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選んだのはタマだった

何処までも続く黄土色の乾いた大地。

道以外の場所にはゴロゴロと石が転がっている。

所々に低木や草は生えているが楽しめる様な風景ではない。

これならば転移門を利用しても良かったのではないだろうか。


そうは思うが転移門だと大きな街となってしまう。

途中の小さな町や村なんかも覗いてみたい気持ちがあるのだ。


ん? いや待てよ。

越冬するだけなら別に大きな街でも良いのではなかろうか。

いや駄目か。

人が多い場所だと面倒な事に遭遇する確率もあがりそうだ。

ここはやはりマーナガルムと共に村や集落なんかも見てみるほうがいいだろうと思い直した。


マーナガルムの移動速度は速すぎず遅すぎずで丁度良い。

揺れもロリポップ程では無く私のお尻にも優しいので安心だ。

暫く進むと休憩出来そうな木を見つける事が出来たので其処で昼食を兼ねた休憩を取る事にした。


マーナガルムにも皿に入れた水とツノウサギの肉を用意してやる。

そう言えば店の主人が名前を付けてやるようにと言っていた。

名前を付ければ契約完了になって会話が出来るらしい。

この会話は契約者、つまり飼い主以外には鳴き声にしか聞こえないと言う。

会話によって意思疎通が出来るとは便利な物だ。

だが困った事に私には名付けのセンスがない。

歴代飼っていた犬など「太郎」「次郎」「三郎」「四郎」だ・・・

まさかマーナガルムにそれを付ける訳にもいくまい。

いや、別にいいかも?


