ピリカ様がテレビショッピング並みに推してくる
部屋に戻り荷物を背負い宿を後にする。
別れ際におかみに蓬と虎杖を小分けにしたものを渡しておいた。
また怪我人が出た時にでも使って欲しいと思う。
お礼に「緑色の美味しいお茶だから」とククチョイの茶葉を貰った。
緑色のお茶と言われて日本の緑茶を思い出す。緑茶だといいな。
宿から北に向かえばすぐに教会を見つける事が出来た。
石造りの小さな教会だが他の建物よりは僅かに白い。
中に入れば神父らしき人が箒で掃除をしていた。
「おはようございます。ようこそおいで下さいました」
「おはようございます。ステータスの確認と転職をしたくて参りましたじゃ」
「左様でございましたか。こちらにどうぞ」
女神像の前にある講壇へと案内され、そこには水晶玉が置かれていた。
神父は何かあれば声を掛けてくれと言い掃除へと戻って行った。
水晶玉に手をかざせばタブレットサイズの半透明な画面が現れる。
name:プルート(ばぁやver) age:69 HP:690/690 MP:69
種族:異邦人 job:ノービス lv:15
gift:変身(制限付) 鑑定眼(最上級)
所有魔法:生活魔法全般
Job適性:弓師 治癒師 付与術師 魔物使い 死霊術師 薬師 錬金術師 庭師 家具職人
おや?前と変わっていないだろうか。
前は薬師は無かったし、盾師と料理人があった気がする。おやぁ?・・・
今考えても仕方があるまい。
ジョブ適性の下にある転職ボタンを押すと職業選択画面が出て来た。
毎度思うのだがゲーム画面に限りなく近いのは神様方の趣味がゲームとかなのであろうか・・・
まずはメインジョブを選ぼうと思ったのだが結局決めきれずにいた。
少し考えてのんびりと暮したいので庭師にでもするかなと思う。
ハーブや野草も植えておけば何かと役に立つだろう。
庭師の文字を押そうとしたのだが薬師の文字がピカピカ点滅して主張してくる。
何故に主張してくるのか・・・
薬師はサブジョブですよ、今ではないですよ。
すると点滅は収まったのだが今度は錬金術師が点滅し主張してくる。
だから何故に主張してくるのだ・・・
まさかピリカ様とかホロケウ様とかの意志が反映されてますかこれ・・・
私に選択権はないんですかね。
でしたら最初からジョブ決定済でもよかったのではないですかね。
選べれる仕様になっているのですから選ばせて下さいよ・・・
錬金術とか小難しそうなんですよ。そういうのは若い子に頼んで頂けますか。
『 お願い出来ませんか 』
「ぅわぉっ」
行き成りピリカ様の声が聞こえてきたので驚いてしまう。
心臓に悪いのでやめていただきたい。
ピリカ様の説明によればこの世界には元々薬師も錬金術師も少ないのだが、特にハジャラや周辺国は乾燥地帯とあって植物も少なく薬師も錬金術師も不足しているらしいのだ。
ならば私ではなく若い転生者たちに頼んだ方が良いのではないかと思うのだが私とルリリ達以外は離れた国に降り立ったのだそうだ。
しかもその内の数名は既に南無な結果になったようで・・・何をやってるのかね。
ルリリ達は既に転職済みでありノービスのままの私に白羽の矢が立ったと言う訳か。
そうは言われても困る。
薬師はなろうと思っていたのでまだいい。
けれども錬金術師と言われても頭に浮かぶのは超有名な弟が鎧になったあの漫画だ。
後はゲームでやった事があるくらいでダメージ系のポーションを作ったりホムンクルスを呼び出したりだったか。
ホムンクルス・・・懐かしいな。あの猫系のホムンクルスと羊系のホムンクルスは可愛かったな。
そんな事を思っていたらピリカ様の説明が再び始まる。
魔石の鑑定と研磨。魔法薬の作製。ホムンクルスの作製と召喚。
