疑惑が解消される
ゾロゾロと高ランク冒険者と兵士を引き連れてじぃさんが町中を歩いているので目立ってしまう。
好機の目や犯罪者を見る様な嫌悪の目、中には憐みの目すらある。
人々の視線が辛い・・・
門を抜け草原へと向かい、昨日とは別の場所へと到着する。
「ではツノウサギを10羽程狩りますじゃよ。
ただし此処で見た事は他言無用でお願いしますじゃ」
「スキルという事か?」
「まぁそんなものですじゃ」
「分かった。
スキルに関しては本人の承諾が無ければ他言してはならない決まりだからな」
「安心して良い。他言しようもんならうち等が蹴り飛ばしてあげるよ」
「ハハハ、そうならない事を願いますじゃ。では参りますぞ」
本当ならば見せたくなかったが疑惑を掛けられるのは非常に不愉快なので仕方が無い。
「元の姿になれ」と思えば瞬時にダークエルフの姿に戻る。
「「 なっ?! 」」
「 ギフトか 」
「これが本来の姿ですじゃよ」
そう言って弓を構える。
遠くに体つきがしっかりとしたツノウサギが見える。
まずは1羽。
スタッと小気味みよい音がしツノウサギの眉間に矢が刺さる。
ツノウサギは鳴き声をあげる間もなくその場に倒れ込んだ。
回収は後回しにして次の狙いを定める。
スタッ スタッと音がしてバタバタと倒れていくツノウサギ達。
30分弱で10羽を仕留め終わった。
次に川を探して移動し、そこで解体作業を見せる。
この解体作業はリアルの経験から覚えたものだ。
夫は猟師だったくせに血に弱く、もっぱら解体は私がやっていた。
その為若い頃は夫と山を渡り歩いていた訳だが、それがこんな風に役にたつ日がくるとは思っても見なかった。
65で夫も猟師を引退したので昨日の解体は久々だったが案外覚えている物だ。
1時間かけて解体が終わると兵士も冒険者達も間の抜けた顔をしている。
「どうかしましたかのぅ?」
「いえ、あのように血抜きをするのを初めてみたので・・・」
「ああやって木に吊るして毛皮を剥ぐといいのか。今度やってみよう」
「その姿でもその喋り方なんだ」
「その姿だとどう呼べばいいのだろう」
「あぁ、そうですのぅ。じぃやに戻りますじゃよ」
「じぃや」の姿に戻れは数名が残念そうな顔になった。何故・・・
「どうですじゃろか。これで納得頂けましたかのぅ」
「あ、ああ。手間を掛けさせてしまいすみませんでした」
「疑惑が晴れたのであれば良かったですじゃ」
「それで回収した素材はどうする。売るのか?」
「まさか、売りませんよ。
あの計算が不得意であぶなっかしい受付嬢な上に
虚偽申請だとかいちゃもん付けられましたしのぅ」
「「「 だぁよなぁ 」」」
「何処か旅先で売りますじゃよ」
「うん、それがいいよ。ところでうちのじぃさまに冤罪掛けたの誰?」
「それは・・・すみません業務上言えません」
「ふ~ん。言わなければいいんだね?」
アナンタの笑顔が怖い。
見なかったことにしようと思ったのは私だけではなかったようだ。
ブラックベアのメンバーが一斉に目を反らす。
アナンタは地面にいくつかの名前を書いて枝で差していく。
「これ?」
「いえ」
「これ?」
「いえ」
「これ」
「まぁ・・・」
「ふ~ん。分かった」
足で払って名前を消しニヤリと悪い笑顔になる。
美人さん、しかもナーガ族だとすごみが増して見える。怖い。
「じぃさま、後の事はこっちで手を打つから心配いらないよ」
「私の方も戻ってすぐに処理しておきます」
「そう言えばナーガさん達は」
「名を呼んでくれ」
「 ・・・
アナンタさん達は儂の素を見ても驚いた様子はありませんでしたのぅ」
「ん? ああそうか。じぃさまは知らないのか。
うち等ナーガ族は「真眼」のギフト持ちが多いのさ」
