そうなんですか。ありがとうございます」
教えて貰った通りにいなり寿司を指さしてみる。
ポンとお品書きの上にいなり寿司が現れた。
いなり寿司6個に唐揚げが2片、卵焼き1切れにガリ付きだった。
飲み物は玄米茶を選びトレーに乗せてテーブルへと向かう。
隣のテーブルでは3人組がデザートを楽しんでいるようだ。
「最後のあれキツかったよねぇ」
「まさかブロンズキングスライムが出るとはな」
「せめて魔法が使えればよかったのに」
おやおや、あの3人組はブロンズキングスライムだったのか。
あれは硬いから苦戦しそうだよな。
「おばぁさんもやっぱりブロンズキングスライムだったぁ?」
話を振られてしまったので答える。
「儂はクィーンスライムでしたじゃ」
「クィーンスライムですか、またレアなのを引き当てましたね」
「ブロンズキングスライムもレアですじゃろ」
「他の人達もレアなのが出るんでしょうかね」
「戻ってきたら聞いてみよぅよ~」
その後も3人組は賑やかに話を続けていた。
食事を終えた私はベッドへと移動した。
そう、今回はベッドが設置してあったのだ。
疲れた体には嬉しかった。
ごろりと寝転び今後の事を考えてみる。
これで終わりなのだろうか、それともまだチュートリアルは続くのだろうか。
いつになれば転生するのだろう。
転生する世界はどのような世界なのだろうか。
考えている内に寝落ちしてしまったらしく、目覚めるとすでに昼を過ぎており最終日の7日目が始まっていた。
新たに戻って来たチームはまだ居ない。
後何組が戻ってくるのだろうか。
あの草履を気にして女神に交渉してくれた女の子は無事戻ってこれるのだろうか。
心の中で無事を祈っておく。
「おばぁさんおはよぅ~!ぐっすり寝てたから疲れてたんだねぇ」
「おはようございますじゃ。老体にはいささかハードでしたのぅ」
「またまたぁ~。うちのおばぁちゃんより全然若いし体力あるじゃぁ~ん」
「ははは、ありがとうございますじゃよ」
「そうだ、今朝は美味しいフレンチトーストがあったんだよ!
おばぁさんのも取ってあるから食べなよぉ~」
「それはそれは。お気遣い頂きありがとうございますじゃよ。
頂くとしますかのぅ」
テーブルへ向かえばフレンチトーストのバニラアイス添えが置いてあった。
不思議とフレンチトーストはまだ温かく、アイスは溶けきらずに残っている。
飲み物はアイスレモンティーを選んで持ってきていた。
フレンチトーストが甘いのでノンシュガーにしてある。
椅子に腰かけて食べ始めれば、程よい甘みが口に広がり幸せを感じる事が出来た。
食べ終わった後はソファーで少し休憩する。
何か読む本でもあればよいのだが、そういった娯楽品は無いようだった。
景色を眺めようにも窓も無い。
昼寝でもして時間を潰そうかと思った時、5人組のチームが戻って来た。
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