第五章 第3話 提案
朝。
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空気が、
静かだ。
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領主邸。
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門を抜ける。
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細身の年配の男が、
待っている。
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「お待ちしておりました」
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執事。
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三人を、
案内する。
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石の廊下。
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足音だけが、
響く。
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扉の前で、
止まる。
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「こちらでございます」
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扉が、
開かれる。
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応接間。
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奥に、
一人。
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クラウス・ヴァルデン。
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視線が、
向けられる。
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「……何かあるようだな」
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短く。
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ジョーが、
一歩前に出る。
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「話がある」
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簡潔に。
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クラウスが、
頷く。
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「聞こう」
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ジョーが、
言う。
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「町の水は足りている」
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一拍。
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「だが、間に合わない」
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クラウスの目が、
細くなる。
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「続けろ」
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低く。
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「石造りは正しい」
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「だが、中は燃える」
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一拍。
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「熱と煙は逃げない」
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リーネが、
息を飲む。
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ジョーは、
止まらない。
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「井戸は増やせない」
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「水脈の問題だ」
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クラウスが、
小さく頷く。
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「なら、水を貯める」
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短く。
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「防火水槽が必要だ」
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沈黙。
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「……大掛かりだな」
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「だから滝を使う」
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一拍。
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「落差がある」
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「自然の力を使う装置を作る」
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「技術を底上げして、そのまま防火に繋げる」
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沈黙。
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やがて。
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「……面白い」
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小さく。
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「滝の近くに小屋を建てることを許可する」
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短く。
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「そこでやれ」
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一拍。
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「成果を見せろ」
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ジョーが、
頷く。
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「……やる」
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三人は、
外へ出る。
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光。
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ジョーが、
言う。
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「材料が要る」
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職人区へ向かう。
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音。
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熱。
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火。
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木材が、
積まれている。
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端材。
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捨てられる木。
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ジョーが、
声をかける。
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「それ、貰えないか」
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職人が、
顔を上げる。
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「タダでか?」
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「捨てるもんだろ」
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一拍。
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空気が、
変わる。
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「だからって、くれてやる理由はねぇな」
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拒絶。
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周囲の視線が、
集まる。
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アーデルハイトが、
前に出る。
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「領主の許可は頂いています」
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静かに。
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「滝の近くに小屋を建てるためのものです」
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だが。
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職人は、
首を振る。
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「領主が決めるのは土地だ」
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一拍。
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「俺たちの仕事じゃねぇ」
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線引き。
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はっきりしている。
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ジョーは、
言葉を失う。
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その時。
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一人の職人が、
リーネを見る。
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杖。
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目が、
止まる。
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「……それ」
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近づく。
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「見せてみろ」
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リーネが、
差し出す。
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職人が、
見る。
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細部。
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刻み。
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意匠。
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息を止める。
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「……グスタフか」
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ざわめき。
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「嘘だろ……」
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職人が、
顔を上げる。
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「誰に作らせた」
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「グスタフさんです」
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静かに。
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「知り合いです」
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沈黙。
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杖が、
証明している。
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「……本物だ」
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短く。
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空気が、
変わる。
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職人が、
木材を示す。
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「持っていけ」
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一拍。
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「面白ぇもん作れ」
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それだけ。
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ジョーが、
頷く。
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「……助かる」
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滝へ向かう。
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水の音。
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絶えない。
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木を組む。
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柱。
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床。
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壁。
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屋根。
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簡素でいい。
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だが。
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歪む。
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合わない。
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固定が甘い。
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「……くそ」
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思うようにいかない。
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経験はある。
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だが。
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違う。
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精度が足りない。
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時間だけが、
過ぎる。
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形にはなる。
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だが、
甘い。
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その時。
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後ろから声。
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「苦戦してるな」
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振り返る。
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小柄な男。
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だが、
圧がある。
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「……グスタフの杖を持ってるんだって?」
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興味。
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試すような目。
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ジョーは、
その男を見る。
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目を逸らさない。
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一歩も引かない。
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男は、
それを見て。
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ニヤリと、
笑っていた。