これらが出来るらしい。
魔法薬というのが回復系ポーションのみならず、ダメージ系のポーションや包帯なども含まれるという。
包帯?と思ったのだが、ポーションが即効性なのに対して包帯はじんわりと効いていく持続型らしい。
解毒だの解麻痺だのの包帯もあるとの事で少し驚いた。
ここで不思議に思うのは薬師でも魔法薬は作れるのではないだろうかという事。
だがピリカ様によれば魔法薬は文字通り魔力を流して魔法を掛けて作り出す物で、薬師の薬は魔法は使わずに野草や薬草の知識で作り出す物という違いがあるのだそうだ。
魔法を扱える薬師なら作れそうな気がしなくもないがスキル系統が別けられているのだそうだ。
確かに何でも作れますでは傲慢な考えを持つ輩が出て来てもおかしくない。
あれ、そう考えるなら私が薬師と錬金術師になるのはマズいのではないだろうか。
『 そこは貴方の人柄を信じております 』
人柄を信じて頂けるのは嬉しいですがおいそれと信じても駄目な気がする・・・
でもな、のんびりとガーデニングを楽しみたい気持ちもあるのだよ。
小さな庭であれば生活魔法使いながら草花も育てられそうだと思う。
その庭でお茶を楽しみながら・・・
『 説明不足等重ねての手違いのお詫びに
庭師のスキルも自宅の庭限定で使えるように致します 』
出血大サービスだね・・・
『 今でしたら花の種もお付けします 』
花の種・・・ それにはハーブや野草もふく・・・
『 お付けします 』
被せ気味に言い放ったよこの女神様・・・
今貰っても荷物が増えるので家を手に入れたらでお願いしたく。
『 では引き受けて頂けますか 』
そうなると薬師メインで錬金術師がサブだろうか。
と言うかだ。
この世界の人々はサブジョブを持っているのだろうか。
『 異邦人、つまり貴方方転生者のみです 』
なるほど。
ところでフレンドリストの種族名が異邦人と載るのは大丈夫なのだろうか。
『 極稀にではありますが異邦人が現れますので大丈夫です 』
大丈夫・・・か?
私は少し考える時間を貰った。
あまりに大っ平に異邦人ですなんて知られたくない。
異邦人で薬師で錬金術師だなんて分ったら王侯貴族などが出て来たりしても面倒臭いではないか。
考えても仕方がないか。なるようになるだろう。
必要に応じてしか作りませんがそれでもよろしいですかね。
それと困ったら相談にのって貰えますかね・・・
『 勿論です 』
判りました、ではその様に。
『 貴方のこれまでの経験と知識が反映される事となります
どうぞ宜しくお願いいたしますね 』
はい?
これまでの経験と知識といわれましてもですね。
野草や山菜の知識ですかね?お茶の知識もですかね?
え?もしかしてそれらも薬になるという事なんでしょか。
あれ、待って、もう少し説明をですね。えぇぇ・・・
「随分と悩んでおられましたね。無事転職なされましたか」
「はっ。ええ。まぁ。はい。なんとか」
「そうですか。では新たなジョブを楽しんでくださいね」
「ありがとうございます?・・・」
どうやら結構な時間が過ぎていたようで日が高くなりかけている。
神父に心ばかりのお布施を渡し教会を後にする。
村の店を見て回りたかったのだが、そんな暇は無くなったようだ。
「主、急がねば野宿になるぞ」
「そうだね・・・」
またいつか店を覗きに来たいものだ。
あの行商人に教えて貰った「メイメの店」も行く事が出来なかった。
残念な気持ちを抱えたまま村を後にし村道をひた走る。
私が走るのではない。タマが走ってくれている。
顔に当たる風が随分と冷たく感じるようになってきた。
次の町が越冬できるような環境だとよいのだがな。




