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歳を取ると・・・

宿の中に入るとバールを始めとする冒険者達が集まっていた。

何事だろうか。


「お、じぃさん戻ったか。

 腹減ってんじゃないかと思って晩飯を用意してあるんだが

 もぉ喰っちまったか?」

「そう言えば・・・ 忘れておりましたのぅ・・・」


バールに言われて夕飯の事を思い出した。

買い忘れているではないか。


「今日は朝から色々あったからな。

 疲れてるだろうし忘れてんじゃねぇかと思ってな」

「僕が気付いたんですけどね・・・」


そう言っているのはブラックベアのメンバーだ。

朝からバタバタしていたのを気遣ってくれ、夕飯を買ってきてくれていたらしい。

すっかりと忘れていたので非常にありがたい。


「まぁそんな気がしてスープも用意しておいたから食堂で食べな」

「ありがとうございますじゃ。お手数をお掛けしましたのぅ」

「何いってんだい、困ったときはお互い様だろ?気にするんじゃないよ」


おかみの好意に甘えさせてもらう。

バール達と食堂に入れば他の冒険者達からも声を掛けられた。

皆口々に「じぃさんがそんな奴じゃないって事くらい見りゃわからぁな」とか「変なのに絡まれちまったみたいだが気にすんなよ」などと優しい言葉を掛けて貰い目頭が熱くなる。

