第五章 第8話 水を導く
「……今日はここまでだ」
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その言葉で、
アーデルハイトが、
一歩前に出る。
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手に、
酒。
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差し出す。
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「……お待たせしました」
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静かに。
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ベルンハルトが、
それを見る。
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一拍。
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そして。
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受け取る。
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「おう」
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短く。
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口元が、
緩む。
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「一汗かいた後だ」
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一拍。
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「美味いぞ」
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ホクホクとした顔。
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一口、
飲む。
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満足そうに、
息を吐く。
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「……悪くねぇ」
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それだけ。
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ベルンハルトが、
背を向ける。
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「明日、また来る」
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短く。
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それだけ言って、
歩き出す。
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止まらない。
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振り返らない。
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やがて、
見えなくなる。
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滝の音だけが、
残る。
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リーネが、
ふと屋根を見る。
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目を細める。
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「……屋根にスライム液ってことは」
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小さく。
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アーデルハイトが、
反応する。
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「スライム液?」
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興味。
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リーネが、
ジョーを見る。
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ジョーが、
頷く。
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「見せる」
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短く。
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板を、
拾う。
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地面に置く。
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スライム液を、
塗る。
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薄く。
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均す。
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少し待つ。
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乾く。
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ジョーが、
水をかける。
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弾く。
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流れる。
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染み込まない。
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アーデルハイトが、
目を見開く。
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「……水を弾いてる」
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驚き。
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ジョーが、
屋根を見る。
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傾斜。
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流れ。
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そして、
言う。
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「水は……流れるだけじゃない」
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一拍。
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「導ける」
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短く。
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リーネが、
頷く。
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アーデルハイトが、
屋根を見る。
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理解する。
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「……流れを作る、ということですか」
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ジョーが、
小さく笑う。
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「そうだな」
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短く。
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その時。
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光が、
変わる。
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影が、
伸びる。
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夕方。
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リーネが、
空を見る。
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「……もうこんな時間」
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小さく。
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ジョーも、
見上げる。
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気づかなかった。
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それほど、
集中していた。
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アーデルハイトが、
言う。
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「一度、戻りましょう」
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短く。
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「宿をご用意します」
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案内するように。
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ジョーが、
頷く。
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「そうだな」
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一拍。
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小屋を見る。
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まだ、
未完成。
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だが。
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形はある。
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確かに、
そこにある。
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三人は、
歩き出す。
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滝を離れる。
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水の音が、
遠ざかる。
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町へ。
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賑わいが、
戻る。
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だが。
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どこか、
違って見える。
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ジョーが、
小さく呟く。
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「……明日だな」
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短く。
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リーネが、
頷く。
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「うん」
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少しだけ、
嬉しそうに。
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アーデルハイトも、
静かに歩く。
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視線は、
前。
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だが、
心は、
滝の方に残っている。
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水は、
流れる。
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だが。
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それだけではない。
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人の手で、
変えられる。
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導ける。
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その可能性が、
そこにあった。




