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気付いてしまった

ナンを扱う専門店を見つけたので其処で2つばかり購入し宿へと戻る。

部屋に入り荷物を降ろして棚へと置き、買って来たシシリクとナンをテーブルに置いた。

飲み物はおかみに貰った温かいお茶だ。


窓の外は日が暮れて暗くなっており少し肌寒い。

夜はもう1枚何か羽織った方がよいだろう。

そう思った私は気が付いてしまった。

今着ている服しか持っていないではないか・・・

明日は服を買いに行く事にしよう。

そうだ、ついでに靴も見てみるとしよう。


食事を終えてベッドにもぐりこもうとすればチンチロリンと電子音が聞こえる。

何故電子音がと疑問に思うが、その音は指輪から聞こえて来ていた。

何故音が鳴っているのだろうか。そしてどう止めればいいのだろうか。

頭の中を何故と疑問符が駆け巡る。

指輪を抜いてみようかと思ったが抜けなかった。

指が浮腫んでいるのだろうか。

だが指輪を抜こうと触ったことで音は鳴りやみ、スマホサイズの小さな半透明の画面が浮かびあがった。


「あ、繋がったぁ!ぷるたーん!」

「うぇいっ!」


驚いて変な声が出てしまったではないか、恥ずかしい。


「ほら、驚かせてしまったじゃないか。すみませんぷるさん」

「ありゃぁ、ごめんねぇ、ぷるたん」

「いえいえ、大丈夫ですじゃよ。こんばんは」

「「「 こんばんは! 」」」

「この指輪凄いよねぇ。スマホみたいに通話出来るんだってぇ」

「魔道具の1種らしいですよ。但し使用制限があるみたいですが」

「1日に1回、10分しか通話出来なくて使用MPは5だそうです」

「ほぅ、それは使い時を考えねばなりませんのぅ。

 皆さんよく知っていらっしゃる。勤勉ですのぅ」

「ん? ぷるさん説明受けていません?」

「手続きする時に指輪貰ったでしょぉ?その時に説明もしてくれたよぉ?」

「 え?・・・ 」

「「 え? 」」

「えぇぇ~!まさかぷるたん説明聞いてないの?!」

「指輪は連絡先交換の時に指に現れましたじゃ・・・

 なので説明は聞いておりませんのぅ」

「「 マジか! 」」

「ぷるたん、他にも説明忘れとかありそう~」

「まさか・・・」

「ぷるさん、平均寿命の事は聞いてますか?」

「平均寿命?聞いておりませんのぅ・・・」

「ぷるたん!通話じゃ時間足りないから明日会おうよっ」

「会うのは構いませんがどうやってですかのぅ?