いかんな、歳を取ると涙もろくなってしまう。


「さぁじぃさん、喰おうぜ」

「はい、お言葉に甘えさせていただきますじゃ。ありがとうございます」


バールと一緒に夕飯を食べながら別れた後の事を聞かせてもらった。

あの兵士はセーリウスと名乗り中級兵士なのだという。

怒鳴っていたのは一応は部下で新人兵士だったのだが見習に戻されたらしい。

虚偽申請とやらの容疑は晴れ、逆に訴えを起こした奴等の方が虚偽の申し立てをしたという事で罰せられる事になったのだそうだ。


訴えていたのは北区の区長、その区長と懇意にしていた商人、商人ギルドの事務長の3人。

私を犯罪者に仕立て上げ親切心を装って近付きこき使って大儲け、なんて事を考えていたらしいとバールは呆れかえった顔をしていた。

商人ギルドのギルド長は昔気質(かたぎ)の生真面目な人物らしく、そのギルド長が居ない隙を狙いこざかしい事をしていたようだ。

うん、私も呆れるしかない。

世間知らずの子供や親元を離れたばかりの若者ではあるまいし、上っ面の親切心などに絆される訳がなかろう。


北区の区長は解雇され私財没収の上首都からの追放。

主都、王都共に立ち入り禁止令も出されるそうだ。

あの計算が不得意な娘も父親に手を貸していたので同じく首都からの追放になるようだ。

余談だがこの区長、勘違いをして「自分は貴族だ」と言っていたらしいが降爵されて平民というよりも準男爵だったので元々が平民であり貴族ではないというオチ付き。


区長と懇意にしていた商人も勿論信用が無くなる。

元々よろしくない噂があるような商人だったのでギルドには加入させて貰えていなかったようだ。

この商人は商人全体の信用を貶めたとして奴隷落ちするらしい。


事務長も同様、ギルドの信用を著しく損なわせたとしてギルドを解雇、奴隷落ちになるようだ。

袖の下を受け取って見なかった事にする、ではなくあの区長の娘に恋心を抱いていた為手を貸したようだ。

恋心を持つ前に職員の教育をして頂きたいものである・・・


今回の件で巻き込まれた人がいる。

商人ギルドの副長と経理部長だ。

区長の出入りに気付けなかった、もしくは気付こうとしなかった。

職員の教育を怠りギルドの信用を落とした。

この2つの理由から半年間の減俸となるらしく、少し気の毒だ。

本人達は至って真面目な性格で勤務態度も悪くはないらしく、降格されなかったのは良かったと思う。


「それでギルド長が戻り次第謝罪と買取差額の補填を行いたいらしいんだが」

「入れ違いになりそうですじゃのぅ、儂とギルド長(ちょう)・・・」

「だよなぁ・・・」

「予定はずらせませんか?」

「うーん・・・」


予定は未定、次に行く街くらいは決めるが気ままに旅をしたい。

出発をずらす事は出来るが、そうなると面倒臭くなりそうなのだ。気持ち的に。


「無理強いは出来ないからな。俺が代わりに受け取って振り込むか?」

「いやいや、そこまで面倒をかける訳には行きませんのでのぅ。

 1日くらいでしたら・・・」

「じぃさま、予定を変える事はないぞ。

 ギル長(おさ)にすぐ戻れと言っておいたから出発までには間に合うんじゃないか」

「アナンタさん・・・」


「やぁ」と笑いながら手を振っているアナンタ。

ギルド長に命令するとかか一体何者な・・・

ナーガ族族長の娘でSランク冒険者だった。

ギルド長も頭があがらないのかもしれない。

頑張れギルド長。

見知らぬギルド長だが冷や汗をかきながらしどろもどろになっている姿が頭に浮かんだのでエールを送っておく。


夜が更けるまでワイワイと雑談を繰り広げ、さすがに眠くなってきたので解散となった。

この日は皆のお陰で温かい気持ちのまま眠りに就く事が出来たのだった。



「クァクァクァッ ホヘーッ ホヘェーッ」


今日もこのユニークなフラミンゴの声で目を覚ます。

この世界へ降り立ってから1週間が過ぎた。

早いようで長いような、よく判からない感覚だ。


身支度を整え1階へ降りて行くとアチラコチラからうめき声が聞こえる。

今度は何が起きたと思わず眉間に皺を寄せてしまう。


「おはよう、おじぃさんは大丈夫かい?」

「おはようございますじゃ。

 何が大丈夫かなのですかのぅ?」

「大丈夫そうだね。ほらあれ。

 皆飲み過ぎちまって二日酔いで唸ってるのさ」

「唸って・・・

 あの声は二日酔いでしたか」


私は呑まなかったが皆結構な量の麦酒を飲んでいたはずだ。

あれだけの量を飲めば二日酔いにもなるだろう。


「なんだ、皆二日酔いか。だらしねぇな」


そう言いながら階段を下りて来たのはバールだ。

二日酔いにならず平然としているのはさすがと言ったところだろうか。


「ほら、酔い覚ましのスープを作っておいたから飲ませてやんな」

「ああ、すまんな」

「手伝いますじゃよ」


酔い覚ましのスープは根菜と野草が煮込まれた物で少し酸味のある匂いがした。

配膳を手伝っているとスープを口にした冒険者達から声があがる。


「あー、これこれ。やっぱ飲み過ぎた時はおかみのこのスープに限る」

「分かるー。これ飲むとスッキリするんだよね」


なるほど。この冒険者達はいつもおかみの世話になっていると。

というか世話になりっぱなしなのではなかろうか。

私も人の事は言えないが。


配膳を終えて私も朝食を頂く事にする。

私とバールの分は普通の朝食が用意されておりマーストムスィールという少し変わった味のヨーグルトとナンだった。

ナンと言っても色々な種類があるようで今日はナッツが入っているものだった。

ほんのりとした甘みがあり私のお気に入りとなっている。

ヨーグルトは私が知っている物とは違い、甘くなく濃厚な不思議な味だった。

ナンに付けて食べるからなのか量が多かった。

腹が緩くならないかと少し心配になる。

歳を取ってから乳製品には弱くなってしまった。

好物なのに困る・・・


食後のお茶を飲みながら少し休憩し、旅人ギルドへと足を運ぶ。

今日はどのような依頼があるだろうか。

読んで下さりありがとうございます。

ブックマークや評価、リアクションも本当にありがとうございます!

楽しんで頂けるように頑張りますので今後とも宜しくお願いします( ˙灬˙ )

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