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人の良い冒険者達

この世界に降り立って4日目、何か依頼を受けてみようかと思った私だったが外はあいにくの雨だった。

窓から外を覗けば濡れながら小走りで移動している人々の姿が見える。

どうやら傘と言った物はないようだ。

外出は諦めて、忘れていたチュートリアル完了の報酬を確認する事にした。


収納鞄を覗いて見れば見覚えのない白い布袋が入っていたのでこれだろう。

布袋を取り出し中身を確認しながら出していく。

アッパッパがノースリーブ・半袖・長袖と1着づつ。

懐かしいが最近の若者は知らないであろうアッパッパ。

何故異世界の神様が知っているのだろうか。神様だからか・・・

このアッパッパは寝巻代わりによさそうだ。


他にはカーキ色のズボンが1本、生成の綿シャツが2枚、チュニックワンピースが1着。

ズロースが3枚に乳バンドが3枚、生成の靴下が3足とトンビコートと呼ばれる外套が1着。

大判のショールが1枚に毛布が1枚。

バスタオルが2枚に手拭いが3枚、ん? そこは普通のタオルで良かったのではないだろうか。

その他ワンタッチ式の1人用テントと1人用のダッチオーブンにスキレット。

木の皿と木のカップが2つずつにスプーンとフォークが1つずつ。

ん?皿が2つあるのにスプーンとフォークは1つなのか。


武器も入っていた。

ショートボウに矢筒。ショートソードにバトルアックスにワンドとロッド。

いずれも初心者用だが有難い。


結構な量が入っていたので驚いた。

初心者セットのような物だと思っていたのでもっとショボい物かと・・・ゲフンゲフン。

アナンタさんから頂いた背嚢があってよかったと思う。

これに食料や水が追加されればかなりの重量になる。

重量軽減が付いていなければこの量を持って旅をするのはきついだろう。

改めてアナンタさんに感謝をする。


先日購入した服と一緒に畳みなおしながら仕分けして、しまえる袋が欲しいと思った。

雑貨屋か鞄屋を覗けば何かあるだろうか。

それとも冒険者用品の店でも何か丁度良い物が見つかるかもしれない。

明日覗いてみようと思う。


そう思ったのだが雨は昼には止んだ。

昼食を食べに出るついでに店も覗いて来よう。


昼食は宿のフロアに居た冒険者がお勧めしてくれた「サクサク亭」というお店に来てみた。

名前の通りにサクサクした衣の揚げ物が店のウリらしい。

私はシュニッツェルと言うチキンカツとサラダを注文した。

ラッシーのようなヨーグルト風味の炭酸飲料と小ぶりのナンが付いて銅貨5枚とお手頃な値段なのだが、運ばれて来た量に驚いてしまう。

山の様に摘まれたチキンカツ。3人前くらいはありそうなのだが・・・

他の人が注文した物が間違って運ばれて来たのではないのだろうかと周囲を見回してみる。


「ふふっ。おじさん、この店は初めて?その量が1人前で間違いないよ。

 食べきれなかったら銅貨1枚でサンドウィッチにしてくれるから

 持ち帰って夕飯にでもするといいよ」


いかにも初めてですという様な動きをしていたのだろう。

隣に座っていた女性冒険者がそう教えてくれた。


「これが1人前・・・

 そうでしたか。お持ち帰り確定ですなぁ。

 教えて頂きありがとうございますじゃ」

「どういたしまして。

 あ、食べ終わった頃に食後の果物も出てくるから気を付けて。

 果物の量も多いから」


ニコリと教えてくれた彼女もあの量を食べきったのだろう。

テーブルには空の皿と林檎の芯が2つ置かれていた。

え? 芯?! 林檎丸ごと?! しかも2つも?!