 皆さん今どちらにおられますのじゃ」

「ハジャラって国の西の国境の街にいるよぉ~。ぷるたんはぁ?」

「ハジャラの首都におりますじゃ」

「分かった!じゃあ明日行くね!おやすみ!」

「待てルリリ!待ち合わせの場所を決めておかないと」

「時間もだろう!」

「ぷるさん、何か目印になる物はありますか?」

「街の中心部に大きな噴水がありますじゃよ」

「分かりました。正午の鐘が鳴る頃に噴水前で会いましょう」

「では明日お会いしましょう。おやすみなさい」

「はい、おやすみなさいましよ」


なんとも慌ただしい10分間の通話だった。

それにしても・・・

そうか、指輪は説明時に渡される支給品だったか。

そうか、諸々説明も忘れられていたのか。

そうか・・・

通話を終えた私が遠い目をしてしまったのは仕方がない事だと思う。


皆手続きをし説明を受けている時に指輪を貰っていたらしい。

という事はあの時いつの間にか指輪がついていたのは渡し忘れて慌てて付けた感じだろうか。

そして当然説明ははぶかれたと・・・

平均寿命についても聞かされていないので日本人と同じ感じかと思っていたのだが違うのだろうか。

ホロケウ様はもしかしてうっかり屋さんなのだろうかと少し不安になった。

この姿といい、知らないうちに何かやらかしていたなどと無いだろうな。


いかん、考えると不安が増してくるので寝ようと思う。

明日リリル達に会えば色々と分かるだろう。


どうやって来るのだろうか。

首都は国の中心部にある。西の国境の街とはそれなりに距離が離れていると思うのだが。

新幹線やジャンボジェット飛行機の様な物があるとは思えない。

アラジンの空飛ぶ絨毯の様な物でもあるのだろうか。

もしかしてファンタジーの様にドラゴンの背に乗って登場とかだろうか。

だとしたらそれは少しばかり羨ましい。


いかん、眠れなくなってしまう。

私は考える事を止めて窓から見える星を数えながら眠りに就く事にしたのだった。



「クァクァクァッ ホヘーッ ホヘェーッ」


鳥だという事は分かるが聞いた事のない鳴き声で目を覚ます。

気怠い感じがして二度寝をしたくなる。

あれこれと考えながら寝たからだろうか。

だが二度寝をする訳にもいかない。

正午からルリリ達に会うのであれば午前中の内に買い物を済ませてしまいたかった。


顔を洗い身支度を整えて『じぃや』へと変身する。

そう、あの後生理現象が起こり慌てて変身を解除したのだ。

幸いにして「元の姿に」と思えば解除出来た。

出来たのだが元の姿として現れた姿はダークエルフだった。

確かに初めのオンラインゲームで作った1stキャラはダークエルフだ。

当時は2Dが当たり前でキャラメイクなど無くて、ジョブによって種族や性別が固定されている物が多かった。

私が遊んだゲームもそうでジョブよりも見た目で選んだ結果ダークエルフとなったのだが。

思わず鏡の前で見惚れていたのだが、ブルッと身震いがしたので生理現象が起きている事を思い出す事が出来た。

粗相しなくてよかったと心底思う。

用足しが終わった後にそのまま寝てしまったので、部屋から出る際は『じぃや』へと変身する必要があったのだ。


「じぃや」になったのを確認し部屋を出て鍵を掛ける。

1階へ降りて受付の横にある食堂スペースへと向かへばおかみに声を掛けられた。


「おはよう、おじぃさん。

 今朝のメニューはアーシュレシュテとナンだよ。

 飲み物は紅茶かハーブティ。どっちにする?」

「おはようございますじゃ。紅茶でお願いできますかのぅ」

「はいよ、ちょっと待ってね」


アーシュレシュテとは何だろう。

手渡された皿を見てみれば、豆のスープだろうか。


食堂には冒険者らしき若者が多いようで賑わっている。

空いている席を見つけ断わりをいれてから相席させて貰う。


匙を持ちスープをすくってみればショートパスタが出て来た。

豆とショートパスタのスープらしい。

たっぷりのハーブが使われており、野菜も入っていてトロミもついているので食べやすい。

豆やショートパスタのお陰で腹持ちも良さそうだ。


食べ終わり空になった食器を下げて宿を出る。

店は開いているだろうか。

まずは服屋に行ってみよう。


この冒険者通りのすぐ裏の通りと、もう1つ裏の通りが商店が並ぶ通りになるらしい。

相席になった冒険者の若者達が「その服装では夜寒いだろうから」と親切にも教えてくれた。

「旅人ならば冒険者用品の店で買うのもよいかもしれない」とも教えてくれた。

確かに冒険者用品の店なら歩きやすくて丈夫な靴がありそうだし、肌寒い時に羽織るものもありそうだ。

兎の柄が描いてある橙色の看板が目印だと言っていたのでそれを目指せばすぐに見つける事が出来た。

看板というよりは壁一面に色が塗られており大きな兎が描かれていたのだ。


そして店内に入り私は気付いてしまった。

「じぃや」の姿で来ているので「じぃや」のサイズでしか購入出来ないではないか・・・

読んで下さりありがとうございます。

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