「ゴローでもいいですかのぅ?」

「あぅん?」


マーナガルムに聞いてみたが首をかしげている。

駄目か・・・

近くに落ちていた小枝を広い思いつく名前を地面に書いてみる。


「ポチ」「タマ」「ゴロー」「ジョン」「クロ」「ジャッキー」「シュワちゃん」


さぁどうだ。何か気にいる物があればよいのだが。


「どれか気にいる名前がありますかのぅ?」

「わふっ」


マーナガルムが差したのは「たま」だった。

自分で書いておいてな(・)ん(・)だ(・)が(・)主に猫に付ける名前でいいのだろうか。

本人が選んだのだからよしとするべきだろうし、この世界で「猫と言えばタマ」なんて感覚もないだろう。


「では君の名前はタマ。これから宜しくですじゃよ」

「わふっ」


マーナガルム改めワタマは返事をするとふんわりとした光が私とタマを包み込んで一瞬で消えた。

今のが契約完了の合図だろうか。


「タマ?」

「呼んだか、主」

「おぉ、聞こえる。凄いなこれ」

「主は歳を重ねておるのに騎乗ペットは初めてか」

「年を重ね・・・ うん確かにある程度は歳を重ねておりますがのぅ」


私は辺りに誰も居ないのを確認して変身を解いてみせた。


「なんとも!変化の術か」

「そんなもんですかのぅ。

 この事は信頼できる相手にしか教えておりませんのじゃ。

 ついでに言えば儂は異邦人じゃでの」

「異邦人! まさか異邦人に仕える日が来るとは」

「やはり珍しいですかのぅ?」

「前に異邦人が現れたのは4000年前だと聞いている」

「それはまた・・・」

「主、主はなかなかに珍種のようだ」

「珍種・・・ せめて希少種とかにしてくれんかのぅ」

「う、うむ。失礼した。言い方が悪かったな。

 主、主の事はおいそれと人に話さぬ方がよいだろう」

「信頼できると判断した人にしか言わぬつもりじゃて」

「うむ。さて主。飯を食おうではないか」

「そう言えば・・・名前を考えておったでおあずけになってましたのぅ」


目の前にエサがあるのに名前の事でずっとおあづけ状態になっていたタマの口から涎が垂れている。

可哀そうな事をしてしまった。

食べ始めたタマは嬉しそうに尻尾をブンブンと動かしている。

なるほど、感情表現は犬と同じなのか・・・


ついでに姿を「ばぁや」に変えておく。

この方が道中もよおした時にいい気がしたのだ。

どうも男だととまどってしまう。


食事を終えた後は少し休む。

食後すぐに動くのはあまりよろしくない。

そこで購入した地図を開く。

ホロケウ様が持たせてくれた地図は大陸地図のようで国内の細々した道などは載っていなかったのだ。

あの地図が使えれば現在地が表示されて便利ではあったのだが仕方がない。

地図には首都と隣の町の街道の真ん中あたりに大きな木の絵が描かれている。

旅人や行商人が休憩場所に使う場所らしい。


「主、この木の事だと思う。

 今時期は通行人が少ないが温かい時期には賑わうぞ」

「そうなのですか。タマはよく知っておりますのぅ」

「前の主が冒険者だったからな、商人の護衛なども経験がある」

「そうでしたか。では儂よりも旅慣れた先輩ですのぅ」

「うむ、任せてくれ」


前の飼い主とは何故別れたのかが気になったが冒険者ならば死別などもありそうで聞くのは控えておいた。

地図を見れば隣町まではあと半分の道程だ。

今夜は其処で1泊する事になるだろう。

地図を畳み休憩を終えて出発する。

タマは今回も伏せの状態で私を乗せてくれた。


その後もひたすら黄土色の乾いた大地を進む。

時折道からはなれば場所にツノウサギやあの猫羊の姿を見かけた。

彼等も冬支度で忙しいのだろうか、せっせと草を食んでいた。


「タマはあの猫羊の名前知っておりますじゃろか」

「猫羊? ああ、あれはヒツジドモキという」

「ヒツジモドキ・・・ それはまぁなんというか安直な名前ですの・・・」

「主が効いた鳴き声がニャーであれば、主は猫が好きなのであろう。

 アレは近くに居る人間が好きな生き物の鳴き声をまねするのだ」

「なるほど、左様でしたか」

「野生のヒツジモドキは気性が荒い。見た目に騙されると怪我をするぞ」

「うかつに近づかぬよう気を付けますじゃよ」


そうか、ヒツジモドキというなだったか。

なんまじゃないか!ろ思ったのは内緒である。

野生だと気性が荒いのか、そうか。一応はモンスターだものな。

狩りをする場合は十分に気を付けようと思う。


その後も変わった鳥の名前を聞いたり見た事も無い草花の名前を教えて貰ったりしながら進む。

鑑定眼を使えば判る事なのだが、私の問いに答えてくれるタマは少し誇らしげにしていて可愛いのだ。

それに会話をする事でコミュニケーションもとれる。

話の流れでタマの苦手な者も分かった。


「タマは物知りさんですのぅ、おかげで助かりますじゃよ」

「そうであろう。ふふん。

 だがな、私にも分からぬ事はある。

 例えば人が食べる物は火を通して味を付けるのであろう?

 私は生肉しか喰わぬので人が食べる物の味付けなどは知らぬのだ」

「なるほど。それは仕方がないのでは?」

「主の食べる物について役に立てぬではないか」

「ん? 町で買うか店で食べるかするし

 いざとなれば作れるから大丈夫ですじゃよ?」

「なんと!主は作れるのか!それは良かった。

 前の主は自分で作った物を食らって腹を壊しておったでな・・・」

「え?・・・」


それは作り方が悪かったのか、食べてはいけない物が入っていたのか・・・

なるほど、それを見ていたから心配してくれたのか。

一応は長年主婦業もやっていたのだ。料理は出来るのでそこは心配しないで欲しい。

前の主さんや、作れないなら無理をせずに買えばよかったのではないだろうか・・・

ペットに心配を掛けないでいただきたい。


そんな会話をしながら進み、夕暮れ前には隣町へと到着する事が出来た。

読んで下さりありがとうございます。

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