私だと林檎が丸ごと1個ならそれだけで満腹になってしまうのだがな。

若者の食欲って恐ろしい・・・


案の定1/3を食べたところで満腹となった。

店員に「申し訳ないが残りは持ち帰りで」と頼み銅貨1枚を渡してサンドウィッチにしてもらう。

渡された袋にはしっかりと林檎が2つ、一緒に入っていた。

明日の昼食はこの林檎でいいかもしれない・・・


「サクサク亭」を出て次は冒険者用品の店に向かう。

こちらを先にしたのは雑貨屋よりも実用性を重視した物がありそうだからだ。

ちょっとした旅行ではなく旅をしてまわるので小洒落た物よりも丈夫で使いやすい物がいい。


店内に入れば今日も冒険者で溢れている。

目的の袋類が並んでいる棚へと向かい、丁度よさそうな大きさの物を探す。

大き過ぎるのも困るが小さくても困る。

なかなかいいサイズの物が見つけられずにいると、また声を掛けられた。


「じいさん、袋を探してるのか」

「そうですじゃよ。服を仕分けして入れる袋が欲しくて探しておりますのじゃ」

「そうか、だったら雑貨屋の方がいいんじゃないか。

 冒険者は遠出するときも着の身着のままだからな」


なんですと?!

だが言われてみれば確かにそうかもしれない。

荷物が多ければ戦闘時の邪魔になってしまうだろうから、最低限の荷物しか持って行かないのかもしれない。


「そうだな、中古品で布鞄を買うのも手だな。

 布鞄なら服をいれるのにちょうどいい大きさの物もあるだろう。

 追加機能が付いて無い物ならば安価で売っているはずだ」

「なるほど。ではそちらを見てみますじゃ。

 教えて頂きありがとうございました」

「いや、おせっかいだったらすまない」

「いえいえ、とんでもない。助かりましたじゃよ」


礼を言って別れ、中古品が置いてある棚へと移動する。

布鞄と革鞄、材質がよくわからない鞄もある。

サイズも大中小さまざまにあるのでいい物が見つけられそうだ。

1つ1つに値札が付けられており、そこに追加機能の有無とどんな機能が付いているのかが書かれている。

手に取り確認しながら探していくのだが量が多すぎて疲れてくる。

鑑定眼で追加機能が無い物だけ分かればいいのにと思ったが、そんな便利仕様なはずも・・・

あったよ、ありました。あるではないか。

追加機能無しの文字が幾つかの鞄の上に出ている。

こういう使い方も出来るのか、凄いな鑑定眼。


追加機能が付いていない鞄は6つあった。

1つは大きいが他の5つは丁度いい大きさだ。

私はこの5つの鞄を購入する事にした。

支払いへ向かおうとすると先程の冒険者が再び声を掛けて来た。


「じいさん、腰に巻くタイプの鞄は持っているか?」

「腰に巻くタイプですか? 持っておりませんのぅ」

「ほら、こういうヤツなんだがな。1つ持っておいた方がいい。

 ベルト部分にナイフが差せる様になっている。

 それにその日使う分だけの小銭を小さな巾着に別けて入れておけば

 背嚢や肩掛け鞄から出さずに済むから中身を見られずに済むぞ」


最後の部分は小声で教えてくれる。

中身が見えてしまえばスリやひったくりに目を付けられるかもしれないという事か。

なるほどな、そこまでは考えていなかったな。


「確かにそうですのぅ。重ね重ねありがとうございますじゃよ。

 その鞄も見てみようかと思いますじゃ」

「あー、いや買う必要はない。ほらこれ、お古で悪いがやるよ」

「よいのですかの? おいくらでしょう」

「いらんいらん。俺のお古だし貰ってくれればいい」

「そうですか? では有難く頂戴しますじゃ」


とても申し訳ない気持ちになるのだが、おそらくこの冒険者も代金は受け取るまい。

アナンタさんといい、この冒険者といい随分と人がよい。

感謝しながら別れて支払いへ向かい、支払った後に店を出て宿に戻った。


しまった。ついでに夕飯を買って・・・

買わなくても昼間の残りのサンドウィッチがあったのを思い出した。

読んで下さりありがとうございます。

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