第五章 第2話 足りてる筈の水
店を出る。
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陽は、
高い。
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通りは、
変わらず賑わっている。
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人の声。
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呼び声。
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焼ける匂い。
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リーネが、
満足そうに息を吐く。
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「……おいしかった」
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素直に。
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アーデルハイトが、
わずかに笑う。
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「この町の名物ですから」
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静かに。
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「気に入っていただけたなら何よりです」
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ジョーは、
軽く頷く。
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「確かに、良い味だった」
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短く。
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だが。
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視線は、
別の場所を見ている。
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厨房。
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火。
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扱い。
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「……」
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言葉にはしない。
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だが。
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引っかかりは、
残っている。
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一拍。
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ジョーが、
口を開く。
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「……小川、見に行けるか?」
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アーデルハイトが、
すぐに頷く。
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「ええ、構いません」
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自然に。
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三人は、
歩き出す。
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賑やかな通りを離れる。
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人の数が、
少しずつ減る。
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音も、
変わる。
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やがて。
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水の音。
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小川。
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広い。
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流れは、
安定している。
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透明。
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澄んでいる。
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リーネが、
安心したように言う。
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「きれいだね」
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アーデルハイトが、
頷く。
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「ええ」
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「この町の水は安定しています」
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迷いがない。
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さらに上流。
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滝。
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落差は、
それほど高くない。
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だが。
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水量は、
しっかりしている。
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ジョーが、
しばらく見る。
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水。
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高さ。
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流れ。
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「……」
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しゃがむ。
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手を入れる。
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冷たい。
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問題はない。
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立ち上がる。
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町を見る。
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距離。
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建物。
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「……遠いな」
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ぽつりと。
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リーネが、
首をかしげる。
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「遠い?」
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ジョーが、
頷く。
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「ここから運ぶなら」
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一拍。
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「時間がかかる」
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静かに。
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アーデルハイトが、
少しだけ考える。
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「……確かに距離はあります」
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だが。
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「普段は困っていませんよ」
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事実として。
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「必要な分は確保できますので」
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迷いがない。
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ジョーが、
その顔を見る。
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本気だ。
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「……そうか」
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短く。
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それ以上は、
言わない。
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だが。
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違和感は、
消えない。
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水はある。
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十分にある。
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だが。
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届かない。
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その時がある。
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滝の音が、
響く。
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絶えず。
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変わらず。
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三人は、
町へ戻る。
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賑やかな場所へ。
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だが。
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ジョーの視線は、
別の場所を見ている。
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滝。
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落ちる水。
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まだ、
何も無い場所。
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だが。
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何かが、
始まろうとしている。




