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「初陣がエガーテでなくて良かった。最初に殺す人間が、エガーテ人であったなら、私は耐えられなかった!」


「ガサンタで良かった、お前達を殺せば良いんだから!」


アイアンメイデンは剣を支柱とし、地面にめり込ませたそれに、体重をかける。ぬかるんだ地面は盛り上がり。巨体が立ち上がる頃、腰から上を闇に紛らわせたそれは、頭部のラインを赤く輝かせ、ナッド達の甲冑をその色に染めた。



「アイアンメイデン、やはりエガーテでも動かせる……。なぜ、私は男に生まれてしまった!」


ナッドは叫びながら、松明が完全に消し去られ、

爽やかな夜風に靡く完全な暗闇の森を見据えた。


バイザーを下げ、それを遮る。

戦いにおいて、このような心地良さの感受など、

必要ない。


視界は目だけを露見させたラインに遮られ、結局、

その風は隙間を縫って入り込む。

呼吸が反芻するように、自身の顔全体を、熱を持ちながら包み込む。鉄造りの装備独特の、血にも感じられる臭いが充満し、再び夜の空気がそれを払拭した。


結局は、これだ。必要ないと断じたものに、決まって人は助けられる。

助けられる内は良いのだろう。それが必要だったと感じながら死ぬことは、不幸だ。


目前の2人は闇に消えた。片方は鎧を忙しなく動かす音をもって、もう片方は、馬の蹄が軽快に打ち付けられる音を持って。


「松明を消して、夜戦など。」

居所を探られないために、灯りを無くすなど言語道断だ。仮に、後ろのアイアンメイデンから逃げるとしても、狼や、その他野生動物が跋扈する闇の中で、

目を第一に生きる人間が、紛れられるなど。


ナッドは、このような部下達しか持てない人間であることを恥じた。



破裂音が鳴り響き、鉄が弾かれる音がした。

アイアンメイデンに直撃したのだ。


機体は相変わらず、上半身を闇に紛れさせ、

その全体を視認させはしない。

赤い瞳が右に動く、ユラ・ヤコウにはセンスがあるのかもしれない。



眼下のナッドは、四角い魔法によって、姿を確認できる。自身の目の前を時々、白く朧げに発光しながら漂うそれは、周囲の景色を一段と明るくして、ユラに映像を届けているようだった。


自身の頭の上、頭部の辺りに石がぶつかるような音がした。アイアンメイデンはその出所に視線を、自動的に向けたが、一旦は無視をする。今の一撃が、筒によるものであるなら、敵わないということを理解して欲しかった。


「今、逃げてくれるなら。狼には食べられてしまうけど、直ぐに潰れて死んでしまうことはないよ。」

ユラの言葉は誰に届くはずもなく、鉄作りの無機質なカプセルの中で、それはユラの周りだけを響き渡った。



しかし、森林の茂みから、動物に跨ったそれは姿を現した。バイザーを上げ切り、恐怖を貼り付けた表情で、筒と言われた鉄砲を、自身の騎体へ向けている。


アイアンメイデンは、ユラの意思に関係なく。

完全にそれと正対するように体を向けた。


剣を持った腕を振り上げ、それは軋む。

ナッドが距離を取ったのが横目にわかった。



夜を吹く風を纏わせ、鋭い音が走った。



地面が弾け、揺れた。土に紛れさせ、鉄塊と、人。

そして、毛を纏った肉を撒き散らす。


兵士と、それを乗せた馬の体は前面の全てを押しつぶされ、共に下半身だけを、空中に霧散させる。


「だから言ったのに。でも、だからお前達はガサンタ人なんだな!」

この蛮勇が無ければ、1種族の虐殺など、成し得ないとわかった。


10メートル先に、草木を揺らす、

グシャリとグロテスクな音。

一つは人のものではない。蹄を持ったもの。

次に、赤みを持たせた鉄が崩れ落ちた。



「やはり、これを敵に回しては……。」

ナッドはバイザーを上げ、手甲で汗を拭いかけたが、

夜風に任せることにした。


空の星に、微かに照らされるアイアンメイデンは、

剣と、手の先から肩の辺りまでキラキラと反射する赤い液体を纏わせていた。


地面から剣を切り離し、土が振り落とされていく。

騎体は片膝をついた状態から立ち上がり。

再び腰から上を闇夜に隠した。

おそらく、頭部から発される赤い光は、

残滓を纏いながら周囲を見回しているようだった。








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