ほら、と見せてくれたそれは眉間にクワッと現れた第三の目だった。
人の本質や真実を見る能力があるのだそうで、初めて会った時から私が仮の姿だと分かっていたという。
なるほど。最初から・・・
「見た目もだけど、この「眼」のせいで人から恐れられているのさ」
「ふむ、やましい事がなければ恐れる必要が無いのではありませんかのぅ」
「あっはっはっは。じぃさまみたいにハッキリしてる人は少ないんだよ。
自分と違う容姿や能力を敬遠したり忌み嫌う人は居るし
やましい事がなくても不安になる人もいるからね」
「そんなものですかのぅ」
「だからじぃさまがその姿だったのはある意味正解だったんだよ。
ダークエルフも希少種で優れた能力を持っているからね」
「ああそうだぞ。
旅を無難に進めたいならダークエルフの姿はあんまり見せない方がいい」
「そうしますじゃよ」
用件も終わったらしいので此処で別れてドクダミなどの野草を採取しようと思ったのだが、アナンタ兄がヌッと手を差し出してくる。
この手は何であろうか。
「兄貴、無言じゃ分からないだろう」
「そうか?」
「分かりませんのぅ・・・」
「連絡先、交換したい」
「ああ、そういう事でしたかの。お願いしますじゃ」
「あ、俺ともしておこうぜ。何かあれば力になれると思う」
「じぃさま、バール達ブラックベアなら信用していい」
「左様ですか。ではお願いしますじゃ」
アナンタ兄とバールの2人と握手を交わす。
兄の名前は後で確認しようと思う。
兵士は戻って確認報告の書類を仕上げるという。
証人が記入する箇所もあるとの事でバールさんが記入すると申し出てくれた。
非常に助かる。
「じぃさまはこの後どうするんだ?街に戻るのか?」
「儂は少し野草を採取して帰りますじゃ」
「それは依頼か?」
「いえ、自分用ですじゃよ」
「何に使うんだ?」
「茶にしたり、まぁ色々ですじゃ」
一瞬薬代わりにと言いそうになった。
まだこの世界の薬について何も知らないのでうかつな事は口に出来ない。
下手な事を言って、今回の様なイチャモンを付けられても面倒臭いので気を付けようと思う。
「そうか。どんな野草を採るのか興味がある。付いて行ってもいいか?」
「構いませんが退屈ですじゃよ?」
「あ、兄貴は先に帰ってていいよ」
「俺も行く」
「ちっ」
「「 ・・・ 」」
何故そこで舌打ちをするのか・・・
他の冒険者も首をかしげているではないか。
ともあれ兵士とブラックベアのメンバーに別れを告げて野草採取に向かう。
欲しいのはドクダミ、せんぶり、オオバコ、あれば笹、出来ればクマ笹がよい。
夕暮れまでの3時間ひたすら探して採った。
意外にも兄クンダリが見つけるのが上手かった。
それにしてもこの光景、傍から見れば異様な光景に見えるだろう。
世紀末覇者映画に出てきそうなガラの悪い大男と、これまた目つきの鋭い長身の女と平凡な老人の組み合わせ。
私がこの光景を見たら、落としたコンタクトか財布を探しているとは思わないかもしれない。
生憎笹を見つける事は出来なかったが、他の野草はこんもりと採取出来たので収納鞄にしまい街へと戻る事にする。
アナンタとクンダリはとても満足そうだ。
どうやってお茶にするのだと聞かれたので作り方を教える。
まずは桶などに貯めた水でゆっくりと綺麗に洗う。
水気を切り風通しの良い場所で3~5日陰干しする。
乾いたら使いやすいように3㎝くらいの長さに切り分けて乾煎りする。
水分を飛ばし、熱を覚ませば完成だ。
「なるほど。やってみよう」
「今日はありがとうございましたじゃ」
「何かあればすぐに呼んでくれ」
「また、な」
宿の前まで送ってもらい別れた。
後半はまだよかったが、朝からスッキリしない気持ちの1日だった。
読んで下さりありがとうございます。




