第四章 第16話 面会
朝。
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空気が、
張り詰めている。
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領主邸の門を抜ける。
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その先に。
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細身で年配の男が、
待ち構えていた。
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無駄のない立ち姿。
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三人を見ると、
静かに一礼する。
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「お待ちしておりました」
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低く、
落ち着いた声。
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「こちらへ」
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短く告げ、
背を向ける。
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石の廊下を、
進む。
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男の後ろを、
三人が続く。
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足音だけが、
響く。
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やがて。
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装飾の施された扉の前で、
止まる。
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男が、
振り返る。
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「こちらでございます」
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静かに。
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一礼する。
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そのまま、
扉に手をかける。
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ゆっくりと、
開く。
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応接間。
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奥に、
一人。
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座している。
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クラウス・ヴァルデン。
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領主。
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視線が、
向けられる。
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静かに。
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「……よく来た」
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低い声。
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それだけで、
場が締まる。
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ダンが、
一歩前に出る。
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「お呼びにより参上いたしました」
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頭を下げる。
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ジョーとリーネも、
続く。
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クラウスが、
頷く。
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「森の泉の騒ぎ」
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一拍。
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「見事に収めたな」
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短く。
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「感謝する」
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簡潔。
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だが、
軽くはない。
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続ける。
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「隣村の村長は失った」
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静かに。
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「損失は出たが……被害は少ない」
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事実だけを、
述べる。
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「不在のままでは、火種になる」
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一拍。
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視線が、
ダンに向く。
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「よって」
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短く。
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「クベルハイムと隣村を合併する」
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決定。
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揺るがない。
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「ダン」
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名を呼ぶ。
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「お前を正式な村長とする」
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言い切る。
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場が、
静まる。
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ダンが、
深く頭を下げる。
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「……拝命いたします」
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短く。
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クラウスが、
視線を動かす。
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ジョーへ。
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「今回の対応」
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一拍。
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「機転が効いている」
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評価する。
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「その知識」
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短く。
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「広めて欲しい」
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一拍。
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「……やってくれるか?」
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命令ではない。
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だが。
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重い。
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ジョーが、
わずかに息を整える。
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そして。
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頷く。
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「……分かりました」
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断る理由はない。
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クラウスが、
わずかに頷く。
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最後に、
リーネを見る。
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一拍。
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「……ご苦労だったな」
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短く。
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それだけ。
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続ける。
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「しばらく、この町に滞在してもらうことになる」
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事務的に。
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「必要経費だ」
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手を軽く動かす。
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控えていた男が、
前に出る。
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小さな袋を、
差し出す。
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重み。
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銀貨。
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三十枚ほど。
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リーネが、
一瞬だけ目を見開く。
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だが。
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すぐに、
頭を下げる。
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「……ありがとうございます」
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クラウスは、
それ以上は言わない。
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当然の処理。
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沈黙。
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やがて。
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「以上だ」
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短く。
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三人は、
頭を下げる。
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静かに、
踵を返す。
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扉へ向かう。
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その時。
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「……待て」
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低い声。
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三人が、
止まる。
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振り返る。
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クラウスが、
肘掛けに手を置いたまま言う。
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「町を見てくれ」
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短く。
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「賑わっている」
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一拍。
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「活気もある」
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静かに。
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「だが」
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わずかな間。
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「何かが足りない」
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一拍。
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「活気があるからこそ」
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低く。
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「キナ臭い噂や動きも出てくる」
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それだけ。
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答えは、
示さない。
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ダンが、
目を細める。
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ジョーも、
言葉を探す。
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リーネは、
少しだけ首をかしげる。
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クラウスは、
もう何も言わない。
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三人は、
一礼する。
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そのまま、
部屋を後にする。




