第五章 第4話 職人の流儀
男は、
そのまま笑う。
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ニヤリと。
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「で」
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軽く顎を上げる。
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「何作ってるつもりだ?」
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ジョーが、
答える。
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「小屋だ」
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短く。
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一拍。
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「……名乗ってなかったな」
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肩をすくめる。
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「ベルンハルトだ」
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短く。
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「グスタフの……まあ、兄弟弟子ってやつだな」
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リーネが、
目を見開く。
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「え……?」
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ベルンハルトは、
気にせず続ける。
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「ただな」
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一拍。
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「俺はあいつと違って、鍛冶は向いてなかった」
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軽く笑う。
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「どっちかっていうと、組む方だ」
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視線が、
小屋へ向く。
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「建てる方が性に合ってた」
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ジョーは、
黙って聞いている。
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「だから一緒にやってたのは二十年くらいだ」
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軽い調子。
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リーネが、
小さく呟く。
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「……それ、長いよね」
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ベルンハルトが、
笑う。
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「ドワーフにとっちゃ短ぇ」
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あっさりと。
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一拍。
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「で」
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視線が、
ジョーに戻る。
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「どうやって建てる気だ?」
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問い。
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試すように。
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ジョーは、
言葉を選ぶ。
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「最低限でいい」
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「壁と床と屋根」
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一拍。
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「雨と風を防げればいい」
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ベルンハルトは、
黙って聞く。
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視線が、
小屋へ向く。
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歪み。
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組み。
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「……雑だな」
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はっきりと。
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ジョーは、
何も言わない。
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分かっている。
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ベルンハルトが、
口を開く。
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「手伝ってやってもいいが……」
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一拍。
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「一杯くれるか?」
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軽く。
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当然のように。
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リーネが、
目を瞬かせる。
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アーデルハイトが、
わずかに緊張する。
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一瞬、
迷う。
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だが。
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「……買ってきます」
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短く言って、
踵を返す。
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商業区へ向かう。
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ベルンハルトは、
それを見て。
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一拍。
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大きく笑う。
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「はっはっは!」
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「話が早ぇな!」
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上機嫌。
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「建築ドワーフも鍛冶ドワーフも同じだ!」
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「酒が無いとな!」
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だが。
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ふと、
笑いが止まる。
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表情が、
変わる。
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「……そういや」
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低く。
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ジョーを見る。
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「グスタフん所でな」
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一拍。
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「飲酒鍛冶はするなって説教したんだって?」
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鋭い目。
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ジョーは、
間を置く。
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そして。
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「判断が遅れる」
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短く。
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「一瞬で決めなきゃならない時に」
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一拍。
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「鈍るのは致命的だ」
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静かに。
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「火も同じだ」
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続ける。
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「遅れたら、広がる」
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ベルンハルトは、
黙って聞く。
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ジョーが、
言う。
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「人も死ぬ」
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それだけ。
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沈黙。
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滝の音だけが、
残る。
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ベルンハルトが、
目を閉じる。
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考える。
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やがて、
息を吐く。
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「……なるほどな」
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小さく。
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目を開ける。
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「言いたいことは分かった」
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一拍。
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「判断が鈍るのは問題だ」
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頷く。
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そして。
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ふっと笑う。
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「ならよ」
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一拍。
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「酒は後だ」
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短く。
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「最初からやり直しだな」
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言い切る。
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すぐに動く。
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木を外す。
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解体。
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迷いがない。
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「おい」
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ジョーに指示する。
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「そこ押さえろ」
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ジョーが動く。
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反射的に。
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小屋は、
崩れていく。
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だが。
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それは、
終わりじゃない。
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始まりだ。




