24グランシャリオ北斗七星のディナー
龍さんたちのコクーンへ、グランシャリオ北斗七星135°から、料理が運ばれて来た。
料理は、なにやら言う、名の高名な料理人の手による料理で、3つのコースから選べる。
1すき焼きコース
淡路ビーフに玉ねぎをつかい、はじめに、肉を鉄板で焼いて食して、次に、趣向をかえて、鍋で、すき焼き風でいただく。
2山海淡路島鍋
鶏を丸ごと煮込んで、特性コラーゲンスープにくぐらせ、しっかり育てた淡路島3年トラフグ、骨付き鶏、ワタリガニをいただく。
3淡路島の濃厚うに鍋
かつおと昆布のダシに、特性ウニを合わせたスープに、瀬戸内海で朝網漁でとれた本マダイ、タコ、エビをいただく海鮮料理だ。
(参考ホームページ https://awaji-grandchariot.com/facilities/#dining)
普通の宿泊客ならば、1~3のどれかのコースを選んで注文するところだが、広瀬家は、関西の富裕層があつまるご家庭だ。運ばれて来た料理は、全種類、テーブル一杯に、いや、むしろ、カートにはみ出して並べられた。
広瀬家
席を離れている栄一と、真ん中に娘の亜紀をはさんで、母。
茶川家
龍さんと、娘の茉奈、そして、足元に、さっそく、マダイの刺身をご相伴にあずかったワガハイ殿。
すでに料理が運ばれてきて、5分になる。会社からの電話で、栄一の着席が遅れているのだ。
すると、亜紀の母が、
「主人は、いつものことですから先にワタクシたちは始めましょうか」
と、食事を始めた。
「うわぁ~、このお肉おいしい」
茉奈は、霜降りの淡路ビーフを、塩コショウだけで味付けした肉に、思わず声をあげた。
「ホントかよ? 」
「龍さん、疑うなら、まずは、食べてみればわかるよ」
龍さんは、鉄板で焼かれた脂のしたたる肉を、シェフから、皿へ盛られると、さっそく、口に放り込んだ。
「うわぁ、うんめぇ~、なんやこの肉、師匠じゃなくて、御大に贈り物に使う百貨店の「柿安」の肉より旨いかしらへん! 」
「ゴホンッ! 」
龍さんの、下町育ちの下品な感想に、お母さまが、クギをさすように咳ばらいをした。
茉奈があわてて、
「ちょっと、龍さん、下町言葉じゃ失礼よ」
「うめぇ~、もんは、うめぇ~んだから、そう言う、よりしかたねぇ~だろ」
茉奈は、お母さまの顔をうかがうと、お母さまは、「そのとおり」とうんうん頷いている。
すると、亜紀が、
「いいんですよ食事の感想はどんな言葉を使ったって、茉奈ちゃん、わたしも一枚お肉いただこうかしら? 」
シェフが、サッと、鉄板に油をしいて、肉をしき、サッサと塩コショウを落として、亜紀の皿へよそった。
亜紀は、おもむろに、肉を口に運んだ。
「おいし~、茉奈ちゃんと茶川さんが言う、通りホントにおいしいわ」
すると、龍さんが調子にのって、
「わたしね、今、もっと美味しい食い方が閃きました。
すると、もう一枚、シェフに頼んで肉を焼いてもらいそれぞれの皿へ盛ると、立ち上がって、シェフに耳打ちした。
「かしこまりました」
シェフは、おもむろに、アシスタントに指示を出すと、徳島那賀町の香り豊かな木頭柚子と、信州、安曇野山葵、そして、播州、末廣醤油を運んで来た。
そして、龍さんは立ち上がると、アシスタントから、山葵とすり鉢、下ろし金を受け取ると、山葵を下ろし金の中央でゆっくり円を描くようにすりだした。
それを、アシスタントが人数分の小皿へ取り分けた醤油の縁に小分けよそってゆく。
「ちょっと、失礼」
龍さんは、シェフに断り包丁を借りると、柚子を真っ二つに切る。半分になった片方の柚子の皮を器用にそぎだした。
そうして、小皿に山葵醤油を作って肉をべちゃ~と付け、柚子をしぼって、最後に、削った柚子の皮を香り付けにそえた。
「茉奈、ダマされたと思って食べてみろ」
龍さんが、山葵醤油で味付けした柚子風味の淡路ビーフを、茉奈はゆっくり口に運んだ。
「ほんとだ、これはこれで、おいしい~」
龍さんは、子供のようなキラキラした目を茉奈へ向けて、
「ほら、亜紀さんもどうです? 」
「お、お、あいしい~。シェフの作る味付けとは違て、またこれは、醤油の良さがありますね」
すると、亜紀は、母親に向かって、
「お母さん、お母さんも騙されたと思って食べてみて」
と、箸をすすめた。
「いいや、ワタシはいいよ」
と、すすめられた箸をテーブルに置いて断固拒否する。
すると、背後から、
「それじゃあ、ワタシがもらおうか」
栄一が戻って来た。
栄一は、着席すると、襟にこなれた感じでナプキンを差し込んで、亜紀から山葵醤油の皿を受け取ると、焼き立ての肉をたっぷりと絡みつくように潜らせた。
「これは、旨い! さわやかだ」
龍さんは、調子にのって、
「そうなんです。ワタシの師匠のそのまた師匠の御大が、あの食の怪人、魯山人から直接習った肉の旨い食い方なんです。なかなか、イケるでしょう? 」
「そうだね、今度からワタシもこの味付けでいただくことにするよ」
そして、栄一は、妻に向かって、
「こういう時は、意固地にならず、お前も食うもんだ。ダマされたと思ってお前も食べて見なさい」
渋々、お母さまは、肉を山葵醤油へつけて、口へ運んだ。
「なかなかのお味ね」
すると、足元のワガハイが、ぴょこんとお母さまの膝の上に飛び乗ってきて、
「にゃ~」
と、一声鳴いた。
それを見た栄一が、
「ほら、お前、猫殿が正直においしいと言わないと、納得してくれないようだぞ。どうだ、おいしいだろう? 」
お母さまは、テーブルナプキンで口を拭って、
「なかなかよ、なかなか、おいしくってよ」
と、素直じゃない感想をもらした。
夕食を囲む淡路島の夜は、こうして団欒の笑い声に包まれて更けて行った。
つづく




